ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

バシュナのナイフが砕け散る――

【パラグラフ310→→→パラグラフ300:世界の中心で、呪詛をさけぶ:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



『オグ・コア・ガッガズ』。ジャーク語で焔の斧を意味する、魔力ある武器。
瞬時に数千度の熱で傷口を灼き、致命傷を与える巨大な斬撃が、腹腔ににめり込んでくるっ!
こいつを生身に食らって生き延びうる者など存在しない。
唯一の例外をのぞいて。


 打撃にあわせて回転しつつ地を転がり、地面にたたきつけられる衝撃を和らげようと
するが、食らってしまった傷はひどく、あまりにも力を失ってしまったため、すぐには
起き上がれない―― 体 力 点 を 8 点 う し な う 。


 ま だ 生 き て い れ ば 、 321 へ。

コンマ数秒での回避。
戦斧の軌跡にあわせ、完璧な等速で躯をひねり、傷口を最小限にとどめて斬撃のエネルギーをそらす。
断線していく不随意筋を麻痺させ、腹圧ではみだす臓器を両手で押さえ込み、治癒術を全快にする。
再生しだす腹部にのみ、すべての生命力をそそぎこむ―― !!
「ふふん、どうやら……只のネズミ、では、なさそうだなァ」
「……ほざけ、シンザール」
色を失い震える唇から息をこぼし、鮮血に濡れ光る脇腹を見下ろす。
なんというリアル死狂い。
斬撃のダメージにより残り体力は8点。昨夜の偵察任務につづき、またしても必殺の2連コンボだった。
ターン制限をつけた戦闘でプレイヤーを急かしておきながら……


1.勝利と同時に 無 条 件 で 武 器 破 壊。
2.さらに回避チェックに失敗すれば+8点の追加ダメージ――


―― って。
「マジで、なのか……………………!!???」
がくりと泥濘に膝をついた。
いまだ信じがたく、無手空手となったおのが手を愕然と見下ろす。
握っていたバシュナのナイフ 、憎悪と殺戮衝動によって俺の手になじんだ凶刃はどこにもない。
燃える戦斧の一撃を受けた、あの刹那の絶叫と轟音を思い返す。


 一撃を受けとめるが、君の武器は火花のような輝きを放って砕けちって
しまう――男爵は魔法によって鍛えあげられた武器をふるうのだ。
(「 ア ク シ ョ ン ・ チ ャ ー ト 」 か ら こ の 武 器 を 消 せ)


そう……か。
そう、いう……ことなのか。
直前でのソマースウォード の分岐は、まさか、この武器破壊のための分岐だったのか……!!
恐るべきことに、この記述には但書が存在しない。
つまりは宝飾矛 であれ、銀の槍 であれ、ブロニン製戦闘用ハンマー であれ……
『オグ・コア・ガッガズ』の真の能力は、超自然の焔をまとうといった虚仮威しではない。
恐らくは『地上に存在するすべての武器』に対して絶対の加護を受けているのだろう。
ゆえに過去に入手しえた武器全てが等しくここで破砕するのだ……。


「シンザール男爵!」
「貴卿はすでに包囲されている。投降すればよし、さもなくば」
「じゃあかまっしいィィァ!雑兵どもが、この儂の炎の戦斧、食らってみるかァァ?」
いつのまにか、連合軍の軍靴が広場にこだましていた。


 エル弓兵が1ダースもの矢を射掛けるが、魔術的な斧の刃に引き寄せられた矢は
激しく音をたてる燃える破片のしぶきと化し、粉々になってしまう。


「わはははは!此度は引くが次こそは覚えておけい、エルの小童どもよ!」
邪悪な哄笑とともに騎乗したシンザール男爵が囲みを突破し、ブラックシュラウド道めざし走りだす。


 騎乗したサーナック王と靡下の騎士団が、ブラックシュラウドに至る街道をふさぐ
……(中略)……
 挑戦的な怒りの喚声とともに、男爵とその馬は横一線の隊列に頭から激突した。
胸の悪くなるような金属のゆがむ甲高い音がとどろき……(中略)……男爵は
サーナック王の槍の切尖で串刺しとなる。


勝利の凱歌が、セザの廃墟を揺るがした。
シンザールの戦死はすぐさま戦場全体に伝播し、連合軍の勝利を揺るぎないものに変えていく。
……そんなことはどうでも良い。
……奴らが勝とうが死のうが。
……いやもう、本ッ当に、そんな下らぬ些事など如何でも良い。


―― 木っ端微塵に割砕したバシュナのナイフ――
―― 秘められし未曾有の悪の力、その無念の断末魔が、今なお耳にこびりつき轟々とこだまする――


「まさかロルフ……お前、一人で……」
「冗談だろう……」
死に絶えたクローンの一個師団を目にして、皇宮護衛兵が畏怖のため息をもらす。
グレイゴール皇子が満面の笑みで、ひらりと馬から下りたった。
膝をつき、うなだれる俺の肩に手をかけ囁く。
「見事なり、ローン・ウルフ卿。そなたがシンザール男爵の気を反らせ、勝利をもたらしたのだ」
「……」
「わが方の勝利だ。今こそエル公国は解放され、トーガールへの道も開けたのだ」


「くぁwせdrftgyふじこlぽ!!」


「ロッ、ローン・ウルフ卿!? 傷病車ッ、早く、早く黄色い傷病車を連れてくるんだァァ!?」
グレイゴール皇子の叫びがむなしく戦場にこだまする。
いうなればこいつは一つの発狂エンド。
ぶっちゃけ記録シートをぶち破り踏みにじって全部なかったことにしたい。今すぐそうさせろ。
そのぐらいの後悔だった。
うそだウソだ……こんな冗談じみた、神のきまぐれに翻弄される展開ありえねぇ。
こうも簡単に、ダークロード最強の一角、バシュナのナイフ がブチ割れるわけがねぇだろうが!
不惑



どなっても喚いても詮無きこと。
すべては終わり、ただ次のパラグラフへと容赦なく、仮借なく主人公を押し流していく。
俺の、俺の俺の俺の俺の俺の俺のスーパーレアMYウェポンがぁぁぁぁ。
二度と入手しえない超絶武器がァァ……
おおおおああああああ……ぅああああああああああああアアアア!!!!!!!!!
おひぃ、おほひひひひぃィィ……
                             ……イェェェァァッッ!!(クライマックス状態)




『最強の業物、バシュナのナイフを失いローン・ウルフ発狂、しかして物語はつづく→To be continued 』
(つづく)