ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

致命的なエネルギーが撃ち出される

【パラグラフ196→→→パラグラフ350:追放・永遠の黄昏界へ:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


「復讐スルハ我ニアリ、カイ・マスター!!」



雷鳴が轟き、トーガール最深部の静寂が粉微塵に砕け散る。
ナジラニウムたちが逃げたアーチに、ダークロードの大君主、モズゴールのナーグの偉容が立ちはだかっていた。
半身は若々しく完璧な青年の肉体だが、もう半身は皮膚を剥がれ、むき出しの臓器が脈打っている。頭部は巨大な蝿のそれだ。
それはおぞましくも美しく、見る者の精神にねじれた恐怖を刻む存在。
神威、としか表現しようのない計り知れないプレッシャー。
蝿声を軋ませて哄笑したそれは、黒いクリスタルを鉤爪状の前肢に掲げてゆく。
やはり罠だった――
ダークロード・ナーグはすべてを知り、狼を待ち受けていたのだ。
「過日ノ誓ヒハ果タサレン。マサニ今、汝トロアストーンヲ破壊シヤウ!」
耳をつんざく切断音が腐食した足場を揺るがす。
ほの青い破壊の雷が迸り、鉄骨の一端を断ち切ったのだ。
白熱した鉄の飛沫を浴びせられ、跳ね回る足場の上で身動きもできず、必死にしがみつく。
「狼!駄目だ―― ッ!」
「!!」
悲痛なペイドの叫びにはっと目を見開き、衝撃に打ちのめされつつ遮二無二に手を伸ばす。
……届かなかった。
すでに弱まっていた緑の火球を、衝撃波が襲ったのだ。
残る2つのロアストーン が、漆黒の奈落―― ダジャーン界に失墜していく。
こんなことがあっていいはずがない……
馬鹿な……
影の門が水面のように波うち、さざめいて大きくうねりだす。
ロアストーンを飲み込んだ影響なのか、次元の狭間が危うくなり、ビリビリと不可視のエネルギーが鳴動する。
「時空ガ歪ミタルゾ、カイ・マスター。貴様ヲ再起不能ニ陥レル運命ダ!」
またしてもナーグが黒いクリスタルを掲げ、身動きをとめられた俺に回避の術はなく……
だが、上がった呻きはナーグのものだった。
バケロスの一撃が、ナーグの手からクリスタルを落下させたのだ。
「狼!この弱凡が、世話かけさせんな!」
「……ッ!ペイド、お前の技じゃ無駄だ、不死のダークロードに勝ては」
「喧しいわ―― ッ!」


大喝。
いまだ血糊さえぬぐわぬ監獄の襤褸をそびやかし、ペイドがちらりとこちらに目をくれた。
無力な素手のまま、両手をゆるゆると広げ、俺とナーグの間に立ちはだかる。
「覚えているか、あの時の約束を」
「……あ?」
「いつかこの技を教えてやると言っただろう。バケロスの―― 『力の言葉』をッ!」
ペイドの語尾が、信じがたい質量を帯びた。
破城槌の一撃を食らったかのように、不可侵のはずの半神の肉体が部屋の奥へブッ飛んでいく。
ダメージは与えられていない……だが、続けざまの『力の言葉』がナーグを叩きのめし、壁に釘付けにする。
「俺とお前は鏡の裏表のようだ。俺はお前が嫌いだと、何度も言ったはずだ」
「ペイド……!?」
「だがな。それでも、命には軽重がある……だから今はこの命、お前にくれてやる―― ッ」


「お前は絶対に死なせない」


藻掻くナーグの前で、俺に背を向けたペイドの言葉が明瞭に響く。
「俺の背後にはまだ幾多のバケロスの同胞が控えている。俺の敗北はバケロスの敗北じゃない。だが、お前は」
「ああ……俺は、最後の、カイ・マスターだ」
走馬灯のように記憶が流れた。
カザン・オードへの潜入時、ペイドの弟、カシンが告げた言葉。
短くも、愉快で、クソ喧しかったダナーグへの道行き。


     ―― 罵りあいつつ泥濘を進み、

未知なる敵には完璧なコンビワークで立ち向かい――               

                     共通の敵を斃すと誓った、あの日々を。



……そして、この敵地トーガールでの再会。
そう。
そう呼び習わしてよいのなら、この男こそ、俺の親友足りうる戦士の一人ではなかったか。
「まだ間に合う、急げ!今はこんな化け物にかかわらず、降りて逃げろ!」
「否……手遅レダ
「なっ!」
ペイドの驚きの声。
力の言葉を浴びせられながらナーグがゆっくり立ち上がり、何かをつぶやく。
刹那、ペイドの肩に鮮血が広がり……
高密度の破壊魔術で肩を砕かれ、うずくまるペイドの前で、ナーグが再び暗黒のクリスタルを掲げた。
「サウヨナ……貴様ガ幾度トナク我ガ同属、我ラノ勢力ニ告ゲタ言葉ヲモッテ、復讐の幕ヲ下ロソウトシヤウ」
わんわんと怨嗟を木霊させ、ダークロード・ナーグが処刑の火蓋を切って落とす。


