ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ87→→→パラグラフ285:魅惑の宝庫:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


戦場を熟知する武人ローコン・アイアンハートは「可能な限り急げ」と言った。
ナーゴスの森を熟知する斥候兵オデルは「装備を充実させろ」と言う。
どちらが正解か。
そして、より大きな疑問がある。
「はたして、この野営地にヤバめのハッパが置いてあるのだろうか!?」
記憶をたぐりかえす限り、ここまでの探索の旅は、ほぼ一本道だった。
激戦・乱戦は一度もない。
だが、だからこそ戦力アップ系の秘薬が、次なるクライマックスに備えてさりげなく用意されていてもオカしくはない。
8巻『戦慄のジャングル』でも、中ボスの少し手前、船着場にて美味しい思いをさせてもらった。
ならば、だ。
この俺が、確率が低いからといってハッパを見逃すこの俺であるべきか?
時間制限とかどーでもいいだろ。そうそう選択肢が変わりゃしねーって。大丈夫大丈夫。
だからサ……突撃、あるのみ!!!
「そうさな。イヒッ。ここは、フヒヒッ、資材庫に寄っちゃうぜよ」
「大丈夫には見えないが、敢えて問うまい。幸運を祈る、異世界の狼よ……あと涎を拭くがいい」
「ユー……いや貴殿こそ武運のあらんことを、フヒッ、ローコン・アイアンハート……フヒヒッ!」
嬉しすぎて七色の唾液を零しながら銀髪の指揮官と握手をかわし、千鳥足で資材庫へ急行する。
資材庫を守るいかめしい武装兵二人も、オデルがちらつかす後ろ盾の権限と、それ以上にハッパ狂いの俺のジャンキー目(類義語:レ○プ目)をとどめることなどできはしない。
「さあ存分に準備してください。メレドール軍は貴官を全力でバックアップします」
「ほ、ほほほ、ホフヒッホ、本当? まぶで!?」
いやが応にも期待は膨らむ。
ひさしく忘れていたヒッピーパラダイス、脱衣業(クロス・アウッ)の予感に胸昂ぶらせて紗幕の奥へ踊りこみ、


 テントの中は武装や貯蔵品でいっぱいで、必要なものをすべて持っていってよいのだと、
オデルは言う。
 以下の物から選んでよい。


 剣
 槍
 矛
 ナイフ
 6本の矢
 弓
 矢筒
 六尺棒 
 ナップザック本体
 短剣


 もって行くものがある場合はアクション・チャートを調整せよ。
 さらにつづけて、285へ。


「ン? どしたんスか? ケツ掲げて、異世界の武術の構えですか、ローン・ウルフよ」
「……or2」
ケツがぷりっと出ているバージョンで、その場にのびていた。
いや、イヤイヤイヤイヤ。
いーんだよ。別に。
俺はサ。
だってホラ、俺、歴戦の踏破者じゃない? いわゆる一つのマグナマンド突破者じゃなぁ〜い?
作者にして造物主であらせられるエゲレスの神、デバー神が『甘くない』ことぐらい十二分に熟知してるじゃない?
無駄足なんて腐るほど踏んでいるしサっ!!



「いや、本当に構やしないんだけどね」
「ローン・ウルフ、誰に言い訳してるんですか?」
「じゃかあっしイ黙っとけ……やッ!!」
激しい躁鬱にみまわれながら、暗ぁ〜い足取りで器材庫を後にする。
減ってる矢を補充した以外は、何の意外性も魅力もない、まさしくカス野郎のようなアイテム庫だった……ッッ!!
一方のオデルは気合満タン。
例の物騒な石弓を補充しつつ、前腕の仕掛けを何度も確認してやがる。
仕上げにブーツの上部にナイフを滑りこませて「サ! 行きましょう!」などと俺を促す。
そのテンションがブチむかつく。
盛大なため息をもらしながらも野営地を後にして、そこで、気づいた。


器材庫に寄ったことで『飛び先のパラグラフが変わって』いる。


トラコスへ直行する時は、パラグラフ121へ。だが、器材庫に寄った今、向かう先はパラグラフ285になっている。
まさか……
迂闊だった。もう少しパラグラフ配分を『読む』べきではなかったか。
ここまでほとんど一本道だったのだ。
ならば、作者的には、いつものロアストーン 探索の旅より『余裕があり』、『イベントを仕込みやすい』のではないだろうか。
たとえば予期せぬカオス・マスター靡下の大部隊相手の無双ファイト、とか。
作者大好き待ち伏せイベント、とか。
すげーありそう。
実際、過去の死亡録を見返すと、待ち伏せからスタートする死がやたらに多いのだ。これは……痛恨のミスか?
……考えても仕方ない。
「急ぐぞ、オデル。先行しろ」
「承知」
夜気の中を滑るように境界線を超え、野営地を離れた。
オデルも俺も出自は同じ。隠密行動のプロフェッショナルだ。
音もなく密林の影に溶け込んでいく。
無数の巨木が壁となり、密生した木の葉は小高い天蓋を織り成し、濡れて苔が敷かれた地面を永遠の薄明かりで覆い尽くす。
その光の薄さゆえ、ナーゴスの森の低位層は不毛の森だった。
苔の絨毯ばかりが足首を包んでいく。
地面に近い部分で唯一育っているのは、低木でも茂みでもない。
オレンジ色の花弁をもち、人の歯程度の大きさしかないビロードの地衣類だ。


ドドドドドドドド・・・・・・!!


  治癒術を身につけていれば、36へ進め。
  治癒術を身につけていなければ、163へ進め。


こっ、これhyq、これはっ……!?
未知の植物を見つけるなり飛び出す『治癒術』の意味するものとはっ!
まさかの……
大逆転フラグ……ッッ!?


ドドドドドドドドドドド・・・・・・・・!!


(つづく)