ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ299→→→パラグラフ  :ロアストーンの間:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「待て、動くなペイド」
「……ッッ!」
機先を制しかけたペイドの腕を万力のように捻りあげる。
予知のおかげで、警告の鐘の意味がわかった。
いまや、塔の入口にタレストリアの主力軍がたどりつき、総攻撃が始まったのだ。
奴隷を解放するべくアダマス卿と全軍が塔へ突入し、死の騎士たちは自分たちの防衛拠点へ急いでいる。
全員をやりすごし、大きく息を吐いたペイドが一言。
「巫山戯んな、俺の腕を極めやがって!殺す!」
「あースマンスマン」
怒り狂うペイドを適当にやりすごし、金属の閂を引き抜いて三角の大扉を押し開ける。
測鉛線の敷かれた両開きの扉が遠雷に似た音をたて、壮大な天蓋を誇る儀式の間があらわれた。
部屋の中央には一切の存在を通さない漆黒の闇。
直感が『影の門』だと告げる。
ソマーランドのギルドホール最深部にあるものと同じ……この世ならざるダジャーン界へのゲートだ。
その直上に、魔力によって残り3つのロアストーン が浮いていた。
ロアストーン は穴の淵から延びる無数の光線ではるか頭上に支えられ、燃えたつ緑の火球に閉じ込められている。
透き通った長衣と仮面をつけた魔術師……ナジラニウムたちがこの光線に魔力を送りこんでいた。
俺たち二人の殺戮者に驚き慌て、反対側のアーチの出口から逃げていく。
「おいヤバイぞローン・ウルフ、奴ら増援を呼んでくるぜ」
「なぁに、それまでにズラかるまでよ」
焦るペイドをなだめ、すぐさま部屋の構造、魔力の流れを把握した。
影の門は光さえ通さず、黒水晶の一枚板さながらだ。ロアストーン 破壊ののち、ここから異世界に追放する予定だったのか。
半球型のドーム上部には、補修用の鉄骨が十字に組まれている。
手順を間違えれば、ロアストーン は永遠に失われるかもしれないのだ。



  骨組みを登って上からロアストーンを取りもどそうと試みるか、249へ。
  水晶の支えを調べたければ、160へ。
  下からロアストーンを取りもどす方法を探すなら、201へ。


「どうするんだ、ローン・ウルフ?」
「……補修用の鉄骨に登る。魔力の柱を壊して、ロアストーン が落下したら一環の終りだ」
決断をペイドに告げ、すばやく柱をよじのぼった。
鉄骨は古く、腐食して大きく鳴動する。
じわじわと進み、ついに巨大な猫の瞳を思わせる緑の火球の真上にたどりつく。
手のひら一つ分の距離……だが、触れば命がないとカイの感覚が告げる。



熟考し、ようやく解決策を思いつく。
「ペイド、周囲の柱を打ち倒してくれ。エネルギーが消えると同時にロアストーン を回収する」
「なん……だと!?」
いや、ペイドは本気で怒っていた。
素手で魔力源をブチ壊せって言うのか?メチャメチャ火傷するっつーの!」
「鈍いな弱凡、その辺のモップとか柱時計とかコショウとかを武器にしろよ」
「糞ったれ、何で俺が……貸し一だぞ!」
おきゃああっ喚きつつ、バケロスの戦士様が手ごろな棒を拾って魔力の柱を壊しだす。
すべての柱を壊せば、緑の火球は消え、ロアストーン は落下する。これを火球の下側で受けとめるのだ。
ペイドの蛮勇によって、しだいに火球の勢いが弱まっていく。
対照的にロアストーン が金色の光を放ち始め、俺は勝利を確信した。
支えの半分が壊れると、火球は傾き、ロアストーン の一つが俺の手に転がり落ちる。
おなじみの、強く慰撫するエネルギーの大波……
くたびれてきただろう仲間を励ますため、下をのぞいて再び怒鳴る。
「その調子だ、ペイド」


「其レハ如何かナ―― 愚昧なル常命ノ者共ヨ――


返ってきた声はひどく耳障りで、どこか無数の虫の翅音めいた人ならざる擦過音が混じっていた。
ぞくりと産毛が逆立つのをおぼえる。
この奈落で待ち構えていた宿命の敵が……
決して出会ってはならない『恐怖』が、ロアストーン の間に、姿をあらわした。



通過パラグラフ:(299)→136→230→100→249→238→196  治癒術の効果:+6点   現在の体力点:35点
(つづく)