ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

タレストリアの紋章がたなびく

【パラグラフ335→→→パラグラフ6:自由国家群の反旗:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



森は急峻な斜面となり、ゴースト島を見渡せる尾根の頂上へ通じる頃、夕日が大地を舐めていた。
森林狼の遠吠えを耳にし、柔らかな苔の寝床を捨てて樹上で眠りにつく。
ここからが長く遠い樹海踏破の道のりだった。
モガドールの森には、ゴースト島やヘルスワンプほどの危険はないが、さすがにダークランドに接する辺境地帯。
彷徨う野生のクローンや餓えた森林狼の群れを察知しつつ、広大な領域深くへ踏みこんでゆく。
鬱蒼とした木々で日は翳り、時間感覚が抜け落ちていく。
孤独な旅だが、食料には困らなかった。野生の小動物や山鳥を狩り、舌鼓を打ちつつ進む。


……9日目を数えた朝、灰色の松が減りだした。
じきに大地はくすみ、生育する植物が乏しくなり、獣の気配が減っていく。
森はとぎれ、硫黄土の黄色く翳った不毛な景観へ消えていく粗い石造りの街道を見出した。
地図を広げて方向感覚の正しさを再認する。
ここはナデュリット=ザガ山脈のふもとにあたる丘陵地帯。
トーガールの要塞から、32キロたらずだ。
原生林を踏破して来たせいか、ひさしぶりの舗装道の滑らかさに戸惑いつつ歩きだす。



北へ向かって正午までに16キロ進み、不気味に黄濁した渓流をまたぐ橋に到達した。
ここで食事休みをとった。
休息を追え、橋をわたりかけたその時……
遠雷のような蹄の音がこだました。
一群の騎手が、北方より砂塵をあげ街道をこちらに近づいてくる。



  上級狩猟術を身につけていて、プリンシパリンの階級に達していれば、12へ。
  上級狩猟術を身につけていないか、プリンシパリンに達していなければ、
   これらの騎手がやってくるのを待つか。122へ。
   あるいは、橋の下に隠れても良い。322へ。


上級狩猟術の力が俺に常人のそれを超えた、狩猟獣の視力をもたらす。
焦点が合うと、騎兵たちは深紅と灰色の外套をまとい、開いた手のひらをかたどった紋章を刺繍しているのがわかった。
ダナーグへの旅路の折、エバイン女王の下で目にしたタレストリアの旗だ。
敵ではないと知り、大きく手を振った。
「止まれ。何者だ」
「見ての通りのエル斥候兵、名前はロルフだ。所属はグレイゴール皇子つき皇宮護衛兵」
将校の母国語で返すと、いかつい顔に笑みが広がった。
彼の話では、ダークロードの配下が丘陵に侵攻しないよう偵察しているらしい。第六感がその話を裏付ける。
「われわれの指揮官に会わないか、ロルフ。両国の戦況を把握できるはずだ」
「……そうだな」
うなづき返し、将校の軍馬に同乗する。
どうやら、ダークロードへ反攻しつつあるのはレンシアだけではないらしい。
問題はこの先だった。
俺の探索は、彼らの戦況にかかわりなく、トーガールに侵入してロアストーン「のみ」奪取すること。
つまり彼らの侵攻計画と俺の目論見が反する可能性もある、ということだ。
タレストリアには知り合いも多い。
エバイン女王みずからが出陣することはないだろうが、さて……吉と出るか、あるいは。
物思いにふける俺をのせ、軍馬はみるまに褐色の丘陵を駆け上っていく。
「見えたぞ、ロルフ」
将校の言葉に、俺は思索から引き戻された。
「あれがトーガールだ」


―― ダークロードに与するドラッカー軍の一大拠点、要塞都市トーガールの威容を俺は見下ろしていた。



通過パラグラフ:(335)→125→12→61→6   治癒術の効果:+3点   現在の体力点:31点
(つづく)