ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

グレイゴール皇子が戦略を練る

【パラグラフ244→→→パラグラフ53:剛王サーナック:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



夜の宿営地をグレイゴール皇子とともに視察してまわり、サーナック王の陣営に向かう。
これが戦場で最前線を駆ける皇子の慣わしだった。
開戦前に閲兵し、時に気さくに、時に勇猛に、声をかけ兵士たちの戦意を高めていく。
公国軍はすでに意気軒昂としており、活気に満ちていた。
兵らはグレイゴール皇子が勝利を導くと確信しており、そのことで指揮官である皇子もまた鼓舞されるのだ。
やがて、微風にはためく巨大な黄色の軍旗が見えてきた。
白鳥と青竜が縫いつけられた軍旗を擁する幕営前には、レンシア軍の精鋭、銀鎧の騎士団が直立不動で警備にあたっている。
トランペットが皇子の到着を告げ、騎士たちに付き添われて幕営に通された。
サーナック王は白髪をなびかせ、眉間の奥からのぞく両眼は重厚な威圧感に満ちている。
戦略テーブルに戦場図を広げ、ともに武勇で鳴らす2人の司令官―― 王と皇子が、明朝の戦いについて議論をかわす。
各連隊の配置・進軍経路、予想される衝突地点が地図に記されていく。
だが、地図には空白が多かった。
「シンザール男爵が収容した増援の数だけでも知ることができればよいのだが」
「そうすれば、私たちの作戦も成功を確信できるでしょう」
王の言葉に、皇子もまた同意する。
「彼らの守りを探るため兵を送らねばなりません。数百もの兵をあたら無駄死させないためにも」
「余はそのような困難な任務のために訓練させた兵を持っていないのだ」
ちらりとこちらを見やる――
サーナック王の視線に、ふと、邪な思惑を感じ取った。
この展開……もしや……?
「しかし、皇子殿下は優秀な斥候兵をお持ちでおられるな」
「……」
「闇の国土でのスニーキングミッションを成し遂げた優秀な兵だと聞き及んでおる。彼をぜひ送って頂けないか」
「サーナック王……」
気づけば、王は鷹揚な笑みを浮かべ、グレイゴール皇子に返事を迫っている。



 グレイゴール皇太子はためらった。
 皇太子は理由もなく王の提案を拒否できない。だが、あえて君を敵陣に送れば、
その命と探索の旅を危険にさらすことになる。


  敵軍の位置をさぐると君自身が申し出るなら、53へ。
  発言せず黙っているのなら、171へ。

……いやはや、恐るべき老獪さであることよ。
サーナック王も、そして、われらがマグナマンド世界の作者殿もだ。
狼としてのロールプレイをこれ以上ないほどくすぐるクールな展開だった。
王直々のご指名というヒロイックな選択肢。
しかもカイ戦士の身分を隠したまま、斥候兵として、極まった能力でもって敵地を探れという。
潜入任務だから成功したところでゲイン(報酬)は少なかろうがね。
でも、歴戦の冒険者としては我慢できないよね。
言うなれば冒険心が止まらないのよね。
もはや一巻の頃のDQN坊やではない、最後のカイ・マスターならではの技量を見せ付けてやろうじゃないの。
あまねく戦場に居合わせたすべての者共に、格の違いを教えてくれよう――


「お任せください、サーナック王陛下。たやすく任務を成し遂げてご覧に入れましょう」


気づけば、一歩進み出て志願するこの俺がいた。
(つづく)