ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

2年前のダナーグを思い起こす

【パラグラフ328→→→パラグラフ299:救出と再会:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



記憶の奔流があふれだす。
脳裏をよぎるのは、鮮烈な赤に染まったダナーグの空。


「ダークロードの最後の足掻きだろうが……せいぜい気を抜くなよ相棒」 
「貴様にその言葉そっくり返してやるぜ……狼ッ!」 
残照の中、レビトロンめがけクラーンの編隊が黒い矢となって迫りくる。
( 【リプレイ439】 参照


舞い踊るクラーンの影。
太古の飛行船レビトロンの上で背中を預けあった、無二の悪友の姿。
そして……


「この弱凡がッ!ボサッとしてんじゃねえッ!」 
「ペイド!」 
「太陽の剣を拾え!忌々しいこの網を破るんだよ、狼ッ!!」 
( 【リプレイ440】 参照


その名が。
腹の底から搾りだされる。
「ペイド!!」
冷えた石畳にあぐらで座る囚人……
浅黒い肌に無数の拷問跡を残し、乾いた血を頭髪にこびりつかせたバケロスの戦士―― ペイドがぼんやり顔をあげる。
「……畜生、また妄想が俺の前に現れやがったか」
「寝ぼけてるのか弱凡」
鍵を探しだしてクソ重い扉をこじあけ、手を差しだす。
「助けに来たぞ、相棒。殺戮の準備は万端か?」
「……本物のローン・ウルフか!!おいおいマジかよクソったれ!!」
がばと身を起こすペイドには、まぎれもない歓喜の色があった。この俺と同じく。
ダナーグで拉致されてから実に2年。
あの夕刻、カイの叡智が授けた未来視―― ペイドは必ず生き延び、共に戦うという託宣―― こそ、今日のことだったのだ。
やせさらばえた仲間の体を抱擁し、カイの神に感謝の祈りをささげる。
そう。
忘れてなどいなかった。
ペイドも俺と同じく狂戦士。同じく怒りを力に変える者。同じく邪悪を宿敵を思い定めた者。
―― 決して冷えることなき、復讐の煉獄に心燃やす者。
その気概が、戦士の魂が、解放されたペイドの心に再び灯をともす。
ドラッカーの野郎共、オマエが死んでダナーグで腐り果てたとか言いやがって」
「はっ、そんな寝言を信じたのか?」
「馬鹿言え。オマエは腐ってからが本領だろうが。現にここまでやって来た」
「俺だけじゃないぜ。タレストリア軍、アダマス卿もだ。トーガールの門は破られた」
「マジかよ、イェッヒー!!」
その笑いはどうかと思わせる病的な喜びようだ。
得がたい戦力を得て、互いに気力を倍増させる。
「で、今はどんな任務を負っているんだ? トーガールの陥落か?」
「そいつはアダマス卿の仕事。俺のは別だ」
探索のあらましを語り聞かせると、ペイドの口元に不敵な笑みが浮かんだ。
「俺を助けたことを感謝するが良いぜ、ローン・ウルフ。ロアストーン のありかまで案内しよう」
「知っているのか雷電
「任せろ弱凡。このペイド様が復帰したからにはトーガールを土台ごと吹き飛ばしてくれるわッ!」
「あ、そう」
まあ戦力の方は大して期待しないけどね。8巻じゃ肝心のシーンで椅子落ちを繰り返していた漢だもの。
適当にうなずいているとペイドが両手を差し出していた。
「だから、ほら」
「は?」
「この俺はいやしんぼだからさっさとよこせ。武器よこせっての」
「あー」
嬉しそうにかつ物欲しそうに戦力の増強をねだるペイド卿を一瞥し、一言。
「無い。強いて言うと愛と勇気?」
「…………ボケナス!疑問形かよ!死ね!」
もっともなご託宣であった。丸腰コンビの誕生である。
とはいえ、潜入任務には最適のパートナーだ。
バケロスは猫のように音もなく移動する術を心得ている。
2年の監禁生活で知悉した廊下を進み、罵られ鞭打たれる奴隷の列を避けながら最深部へ急いだ。
牢獄はいたるところで作業用の「穴」に通じており、そこからあの大空洞へ奴隷が送り込まれる。
「気をつけろ、次の間が正念場だ」
「何がある」
足を止め、ペイドが苦々しく吐き捨てる。
「ナーグ靡下の直属兵、死の騎士たちの一個師団だ。片付けるしかない」
「……そいつはハードワークだな」
丸い広間だった。中央奥、階段を上っていった壇上に、巨大な三角形をした扉がある。
そこに死の騎士団たちがたむろしていた。1ダースは下らない。
セザ攻防戦では一人でさえ苦戦させられた相手だ。あれほどの敵を、素手の男二人で殺しきれるだろうか。


―― そのときだった。


不意に耳障りな警報が、牢獄エリア全域にひびきわたる
死の騎士たちは互いに顔を見合わせ、階段を降りはじめた。まさか、気づかれたのか……?



  予知を身につけていれば、299へ。
  予知を身につけていなければ、52へ。



通過パラグラフ:(328)→260→278→307→88→299  治癒術の効果:+5点   現在の体力点:29点
(つづく)