ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ233→→→パラグラフ24:狼と戦車猿:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



翌朝……といっても、寝てすぐの感覚のまま、セロッカに起こされる。
「そなたには指揮官のトゥク・トゥロン―― 妾の懐刀じゃ―― と最高のザス護衛兵の一団を警護として割り当てよう」
「感謝する、女帝よ」
「彼はカット・トリセクト一帯に精通しておる。トラコスまで確実にそなたを送り届けようぞ」
さらに女帝はきらめく宝石を嵌めこんだ漆黒の小箱を出してきた。
首にかけた星型の鍵で慎重に錠前を開ける。
「幽閉の身ゆえ、妾は同行できぬ。かわりにこれを持ち、メレドール人の指導者、ローコン・アイアンハートを探すのじゃ」
女帝より、ピラミッド型の黒曜石の印章 を下賜される。
本文の記述によれば、これの所持が最優先らしい。
『特別な品物』欄が埋まっていたら、他を捨ててでも必ず持っていけとの由。
幸い、最後のスペースが1つ開いていたので、黒曜石の印章 をカイ・マントの隠しにしまいこむ。
「カオスマスターと混沌の勢力は、正体を秘匿する術に長けており、交戦中のメレドール人を疑い深くさせておるのじゃ」
「……だから黒曜石の印章 が必要になるのか」
「さよう。メレドール人に会ったら、まず、この印章を見せるが良い。そして、もう1つアドバイスを与えよう」
鈴を鳴らしてトゥク・トゥロンを呼びながら、セロッカは声を低くして耳打ちした。


「ローコン・アイアンハート以外の誰にも探索の目的を語ってはならぬぞ。良いな?」


慎重すぎるほどの対応だ。
だがしかし、姿形を偽る混沌の手先が至る所にいるなら、これは当然かもしれない。
「………………」
「そなたの睡眠中に、妾は精神と時の狭間にてローコンと会談した。ローコンはロアストーン探索を助けると誓ってくれたのじゃ」
セロッカの居室を後にする。
控えの間には、背丈は猿らしく低いが、いかにも屈強そうな指揮官が待機していた。
愛情深く女帝が側近を紹介し、猿人の指揮官トゥク・トゥロンは念話ではなく実際に声を発する。
訛ってはいるが、巨人族のそれにくらべ、はるかに人類の言葉に近い。
「選ばれたことを光栄に思います。お客人」
「ああ、道中は任せるぞ、指揮官」
猿らしからぬ直立不動で、トゥク・トゥロンが敬礼を返してくる。
最後に、女帝が俺を招き寄せる。
「案ずるでない。そなたは成し遂げるだろう」
セロッカはささやき、俺の頬に接吻した。
愛情というよりはまるで慈母のごとく、命運を託す戦士を見送る支配者として。
「いや、成し遂げねばならぬのだ」
「任せるがいい女帝よ……この復讐の狼の手練、とくとご覧あれ」
獰悪に笑い、俺はセロッカに背を向けた。
靴音も高く控えの間を後にする。
一刻も早くトラコスの墓所にたどりつき、カオス・マスターに先んじなければならない。
たとえ……それが不可能事だと、行き着く前から理解していたとしても。

(つづく)