ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ180→→→パラグラフ261:狼は飛び立っ……た……?:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。




  死の騎士  戦闘力点24  体力点38


 この戦士に念撃は通用しない(念波動は通用する)。


ついに邂逅した通常レベルでの強敵……ドラッカーの最精鋭・死の騎士と刃を交える。
バシュナのナイフ を構えた狼の戦力点は22、素の戦闘比なら−2。
体力点38の敵と渡り合うには上々すぎるコンディションだ。
―― 普段なら、そう、言えるだろう。
ターン制限がついている。そのこと自体も、むしろ当たり前。
そもそもが夜陰にまぎれて敵陣を探る隠密行だ。敵に気取られればすべてが水泡に帰する。


……問題はその先にあった。



  2 回 戦 以下で戦いに勝てば、316へ。
  それよりも多くかかったら、261へ進め。


たったの2回戦で、38点のダメージをもぎ取らなければならない――
この重さ、この重大な意味に瞬時に気づけたなら、読者諸氏もまた歴戦のカイマスターとなりうるだろう。
可能か不可能か、ではない。
どれだけ逆立ちをしたところで成し得ないことも世の中には存在する。
もはやゲームブック業さえ及ばぬ、完全に到達しえないと断言できる、可能性ゼロの戦況なのだ。
戦闘結果表を見れば、一目瞭然。

戦闘比+7以上なければ、2ターンでは死の騎士を殺しきれない――ッッ!!
そして、今の戦闘比は−2。
2種類のハッパ。
念波動。
手持ちのすべてをブチこんで、かつ、全ターンズル業を使ったとしても……最大で戦闘比は+6。
最低限、確実に3ターンはかかってしまうのだ。
「約束された敗北の戦―― そういう訳か」
口中の苦味を吐き捨て、バシュナのナイフ を逆手に、重装のドラッカー正中線へと擬していく。
そうと分かれば、むしろ業の使用は封印すべきだった。
後ろめたさを味わってまで無茶をする局面ではない。最低限の被ダメージで乗り切り、次を目指すべき時なのだ。
潜入任務の失敗はこの時点で決定付けられた。
ならば次は命の確保。
ハッパの無駄遣いも、念波動の使用による無駄な体力消費も、すべて自重する。


ごく僅かに、動きの拍子を変える。
いまだ互いの間合いの外だが、死の騎士は俺の気配の変化に気づいたようだった。
剣士のような、敵と対峙して白刃を交えるための尋常な歩法ではない。
音と気配とをあえて掻き乱し、轟然たる闇の中でひたすら太刀筋に眼を凝らす。
確実に対手を仕止めるという行為に、己の一切を還元する。
必死必殺。
死地に身を晒し、神速の打撃を以て敵を屠る。いわば殺しの為の冷徹な論理に基づいた業だ。
ゆるゆると剣尖を回し、いずれ完全な静止から躍動へと至る、一瞬の潮合いを計る。


―― 初撃で肋一寸を擦められるが(乱数表2)、かまわず間合いへ踏みこみ、鎧の隙間に剣尖をねじこむ(乱数表8)。
    バシュナのナイフ からほとばしる怨嗟の炎で胸当てを両断した(乱数表0)。
    踏鞴を踏んで後じさる敵を逃さず、傷の痛みも忘れて肉薄する。
    最短の一閃で心臓を穿ち、返す刃で首を刎ねた(乱数表7、乱数表8)――
ッッ!


全身血みどろのまま、5ターン目にして死の騎士を泥濘に沈める。
断末魔の呪詛を吐いて倒れふす敵など目に留めず、獣のごとく四つん這いで岸辺を駆け上がった。
鬨の声を轟かせ、さらに30名近い死の騎士たちが橋の両側を滑り降りてきたのだ。
ドブ川での侵入騒ぎはとうにセザ陣営に知れている。
シンザール男爵とその軍勢が、連合軍の斥候を見逃すはずもない。
繰りだされる無数の剣戟をかわしきり、煌々と輝く街道を走りだす。
五月雨のごとく降り注ぐ矢の嵐が行く手を遮り、味方の陣地ははあまりに遠く……


 今やスピードだけが、ただ一人の盟友だ。


「じゃかまっしいわ! お前は『やなせた○し』かよって……の……!?」
うまいこと言えたッ面の本文に罵声を浴びせた刹那、俺の胸板から2本の矢が生えていた。
脚がもつれ、無慈悲な矢の暴風圏の中、糸の切れた人形のように前のめりに傾いでいく。
痛みさえ感じず、ただ項垂れるままに虚ろな視線を落とす。
―― 背中から貫通した矢軸は2本。


2本の矢が軸まで背中に埋まり(体 力 点 を 12 点 失 う)、
君は地面に投げだされる。

  まだ生きているのなら、203へ。


戦闘直後に12点の追加ダメージを食らって、悶絶した俺は頭から街道に倒れこんだ。
まだ―― 死んではいない。
これしきのことで、狼は殺せない。
だが、俺の命は、風前の灯火よりも頼りなかった。


通過パラグラフ:(180(戦闘)→261 治癒術の効果:+1点   現在の体力点:――
(つづく)