「永遠ノ黄昏界(ダジャーン)へ堕チルガ佳イ、カイ・マスター。オ似合ヒノ地獄へト」


狂ったような嘲笑が無尽蔵の憎悪に濁り、響き渡る。
ペイドが制止しきれなかった稲妻の一撃が、かろうじてもっていた鉄骨の端を打ち砕き――
俺は、なすすべもなく自由落下、そのまま影の門に沈んでいく。
冷たい。
この世ならぬ冷気が、影の門への接触面から這い登り、五感を無に帰していく。
うわ言のようにペイドが呟いていた。
「死ぬな、絶対に死ぬな、貴様が、貴様こそが」
影の門に接した部位から順に、身体組成が、魂の要素が、バラバラに分解されていく。
乱れ、崩れ、意味を組みなおされて、いずこともしれぬ永遠の黄昏界へ、片道切符の奈落へ堕ちていく。
その間際。
ペイドの……戦友の台詞が、鮮やかに脳裏に焼きついた。


「貴様こそが、マグナマンド唯一の希望なんだ……………………!!」



かくて狼はまんまと罠にはまり、マグナマンドより失墜・追放の憂き目をみる定めとなった。
ルオミのロアストーン の知恵と力をものにした狼は、この追放の次元にて残る2つのロアストーン へ手を伸ばす。
だが気をつけよ!
真なる恐怖、真なる苦難はすべてここに―― おそるべき次元の彼方、黄昏界ダジャーンより始まる。
『この門をくぐる者、すべての希望を捨てよ――
超自然的なマグナカイ探索の物語のはじまりを目撃し、受難と脅威の道のりを歩む覚悟があるのなら。
真のカイ・グランド・マスターをめざすなら、あまたの戦士を絶望させ、心胆寒からしめた黄昏の次元の恐怖が幕をあけることだろう。
何人も、ここより引き返す路をもたない――


―― タイトルは『時の虜囚』―― だ。



【ローンウルフシリーズ第10巻 トーガールの牢獄 完】



【トーガールの牢獄】冒険結果  ローン・ウルフ 16人目(15度死亡)


能 力 値   .


・戦闘力点18(15点+2+2+3−4)  ・体力点38(28点+4+3+3)→現在36点

・金貨6枚   ・14ルーン



マグナカイの教え(階級:メントーラ)   .


・動物コントロール ・念波動 ・念バリア ・治癒術 ・上級狩猟術

・ネクサス ・予知



習得した伝授のサークル   .


・光のサークル(体力点+3

・精神のサークル(戦闘力点+3 体力点+3



装備(武器 2つまで)   .


矢筒と矢(矢筒1つに6本まで)   .



・武器なし

・デュアドンの銀の弓(弓の射撃ボーナス+3)



・矢筒:有(1つ)   ・矢:残り4本


特別な品物(10個/12個まで)   .


ナップザック(8個まで)   .



・水晶の星型のペンダント

・銀の兜(戦闘力+2)

・盾(戦闘力+2)

・鎖かたびら(体力+4)

・カルトの火の玉

・ダイアモンド

・火種×2

・精神の指輪

・灰色の水晶の指輪





・アレサーの薬(戦闘力+2)

・アレサーの実(戦闘力+2)

・レンダリムの万能薬(体力点+6)

・カワマス(一食分)

・カワマス(一食分)

・カワマス(一食分)

・アレサーの実(戦闘力+2)

・レンダリムの万能薬(体力点+6)



修道院においていくもの   .


・エデの薬草(体力点+10) ・ラウンスパーの薬(体力+4)

・特別なラウンスパーの薬(体力+5)

・ラウンスパーの薬(体力+3)

・青い錠剤(二服分)

・オキシデン・チンキ(体力点+2)

・ガロウブラッシュ(眠り薬)  ・幅広剣×2 

・パッド入り鎖かたびら(体力+2) ・ソマースウォード(戦闘力+10)

・めのうのメダル

・力の鍵  ・銀の笛  ・プラチナのお守り

・火種×1  ・通行証

(つづく)