ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ285→→→パラグラフ192:ベイロンの襲撃:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


潅木さえ育たないトラコスの森の地面にへばりつくオレンジの小さな膨らみ。
目にした途端、俺は凍りつき、心臓が激しく脈打ちだしていた。
なにこれこわい。
この胸の高鳴りは……もしかして?
ひさしぶりに目にした「治癒術を身につけていれば」の文字が、俺を誘ってやがる。
やっぱり資材庫に寄る展開で正解だったのか?
ハッパなんかどこにもないよと落胆させておいて、直後に仕掛けてくれる逆ドッキリイベントか!?
やるな!
かわいいなデバーたん!
「うっほほーい!」
勇躍、治癒術を駆使できる一つ上の戦士向けパラグラフ36へとかっとび、


「なにしてんスか、ローン・ウルフ?」
「……ort


人類が見たこともない珍妙なポーズを決める俺。
なんという恥辱。
この狼が、二度までも踊らされるとは…………っっ!


 小さいオレンジ色の膨らみが、有毒なケツ・スポア の莢だと気づく。
 これを飲み込んだ場合、あるいは胞子が血液を冒した場合、ものの数分で死に
至らしめることができる。
 一握りのケツ・スポア を集めるなら、ナップザックに入れるものとしてアク
ション・チャートに記入せよ。

  247へ。


本文訳:『役立たずの毒薬をくれてやるよ。一応クスリだから喜んどけやオラ』
あー。
ひどいよねぇ。
プレイヤーの期待権はどこいったんだと不思議時空管理委員会に訴えたい。そんな気分。
過去10巻を通して、毒薬が役立ったシーンなんて一度しかない。
3巻はカルトの洞窟で、アイスバーバリアンの調理場を突破したあの時。あれ一回だけ。
つまり限りなくゴミだってことですよォォ!!
しかもだ。
何より悲しいのが、とりあえずナップザックのカワマス1匹捨てて代わりにケツ・スポア 集めてるこの俺の冒険者根性だ。
盛大に溜息をくれてやり、さらに奥へと分け入っていく。


冷たく暗鬱なナーゴスの森に果てはなかった。
風景の繰り返しが隠密行動の神経を疲労させ、心身を磨耗させていく。
やがて、天蓋の裂け目から光の降りそそぐ広場にたどりついた。
巨木の一本が倒れ、重なりあう葉陰を剣の軌跡のごとくうがっているのだ。
幅の狭い光が柱のように降りてきて、広場の一角を輝かせる。
「あれがベイロンの大枝です」
倒れふし、朽ち果てた巨木を指差してオデルがささやく。
「だいぶ近づきました。行程の2/3を抜けたので、トラコスまではちょうど5キロ弱です」
「……」
「ローン・ウルフ? 聞いてますか?」
俺は。
だが、それどころではなかった。


  方向認知術を身につけていてチュータリーの階級に達していれば、59へ。
  方向認知術を身につけていないか、チュータリーに達していなければ、192へ。


全身を粟立たせる戦慄と脅威。
幾度となくお目にかかってきた純然たるサドンデス。狼殺しの罠が作動したのだ。
むろん……
当然の倣いとして、方向認知術を身に着けていない俺に回避の術はない。
暗殺者に先手を許すこととなる。


 朽ち果てた大樹を囲む陽だまりの中へ入っていったとき、まるで誰かがすぐ
近くでモノを口から吐きだすかのような、「チッ」という舌打ちのような音を
耳にする。
 恐怖が心臓を刺し貫いた。
 その音がなんであるか即座に知ったのだ――これは吹き矢の発射音だ!


げに恐ろしきはカイ・マスターの危機回避能力……か。
必殺必中の吹き矢の一撃さえ、ざわつく森の中で察知してのけたのだ。
だが。それだけでは足りない。足りなすぎる。
ここは既に11巻。
失墜したかつての神々がしろしめす監獄たる異次元界。
この期に及んで襲撃してくる刺客が、狼より無能であるはずもない……ッ!



 乱数表を指せ。
 上級狩猟術を身につけている場合、最初の3つの教えに加えてさらに身に
つけた教えがあれば、1つにつき1点づつ加えよ(6つの教えを身につけて
いれば、3点を追加できる)。


  0〜3なら、65へ。
  4〜7なら、146へ。
  8以上なら、304へ。


無情の一撃死を含んだ3択。
回避行動と同時、横っ飛びに貫いた乱数の出目は……「2」ッ!
狼の首筋に死の女神が口づける……

(つづく)