ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ150→→→パラグラフ42:皇子の決意:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



レンシアの徒歩騎兵が先陣を切った。
連綿と流れる大河のごとく、密集した隊列は秩序を保って戦線の中央部、要となる件の石橋めざし行進していく。
すぐに、悪夢にも似たあの唸りが耳を聾した。
射程内に入ったとたん、ドラッカー軍が一斉に矢を放ったのだ。
逆巻く急流のような快音を上げ、雲霞のごとき黒い矢が密度をもって鎧を着た軍勢を絨毯爆撃する。
突撃していく騎士たちは、この苛烈な衝撃に陣形を崩していた。
進撃する集団が、石弓のもたらす圧力で徐々に進行方向をねじまげられ、南の側面に追いやられていく。
ごく薄い防具を着た弓兵など、密着すれば造作なく撃破できよう。
だが、その隙が与えられないのだ。
ドラッカー全軍の第一射が終了し、厄介な弓を再装填しだす頃には、半分以上の騎士が矢で倒されていた。
生き残りはしりぞき、果樹園にむかって前進するレンシア軍槍兵と合流する。
「レンシア騎士団を援護せよ。突撃をかけるのだ!」
グレイゴール皇太子は合図を下す。
きびしい白兵戦にさらされるレンシア騎士団を援護すべく、槍騎兵と歩兵が動きだす。
その時だった。


 橋から90メートルのところで、バチバチと音をたてる雷光が廃墟の寺院から
放たれた。破壊的な衝撃をもった光線は密集した隊列をつらぬきながら引き裂き、
槍兵たちを宙にふきとばす。


「何ィッッ!?」
驚愕よりなお早く、大地をクレーターの如く爆発が抉り穿つ。
遠眼にも、兵士たちが全身を引き裂かれ、血肉の雨を降らす惨状がみてとれた。
計算された奇襲と、一撃のもたらすパニック効果はいかほどか。



  予知を身につけていて、チュータリーの階級に達していれば、323へ。
  上級狩猟術を身につけていて、プリンシパリンの階級に達していれば、258へ。
  どちらの教えも身につけていないか、階級に達していなければ、42へ。


予知も上級武術も条件を満たしている。
ここでは上級狩猟術を使い、マグナカイの教えで獣の域まで視力を高めた。
雷光の射出地点に焦点を合わせる。
北側、打ち捨てられ荒廃した寺院の頂に、元凶が身を潜めていた。
銀鎧をまとい、金の鋲が打たれた兜をかぶる戦士だ。
飾りけのない鉄の杖を戦士がかかげる。
とたん、青白い炎が杖から打ち出され、致命的な精度でエルの槍騎兵を引き裂いた。
恐怖の絶叫が空気をつんざき、生き残りの兵士らが戦意を失いパニックのまま散り散りに後退しはじめる。
伏兵の存在を、ただちに皇子に知らせる。
「神に誓って!これはどんな暗黒の魔法だというのか?」
「ヘルガストの杖によく似た魔力の源を携えています。魔道士本体を叩くしかないでしょう」
あえぐグレイゴール皇太子に助言する。
容赦のない虐殺にぞっと身を震わせた王子は、次の瞬間、全身をこわばらせた。
「……奴を排除しなければ、この戦いを落としてしまう」
司令官としての経験が、皇子を冷静にさせる。
レンシアの騎士団は橋の手前で立ち往生しており、側面からの魔法におののいている。
このまま弓兵の再装填が終われば、彼らは壊滅するだろう。
「我が愛馬をここへ!」
グレイゴール皇太子は従者に命じて愛馬を呼びよせた。
総司令官にふさわしい駿馬、絢爛たる馬鎧におおわれた優美な白い軍馬にひらりと騎乗する。
精悍な顔に戦意をみなぎらせ、皇子はこちらを見やった。
「共に征かん、ローン・ウル……ロルフよ。戦士の力、卑劣な魔道士に見せつけてやろうではないか」
「御意ッ!」
高揚した空気にあてられた狼もまた戦闘衝動に突き動かされ、獰猛に唇をゆがめていた。
応じた俺にニッと笑いかけ、王子が剣を抜き放つ。
「戦場へ!」



  馬にまたがり、前進する騎兵隊に加わるなら、284へ。
  この場所にとどまり、戦いの趨勢をみきわめるなら、163へ。


皇子に遅れじと軍馬にまたがり、大きく地を蹴る。
伝令たちの制止も聞かず、皇子みずからが先陣をきり、軍馬に拍車をくれる。
奮起した皇宮護衛兵が雄叫びをあげ、どよめきは嵐となってエル公国軍を揺るがす。
放たれた矢のように、楔形の陣形と率いてグレイゴール皇子が疾く戦場を駆けてゆく。
めざすは廃墟の寺院跡、打倒すべきは埋伏された魔道士の脅威。
おそるべき魔力の爆発に生身で立ち向かう覚悟。
其は蛮勇に在らず。
真に決意と勇気を秘めた偉業であり……


「…………行ってらー」
只一歩、同調するふりを見せたきり、俺は出征する皇子を気持ちよく丘の上から見送っていた。
―― よもや、この狼を卑怯……などとは言うまいね?
言うまいね?



通過パラグラフ:(150)→258→42 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:17点
(つづく)