ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ270→→→パラグラフ148:混成狼兵団・出撃:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「サーナック王のもとへ増援要請に向かいます」
より戦闘へつながりにくく、より遠回りを図れそうなルートへ。
現場の将校に用件を告げ、責任を回避しつつクレバーにその場を立ち去った。
まあ、ね。
予備軍なんか率いて丘に向かったら、タフで手強そうなハマーランド兵と真っ向勝負になってしまうからね。
そもそも俺は階級上、士官でもなんでもない。ただのエル斥候兵に過ぎないのだ。
出すぎた越権行為は無用のトラブルの元。


という訳で、馬で急ぎサーナック王の本営へ向かう。
橋で虐殺されたレンシア連隊の生き残りを追い越す。
兵士らは深い衝撃を受け、固まったまま棒立ちになり、あるいは怯えた小動物のように地面にしゃがみこんでいた。
恐怖で塗り固められた表情と慟哭の喘ぎには、戦意喪失の効果しかない。
豪奢な王の天幕目指し街道を駆け登っていく。
と、こちらへ丘を駆け下るレンシア騎兵隊の将校が目に留まった。
将校も俺に気づき、馬首をひるがえす。



  馬を止め、将校がなにを望んでいるのかたしかめるなら、105へ。
  彼の合図を無視してサーナック王の本営へ進み続けるなら、21へ。


「おおい、おおい、そこの斥候兵止まれい!」
「どうしたのだ、将校殿」
「私はサーナック王の元からグレイゴール皇子に助力を請いに来た」
将校の声には切迫感がにじんでいた。
「橋で交戦中のレンシア騎士団は壊滅寸前なのだ。槍兵たちは果樹園まで移動したが、そこで絶望的な攻撃をうけ、動けない」
「なんだって?」
「連隊の大半は右側面から進撃する騎兵団の援護に回り、壊滅寸前の騎士団を救う残存兵力は100名にもみたない」
「……俺は、サーナック王の助力を請いに来たというのに」
今度は将校が驚く番だった。
皇子と近衛騎兵の勝利、そして今直面する絶望的な苦境を手短に説明する。
「無念だ。皇子自身がそこまで厳しい状況では、予備軍を借り受ける許可をいただけるはずもないな」



  自陣に戻り、皇子の予備軍を指揮したいなら、49へ。
  レンシア軍の将校が橋の騎士団を援護する増援の軍を集めるの手伝うのなら、148へ。


……どっちのルートを選んでもガチバトル必死かよ糞ッタレ。思った以上に戦況は逼迫し、深刻だった。
体力回復までのんびり逃げを打つ猶予はなさそうだ。
「事態は把握した。まずはシンザール男爵の打倒が先決だ。私でよければ手伝うがどうか」
将校はとびあがって喜び、手を差しだす。
「私の名はプラーグ。斥候兵、貴殿の名を聞こう」
「ロルフだ、プラーグ。サーナック王の苦境を救うため、共に戦おう」
握手を交わし、馬首を並べてレンシア軍の予備兵力の元へ急ぐ。
予備兵力……
名前こそ立派だが、これはいわゆる急造部隊、農民兵の集まりだ。
ロクに戦闘訓練もないままかき集められ戦場に送られた、ぶっちゃけ烏合の衆。
そこに残存兵力、傷病車から動けそうな兵を叩き起こし、開幕時の橋をめぐる戦闘でトラウマを受けた槍騎兵たちを足していく。
「整列! この90名でサーナック王の支援に向かう」
「十分だ……とりあえず、今の状況下では、な」
満足そうにプラーグも口も歪める。
隔絶され苦境にたたされたレンシア騎士団の救援に向かう、貴重な残存兵力の全容。
それはざっと以下のようなものだ。
―― 石弓兵5名。矛槍兵18名(うち農兵12名)、負傷兵23名。
―― 伝令2名。荷馬車の御者8名。
―― 料理人3名。
―― PTSD発症寸前の槍騎兵たち31名。
「なんという闇鍋連隊。そう思わないか、プラーグ」
「なんの。戦闘どころか野営だって自前でできるぞ。すばらしい構成比じゃあないか、ロルフ」
見事にアイロニカルな笑みを交わす指揮官二人であった。
つか、なんで料理人が混ざってんの!
御者とか意味わかんないしね。
兵士はお百姓も含んだ数だし、どうしようもなく雑多な混成部隊だ。
カイ・マスターとして鍛え上げられた統率力で、どうにか連隊を行進させていく。
仮にも本国ではソマーランド元帥、指揮能力には自信アリだ。
若き日には50名の精鋭部隊を率いた経験もある………あ。
あの時は「うっかり」全滅させちゃったけど( 【4巻リプレイ】 参照)、若き日のトラウマには触れない方向で。


戦場は混乱の極みだった。
左手では丘からの合図に応じてエルの予備軍が皇子を救うべく突撃していく。
前方から右手にかけては、レンシア槍騎兵の大軍勢。
まんまと敵の策にはまり身動きとれなくなった兵士たちが、果樹園の壁いっぱいに広がり決戦に挑んでいる。
渦巻く乱戦の剣戟がはるかにこだまする。
橋に近づくにつれ、魔力の雷で黒焦げになった死体が増えだした。
ねじくれた四肢、融けて皮膚に貼り付いた武器……凄惨な光景を前にして、衝撃の波が部隊に浸透していく。
「進むんだ!」
プラーグ指揮官が叫ぶ。
「魔術師はすでにいない。顔を上げろ、前へ進め!!」
戦場にたなびく煙の向こうから橋が迫り、率いる部下ともども、激戦地に押しやられていく。
6体の死体が縦に折り重なってドブ川を埋めつくしていた。
泥水で足場はぬかるみ、近づきつつある一帯すべてを轟音が覆いつくす。
耳ざわりな吶喊の声、鋼を叩きつける騒音、非業の死の唸り。
……テカロの戦を思いだす。
あれに匹敵するほどの激戦区。死の匂いが沃野を霧のように包みこんでいるのだ。これは、選択を間違ったか……?
だが、退路などどこにも存在しない。
「突撃ィィッヒ!」
裏返った俺の号令一下、混成部隊がどっと最前線に雪崩こむ。
新たな援軍の登場に勇気付けられ、レンシア騎士団はついに橋を阻むバリケードを打ち破った。
狂気にも似た歓呼と咆哮、ドラッカーの絶望の叫びが連綿と戦場をみたす。
橋向こうの街路へ突入していくが、敵の守備隊は完全に命を捨てており、もろとも道連れにと、差し違えようと迫るのだ。
「シャーグ!ドラッカリム!!」
不意に、ジャーク語のウォークライが間近で轟いた。
セザ守備兵の1人、ドラッカー軍の精鋭である死の騎士が、先頭の槍騎兵をなぎ倒して突撃してくるッ!
恐るべき膂力の使い手による両手斧の一撃は、根元から軍馬の首を斬り落とした。
間欠泉のごとく噴出する鮮血を浴びるのも束の間、首無し馬から振り落とされる。
血塗れ顔を上げたその時、敵は俺をまたいで高々と両腕を振りかざしていた。

断頭台の一撃が、直下の俺に襲いかかる――



通過パラグラフ:(270)→197→105→148(戦闘) 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:19点
(つづく)