ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ347→→→パラグラフ50:鏡面都市:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



”残念ながらデミヒューマンとやらではない、小さき者よ。われら種族はヨーコールという”
”……返事返ってきたよオイ。しかもクソ真面目だ”
”クソ真面目で悪かったな、小さき者よ”
友好的な念話成立。
紳士の会話テクを用いてたちまちダチ公に昇格した。
必要な情報を聞きだす。
彼らはヨーコールと呼ばれる巨人族であり、なかでもこの戦士たちは『輝く都市ヤニス』に住む貴族階級だった。
なるほど、優雅に砂漠で狩をしているわけだ。
お返しに『影の門』から落下したこと、コージンダとの戦いなどを語って聞かせる。
”了解した”
”で、これからどうするんだ?”
”来るがいい。お前を我々の領域へ連れて行こう”
リーダーの声が心に響く。
”お前は自分の旅について『見護り手』に話さなければならない。運命の重みを彼が占うだろう”
”断る、と言ったら?”
リーダーがにやりと笑うのが、心の中ではっきり読み取れた。
”この不毛の砂漠を好きなだけピクニックしたければ、それもお前の自由だ”
”……やれやれだ”
ため息とともに、ヨーコールと肩を並べて騎竜に近づく。
舞い上がった雄大な翼が織りなす旅路は、壮麗にして目もくらむ道のりだった。
ファンタージェンの住人としては、狼は空の旅に慣れている方だ。飛行艇スカイライダーにレビトロン……操縦経験さえある。
その狼の経験値をもってしても、この旅はスリリングだった。
翼が打ち鳴らす遠雷めいた騒音……
オレンジの炎にかがやく空へと急角度で上昇する獣たち……
視界がぼやけるほどに殺到する疾風の勢い。
眼下では、人跡未踏の荒野が燃えあがる地平まで伸びていく。
太陽も月もなく、空の輝きはまったく変化しないため、時間計測は不可能だ。
二度ばかりうたた寝したが、いつ目覚めても編隊の陣形は変わらず、ヨーコールは疲労のきざしもみせない。
ついに、荒野は沼沢地の点在する菫色の大草原になった。
大地はせりあがり、絶壁に囲まれた高地と無数の谷を超え、山岳地帯の2つの峰の狭い割れ目に近づく。
合図とともに編隊は縦一列に密集し、狭隘な回廊をくぐりぬけた。
……思わず口笛を吹く。


”ここがわれらの故郷。『輝く都市』ヤニスだ。気に入ったか”
”ああ。これまで目にした中でもっとも美しい。輝く都市の名は伊達ではないな”
都市がそびえるのは、果てしなく広がる火口の中。
マグナマンドでは目にしえない異質さが、秀麗な外観を際だたせる。
幾多の小塔、尖塔が林立するさまはさながら水晶城塞だ。
どこか『ビロードの城塞』タホウを連想させる。
あらゆる金属が、建築に使われていた。
プラチナ、銀、ガラス、鏡面の如く磨き上げられた鋼。
窓が、壁面が、千もの色彩で光をはじきかえす。
燃えたつ太陽のような華麗な眺め……
これこそ、輝く都市の由来なのだろう。
街区には広い通り、巨大な釣鐘状の銀の住宅が立ち並ぶ。
竜は正面の要塞へ向かっていた。
そびえたつ5つの円形監視塔……その一つに隣接したガラス乗降場へと翼ある獣が降下する。
着陸した俺たちを、きらびやかな銀鎧をまとうヨーコールの守備兵たちが迎えた。
リーダーは守備兵に命じて騎竜の世話をさせ、俺を監視塔の部屋にいざなう。
“ここで休め”
”ゲストルームか、はたまた監視部屋か”
“両方だな。私は『見護り手』にこのことを知らせてくる。疲れを癒し、望むなら寝ておくことだ”
続き部屋を指し示し、彼はきびすを返して去っていく。
扉が、自動的にその背後で閉じた。



  隣りあった部屋を調べてみたいのなら、170へ。
  監視塔からの脱出を試みるなら、340へ。
  この部屋にとどまるか。219へ。


巨人のお目付け役はこれにて退場。
狼の時間のはじまりだ。
いよいよここから、輝く都市ヤニスの冒険がはじまる……のか?

(つづく)