ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ250→→→パラグラフ288:混沌の神:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「女帝よ。何がそこまで貴女を苦しめているのだ」
悲嘆にくれるセロッカに尋ねる。
当然ながら、別に紳士を気取ったワケじゃあない。
ここはリプレイ的にパラグラフ数を稼ぐため質問しただけ。そっちが本音。
とにかく、1コでも通過パラグラフを増やして、その分、治癒術での回復効果を増やす算段だ。
「1パラグラフ通過ごとに体力を1点取り戻す」
これが原則。
歴戦のゲームブッカーはあくまでシビアなのだ。
ともかくも、ダジャーンの歴史を掘り下げておいて損はない。女帝セロッカの過去バナなら尚更だ。


「カオス・マスターの無慈悲さ、残忍さが妾を悲しませるのだ」
セロッカの声が低くなる。
みずからの居室であるのに、人の耳を気にするがごとく。
「彼の者が来るまで、グアコール平原はシナイと呼ばれる偉大な戦士に支配されていた」
「シナイとやらは、女帝の知り合いか?」
「ああ。シナイは妾を愛すると告げ、互いの領域の連合を望んだ」
「………………」
「だが、ああ!シナイの愛は報われず―― 傷ついた矜持を癒すため、シナイはカオス・マスターと手を結んだのじゃ」


詳細は分からない。
だが、細部をぼかしたセロッカの話から分かることもある。
過去のダジャーンにおいて、領域を支配する神同士の諍いがあったであろうことは想像に難くない。
「彼の者の、混沌の神としての逆説性ゆえ、カオス・マスターは強き渇望を捧げる者には、その願いを叶えざるを得ないのじゃ」
「彼の者は妾を呪文で魅了し、シナイの願いは叶えられ、妾はシナイを愛した」
「しかし、カオス・マスターの契約は、彼の者の神性に見合ったものだ―― 残忍で、気まぐれなのだ」
「妾の婚礼に彼の者は現れ、願いの対価としてシナイが持つ領域の半分を要求した。シナイはそれを拒絶したのじゃ」
「その報復として妾はこの塔に投獄され、シナイは肉体の変異により、恥辱のあまり領域を捨て、隠れざるをえなくなった」
混沌による罰の最たるもの……肉体の変異。いや、あるいは融解、混成とでも言うべきか。
不可逆な変身を強いられたのだろう。
「シナイはどうなったんだ、女帝? 顛末を知っているのか」
「無論だ」
セロッカが悲嘆に沈む。
「シナイは力を取り戻したが、その肉体は永劫にカオス・マスターとの契約した者の末路を晒す器になってしまった。そなたも知っていよう」
「……?」
「シナイこそ、私のところにそなたをよこした―― ヤ ニ ス の 『 見 護 り 手 』 なのだから」
「………………」


混沌の具現者としての力。残忍さ。カオス・マスターが、神としてセロッカよりも遥かに格上であること。
そうした事情が今の話から読み取れる。
さしずめ、ダジャーン世界でのダークロードにあたるのが混沌の叛逆神、カオス・マスターなのだろう。
「昔話は終わりじゃ。ロアストーン を探すとしよう」
セロッカが涙をふりはらう。


ロアストーン のありかを探す女帝の横顔を見ながら、俺は、思索に沈んでいった。
これは……やはり警告なのだろう。
探索の旅において、この時点で発せられた情報だ。
一見ロアストーン 探索と無関係な、混沌による侵攻の話だった。だ か ら こ そ無視できない。
また、別の親切なる警告もある。
探索の始まる前、ダジャーンへの失墜のさなかに、40点超の敵との戦闘があることを俺はすでに聞いている。
ならば、そういうことなのか。
おそらくは、彼らとの邂逅が、此度の探索の帰趨を決するのだ……


……そして、読者諸兄には残念なお知らせがひとつある。
このリプレイの性質上、狼の探索行もとい奇人変人百鬼夜行をお楽しみの皆々様にはまったく申し訳ないのであるが。
狼の奇妙な夢冒険にはまだお時間が必要なのだ。
つまり、だ。
次回もゆっくりたっぷりのーんびり、長尺の世界観説明が延々と続くのであった。



通過パラグラフ:(250)→288→  治癒術の効果:+1点   現在の体力点:38点

(つづく)