ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ288→→→パラグラフ233:ロアストーンの在処:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



女帝セロッカが涙をふりはらう。
みたび、執務室に広がるイメージが薄れ、かわって新たな光景が見えてくる。
緑豊かな樹木で覆われた丘と、急斜面の渓谷だ。
「ここが、ロアストーン の落下地点だ」
セロッカの声は今では落ち着いている。
「妾は、出現と同時にすぐ存在に気づいた。それほどまでにロアストーン の力は驚異的なのだ」
「ここはどこだ、女帝。教えてくれ」
「ナーゴスの森……メレドールの境界だ。メレドール人たちの古代の埋葬地トラコスの周辺300メートル以内にロアストーン がある」
声に警戒が含まれていることに気づき、俺は前回と前々回の、長ぁ〜い説明を思いかえす。
たしか……
ナーゴスの森は、いわゆる1つの紛争周辺地域ではなかったか?
「これは悪い知らせなのか?」
「うむ。いまやこの地はメレドール人とカオス・マスター率いる混沌勢との戦争のまっただなかだ」
来よった。
来ましたよ。案の定だ。
カオス・マスターの説明が長い訳だよクソったれ。潜入なんかハナっから無理そうだ。
戦争だろ?
毎度お馴染み狼無双だろ?
畜生め、異次元だろうと何だろうとこちとらワンマンアーミーだっての。
やってやろうじゃあないの。


「ナーゴス全土の権利を主張するカオス・マスターと、身動きの取れないメレドール軍が激突する最前線から15キロと離れていない」
「ヤッベえじゃんそれ。もう一秒でも早く行くしか」
「待つのじゃ。仮にロアストーン を取り戻したとして、その後どうするのじゃ戦士よ」
「ンむ?」
「何処へ向かうべきか知識が欠如しているために故郷の世界に戻れないとなれば、軽挙妄動にもほどがある。しばし辛抱せよ」
セロッカが再び探索をはじめる。
ダジャーンに追放するための『影の門』があるように、マグナマンドに帰還するための『影の門』もあるらしい。
広漠たるダジャーンから本来の次元に帰還できる『影の門』はただ一つ。
ゆえに、そこへ到達しなければ、ロアストーン 奪取も無意味なことなのだ。

 
 
 ナーゴスの森の光景は消失し、かわって新たな映像が 
 あらわれる。 
 それは岩だらけの断崖の頂に聳える都市で、 
 いくつもの塔と厳しい稜堡で守りを固められている。 
 並んだ小さな窓々からは深紅の炎が躍り、 
 巨大な石の城門は燃えたつ竜の意匠で飾られていた。 
 


「ハアガダールじゃ」
女帝の口調は陰鬱そのものだった。
「かつては『地』の領域の果てまで伸びる大荒野の支配者サンダイの本拠地だった。混沌に呑まれた最初の領域でもある」
「今も混沌の影響下にあるのか?」
「それは問題ない。今では岩壁と有毒な砂のみが広がる、空漠たる死の荒野だからな」
延々と続く砂漠。
映し出されたビジョンは、ダジャーンの原風景そのものだ。
「忌まわしき混沌の版図が拡大すると、彼の者はこの地をあっさり放棄した」
「むしろ、俺には朗報だな」
「忘れら去られた都市で、グアコールの難民や無法者が住み着いている程度の吹き溜まりだ」
「こんな場所に、本当に『影の門』があるのか?管理もされず?」
マグナマンドでは違っていた。
トーガール大城塞の地下実験場しかり。
ソマーランドのトラン魔法協会の最深部しかり。
次元をわたる『影の門』は、その力ゆえ、常に為政者の監視下にある。
「そこが問題じゃ。サンダイ人は、カオス・マスターさえ発見し得なかった『影の門』の守護者だったのだ。長きに渡り、影の門に侵入する手段を捜しながら、サンダイの民は『影の門』の存在を隠してきた」
「何故だ」
「そなたの世界における影の門とは異なり、ダジャーン側からAONへ侵攻するための門は閉じられているからだ」
「……」
「鍵を手にするものだけが、この領域からAON世界へと到達することができる」
理解が形を取りつつあった。
確認のために身を乗りだし、セロッカに問いただす。
「その鍵とは、つまり」
「力こそが次元を渡る鍵。そうとも、ナイゼーターの2つのロアストーン じゃ」


すべてのピースが脳裏で音を立てて嵌った。


通過パラグラフ:(288)→345→262→233  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:40点(全快)

(つづく)