ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

老婆は抜け目のない笑みを浮かべる

【パラグラフ233→→→パラグラフ24:猿・飯・キュートな占いババ:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



女帝セロッカの塔から肩をそびやかしつつ、早朝のザス市内へ歩みだす。
わずか1日で劇的な対応の差だった。
捕虜同然にひったてられた戦士が、翌日には女帝直下の指揮官を従えて悠然と市内を闊歩する。
猿の市民共にはやはり理解できない様子で、ポカンと口をあけているのが大半だ。
混雑した雑踏を、護衛兵が道を払い、すみやかに大広場へ向かう。
肉食馬としか形容のしようがない、昨日俺を襲った獣が、今日は静かにチャリオットにつながれていた。
輝きを放つ青銅の二輪戦車2台を背後に並べ、先頭の1台にさっそうと乗り込む。
「この生き物はオニパと言いまして、移動にも、戦いにも役立ちます」
「左様か」
トゥク・トゥロンの話し方はいたって普通だった。
原書の半分を翻訳しているBOB先生がネタ切れしたからかもしれない。
まあ奇人変人ばかり出てきても困るけどな。
御者が一鞭をくれると、オニパはどっと前方に殺到し、濛々たる土ぼこりの雲を残してザスの城門から飛び出した。
渓谷の中央を横切り、石だらけの道を競って走りだす。
3時間ほどで、前方に村が見えてくる。
横にかけていたトゥク・トゥロンが、にこにこしながら何度も開いた自分の口を指さす。
「……何の真似だ、トゥク・トゥロン?」
「食事をしていきますか?」
あー。
最初は一瞬、そんなにもエテ公は歯が命であったのかと感心しかけたが、違うらしい。
戦車の轟音に声がかき消されてしまうので、アホほど大袈裟にジェスチャーを交えているのだ。



  食事のため、オーコールの村に止まるなら、124へ。
  食事のために止まることなくトラコスに急ぎ続けるなら、258へ


どうしたものかと少しだけ悩む。
ストーリー的には大至急なシーンだが、いい加減、展開の裏を読むのが一流なのもこの狼だ。
別にここで村に寄ったからといってペナルティが科されたりはしない。
村に立ち寄れば、ちょいとしたお役立ちアイテムや脳に効くおクスリだってだってあるかもしれないしサ。
「お客人のご希望だ、オニパを止めい、止め〜〜イイ!!」
「………………」
「止めろっつってるだろ!そいや!そいやそいや!」
前言撤回。
こいつも大分オカシな切れキャラだった。
声が届かないもんだから、御者の後頭部を滅多打ちしてやがる。
深刻なダメージを(脳に)負った御者がビクビクッと硬直すると、手綱を引っ張られてチャリオットは減速した。
トゥク・トゥロンが身をのりだしてブレーキレバーを引き、二輪戦車を急停止させる。
乱暴な運転から解放されたことにほっとして飛び降りる。
後続の戦車も次々停止した。



その後の展開が実にもっていただけなかった。

 
警備兵たちは座席からよろよろと這い降りてきた。 
彼らの足腰は弱く、平坦ではない道のりを数時間も揺られてきたため 
震えている。 
 


「あー。少々質問いいかね、トゥク・トゥロン指揮官殿?」
「何なりと、お客人」
「あんたとその愉快な護衛たちは、ザス最強の護衛兵なんだよな、正しいよな?」
「もちろん。セロッカ様から、全幅の信頼を受けておるでよ」
誇らしげに指揮官が胸をそっくりかえらせる。
突っ込む気力さえ失せる光景だ。ド天然にも程がある。
「……そのセロッカがあんな可哀相な目にあってる理由がよっく分かったよ、指揮官」
「ふむぅ?」
これから君らの戦力は数に入れないことにするよ。
頼れるのは独力のみ。
なにせ、自分たちの戦車にさえ乗り慣れていない戦士どもだ。ありえないだろそんな護衛兵。
足腰弱いってお爺ちゃんかと。
そら混沌との戦いを控えて、あれだけ怯え切っていたのも頷けるってものだ。
こいつらまとめて戦闘力点8ぐらいでも、俺はもう驚かん。

 
 兵士たちは村のことについて詳しく知っており、躊躇いなく道から 
離れた一軒の草ぶきの小屋に向かう。 
 指揮官と御者に同行し、オーコールの低い家に入るため身をかがめる。 
 村人たちは君を兵士らの客だと認めて喜び、食事とワインを熱心に 
すすめてくれた。 
 


そして飯になった瞬間、水を得た魚のようにキビキビ動きだすお猿たち。
もうダメだこいつら。早くなんとかしないと……
さっさと飯を済ませ、キラっぽい面で装備品の中にデスノートを探していると、優しい目をした老婆がやってきた。
足を引きずりながら、飯を食う俺の前に一組のカードを置く。
「この婆様は占い師でサ、お客人」
「はぁ」
「お客人は、自分の運命を知りたいでがんすか?」
セロッカ直々にご紹介いただいた初登場時から、わずかリプレイ1回分でここまで崩れるキャラも珍しい。
いわゆるメキシコ訛りの東北弁という奴だ。
もはや戦士でも何でもない。
ジョーンズ博士をもてなす現地の案内人よろしく、トゥク・トゥロンが熱心に占いを勧める。
ま、悩むまでもない。
ここは当然「占う」の1択のみだった。
現実ならいざ知らず、リプレイのさなかにおいては、占い=作者のご託宣と考えて間違いない。
特にストーリー重視のマグナマンドにおいてはその傾向が顕著だ。
というわけで頷く。
・・・すると。

 
 抜け目のない笑顔が老いたオーコールの顔をくしゃくしゃにした。 
 ぎこちなくカードを手に取った彼女はシャッフルし、適当に3枚 
選ぶようにという。 
 乱数表を指せ。 

  0〜3なら、172へ。 
  4〜6なら、307へ。 
  7〜9なら、224へ。 
 


えーと。
いまいち先が読めない。
なぜ老婆は『抜 け 目 の な い 笑 顔』になっているのか。あまつさえ乱杭歯を剥き出しにして迫ってくるのか。
そもそも俺は占ってもらってもビタ一文金を払わんぞ?
有料だとは、最初に聞いてないからな?
分かってるのか?



分かってるよな? ナ!?

(つづく)