ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ120→→→パラグラフ330:狼に墓標はいらぬ!ここは地獄のトーガール!:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



総攻撃の指令は、すみやかに全軍へ行き渡った。
かすれた兵士らの喚声と進軍ラッパの大音響が、にわかに野営地を騒然とさせる。
トーガールへの突撃路はただ一箇所、天然の大石橋のみ。
必然、そこは203高地も真っ青な巨大屠畜場だ。
生存の確率を引き上げるため、連合軍はこの石橋にジグザグの塹壕を掘りすすめた。
装甲歩兵連隊が陣形を組み、突撃命令を待つ。
彼らは、積みあげた丸太と土嚢の防塁にそって走らねばならない。
トーガールの銃眼胸壁から降りそそぐ無慈悲な矢から身を守るため、前かがみの背中に湾曲した盾を背負うのだ。
塹壕の最前線から、鉄の城門までさらに45メートル。
6巻の激戦地テカロもかくやの自殺行為、煮えたぎった魔女の釜の底に等しい地獄だ。
いちおう遮蔽物はある――
初期の突撃で射殺された、無数の兵士の死体の山が。
「で、さあ。アダマス卿聞いてるかい?」
「無論だとも、ロルフ!」
飛び交う矢と怒号に負けじと大声を張り上げる。
「何で俺とあんたが塹壕の先端に縮こまっているのさ!?」
「おやおや、こんな時に冗句かね?」
HA−HA−HAと豪快な笑いをまきちらす全軍総指揮官。あんたこんなとこにいて良い訳ねえだろーが!
そして俺の武器はどこいったんだこのスカンタコ!!
「ン?武器って何の話かね」
「おやおや、心の中の声が漏れてったらしいなァ―― 武器よこせコラ」
「君は全身が凶器そのものじゃないか」
HA−HA−HAと豪快な笑いが戦場にまきちらされる。
こいつは本当に殴った方がいいかもしれない。どうせ、何したって状況は好転しないだろうしな。
端的にいえば、だ。
案の定、武器の補充もないまま、俺は塹壕の最先端に引きずり出されていた。
ずらりと武器を引っさげた歩兵たちの中を歩きつつ、誰一人、丸腰の俺に武器を渡そうとしない――
い、イジメか?
これは―― イジメなのか?
と、云う訳で。
俺は徒手空拳のまま、先陣部隊にまじって塹壕に隠れ、丸太の切れこみからトーガールの門扉をうかがっているのだ。
負傷した将校から手渡された肩がけ鞄をアダマス卿が開く。

「あらゆる扉には鍵がある。見たまえ、これが古マギの叡智……トーガールの門を開く鍵だ」
「ただの水晶細工……にしか見えんな。鍵穴はどこにあるんだ」
「ある訳ないだろう。この長い突起を押すと、10秒後に我々専用の大穴ができあがる算段だ」
「……鍵っていわねーだろ、それ」
豪快な軍人笑いに愛想がつきてそっぽを向く。
何のことはない、作動原理はよくわからんがこの爆破装置を城門にセットしてこいって話だ。
で、犠牲的精神の塊みたいな決死隊に志願したのはどなたで?


 アダマス卿は静かにポケットからコインをとり、空中にはじいた。
「我々のうち1人が装置を置いてこなければならない」
 コインをつかんだ彼が言う。


「あー。なんだ、その、反対動議が出てるぜ。『我々』とやらのうちの半数の人間から」
「残念だな、残りの半数は賛成していて、指揮官も同意見らしいぞ」
死んだ目をした俺に、こんこんとアダマス卿が語りかける。
「君と私の2人だけが、このデスミッションを生き延びうる可能性のある俊足のエキスパートなのだ」
「……やれやれだ」
まあアダマス卿が武闘派なのは知っていたけどな。
要するに、俺が行かないで済むならそれでよし、ってことだ。だから、この場合は、



  予知を身につけていて、使いたければ、14へ。
  「頭」と言うか。330へ。
  「尾」と言うか。212へ。


即座に予知を発動させて、ババを引かないよう、コインの表裏をですね、


 教えの力をアダマス卿の手に集中させるが、君はコインがどちらを
向いているのか見分けられない。探知できるのは、強い魔法の磁場で
コインが保護されているということだけだ。


「あー………………あんたそこまでするか」
ってぐらいの過剰なカイ・マスター対策。したたかさにも程がある。
もういい加減面倒なので「頭」を選んで宣言。
開いた手の中のコインは「尾」だった。
「大いなる運命はこの超級英雄的任務にカイ・マスターの君を選んだようだ」
……え?
これ引き当てた奴が走っていくんじゃねーの? ああ、外したから俺の仕事になっちゃったの?
まあ良いや、もう本当全てがめんどい。あと依然として丸腰。
そしてアダマス卿がすごい笑顔。
ものっそい満面のいい笑顔の者。
死ね。


毒づきつつしぶしぶエネルギー・クリスタル の入った革鞄を肩にかける。
「石弓で援護する。破片が門扉にブチあたるよう装置を置きたまえ」
「あいよ」
「忘れるな、起動させたら戻ってくるまで10秒しかないぞ」
……矢の飛んでくる戦場を10秒で45メートルだそうだ。
まあいいか、障害物競走でその程度ならアリアリだ。
ため息とともに防塁から跳躍する。
アダマス卿の下知のもと、いっせいに矢が頭上をかすめて飛び交いはじめた。
もう笑ってる場合じゃない。限りなく死にそうだ。今。



「乱数表」を指せ。
 上級狩猟術を身につけていればその数に2を加えよ。太陽の伝授のサークルを修めていれば、
さらに2を加えよ。


  0から1なら、243へ。
  2から7なら、99へ。
  8以上なら、184へ。


1/3の高確率で針鼠だ。乱数表を指す、出目や如何――


通過パラグラフ:(120)→78→14→330  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:37点
(つづく)