ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ42→→→パラグラフ270:狼、見(ケン)に回る:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



破壊的な魔力を打ち倒さんと突撃するグレイゴール皇子をあったかく送り出す。
別に、臆病風に吹かれたわけじゃあない。
いわゆる一つの「政治的に正しいゲームブックプレイ。戦慣れした狼の先読みって奴だ。
ボス級の魔道士とガチバトル。
飛んで火に入る葱しょった鴨じゃあるまいし、間抜けにも程がある。
無論、皇子の身は案ずるし、戦を勝たせる腹積もりもあるが、それとこれは別なのだ。
プレイスタイルは極力クレバーに。
自分の体力は温存しつつ、最低でも25点ぐらいまで回復させておく。その上で余裕があったらアイテムでも探す。
パラグラフ1開始時からの方針には、いささかも揺らぎなどないのだよ?
お分かりかね?


……脳内で言い訳を弄するうち、戦場は次の局面に入ったようだった。



近衛騎士団は、さながら戦場を貫く雷撃だった。
密集する鋼は一匹の獣のごとく、深紅と黄色の三角旗をなびかせ、自在に陣を変えつつ重槍を掲げだす。
驟雨のごとき弩弓も、この高揚した騎兵を押し返せない。
兵力を削いでいく矢の中にあって、彼らの士気は落ちるどころかなお増していくのだ。
「槍騎兵、突撃せよ!」
皇子の突撃命令に応え、槍騎兵がみるまに加速した。
水平に槍をかかげた騎兵たちは氾濫する濁流のごとく丘に激突し、あっというまに駆け上っていく。
この瞬間、寺院の影から魔力の炎が放たれた。
が、時すでに遅し。
打ち下ろされた焔をかいくぐり、グレイゴール皇子は丘の上の寺院へ肉薄していく。
駆け下る魔力の着弾点に兵士はおらず、標的をはずした爆発がむなしく焦土と遺体を巻き上げる。
二射目の炎を放つには間合いが近すぎた。
冷たい鋼がきらめき、立ちはだかるドラッカー連隊と槍騎兵が激突する。
守備隊のわずかな亀裂をかいくぐり、皇子と直属騎兵一個小隊が寺院へ突入していく。
ドラッカー連隊の亀裂はすぐに修復され、凄惨な白兵戦がはじまった。
縦横に切りたてられ、じわじわドラッカー軍がぐらつきだす。
熟練のドラッカー連隊とはいえ、エル公国軍の華である近衛騎兵には叶わない。
犠牲者の拡大とともに戦線は崩壊しはじめ、ついにドラッカーたちは混乱におちいって町へと逃げだす。
直後、轟然たる爆音が丘の頂を揺るがした。
黒煙の渦が寺院を飲み込み、煙と残骸が火山の噴火のように廃墟からあふれだして視界をさえぎった。
その暗雲をかきわけ、グレイゴール皇子が姿をあらわした。
おそらくは単騎であの魔道士を殺したのだろう。
エル公国の旗を高らかに丘の頂に突き立てると、連合軍全軍が歓呼をもって応えた。
近衛兵が丘を奪取し、連合軍を脅かす魔力は排除されたのだ。
―― だが、この時。
戦場を観察する狼の目は、速やかに迫りつつある新手の致命的な脅威を目撃していた。
丘を奪還すべく、敵陣の後方からブリガンディの傭兵連隊に支えられたハマーランド兵が迫り出してきたのだ。
その数、少なく見積もって500人。
近衛騎士団の勇猛さはすでに実証済だが、彼らは今や半数近い戦力を失っている。
1対5の物量で迫りくる敵の第二陣に圧倒されてしまうかもしれない。
いまや、皇子を救いうるのはエルの予備兵力だけなのだ。
     


  皇太子の予備軍をひきいて、丘へ行進させたいのなら、49へ。
  馬でサーナック王の野営地へ向かい、皇太子を救って欲しいと頼むなら、197へ。


さあ、どうするか。
……などと悩むまでもあるまい。
この狼の振る舞い、立ち位置から行っても、とりうる最良の道はすでに決まっていた。



通過パラグラフ:(42)→163→137→270 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:17点
(つづく)