ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ308→→→パラグラフ244:セザの野営地にて:(死亡・15)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



黎明の輝きが、凱歌をあげるがごとくルオミの壮観を照らす。
夜明けと同時に陸続と宿営地からあふれだす連合軍の整列は実に午前なかばまで及んだ。
その数、総勢6500。
騎兵、重槍兵、弓兵、斥候兵、そして隘路という隘路を埋め尽くす無数の歩兵の頭。
エル・レンシア両国の最大兵力がルオミを席巻する。
進軍の喇叭を合図に、滔々たる大河のごとく、連合軍の兵士たちが動きだす。
次々に隊伍が列をなし、街の東門をくぐり抜け、セザへ伸びる街道を整然と進軍していく。


両国の軍旗が誇らしげに靡く


グレイゴール皇子の姿は、その大軍の中央付近にいた。
皇宮警護の任につく生え抜きの騎兵隊に混じり、グレイゴール皇子の傍らを征く。
ここでは、俺はただの斥候兵ロルフだ。
カバーストーリーは「数年にも及ぶモズゴール潜入任務から帰還した唯一の公国斥候兵」。
敵の内情に通じており、ために助言役となった……そんな設定だ。
狼の真の素性を知るものは、頼もしきエル・レンシア連合軍の中でさえグレイゴール皇子一人きり。
列をなす軍勢の前後を固めるのはレンシア軍の騎馬偵察兵だ。
機動力に秀でた彼らが油断なく待ち伏せに目を光らせ、広々とした沃野を横断していく32キロの道のりを哨戒する。
敵軍の動向をさぐるため先発した偵察兵は、午後いっぱいをかけ戻ってきた。
報告では、シンザール男爵はセザに篭もって、守りを強化している。
ルオミでの大敗を教訓としてか、ブラックシュラウド街道からさらなる増援部隊をつぎこんでいるらしい。
「芳しくないな、ロルフ」
「はっ」
「知っての通り、セザ周辺は守備に適した地形だ……苦戦するぞ、これは」
皇子の表情は芳しくない。
予想通りの大乱戦、傑作ゲームブックの誉も高い魔人竜生誕もかくやのボスラッシュが開幕しそうだ。
皇子には悪いが、極力、戦わない方針で行くと決める。
俺はここで勝つのが目的じゃあないし……な。


残照が地平を舐めるころ、全軍が街の周辺域に到達した。
深まりゆく闇のなか、数年前に蹂躙されたきり荒廃した町の残骸と、そのはざまで揺らめく敵のかがり火が見て取れる。
寒々しい夜風にのって届くのは、奴隷たちを叱り飛ばす荒々しいジャーク語だ。
緊張のひと時が過ぎ、伝令が全軍をまわった。
ドラッカー軍に動きはなく、一日通した厳しい行軍の疲れを取るため、夜襲は行わないという命だ。
すぐに隊列は散り散りになり、無数のかがり火が灯された。
騎士団の宿営が設置され、いくつもの馬車から糧食がおろされて、野営地がにわかに活気付く。
皇子はセザを見渡せる北側の丘に本陣を置いていた。
レンシアのサーナック王も同じく、南へ1キロほど離れた丘の上に陣を敷いている。
仮設の幕営が建てられた直後、サーナック王からの伝令が作戦会議の招集のため皇子を訪れた。
「30分で向かうと伝えてくれ」
伝令を返すと、二人きりの部屋で皇子はこちらに向き直った。
「私は行かねばならないが……卿も同行されるかね」



  皇太子とともにサーナック王の本陣まで同行するか。244へ。
  招待を断るか。90へ。


「……戦況を把握しておいて損はない。同行しましょう」
「うむ。では行こうか、ローン・ウルフ卿」
皇子の後に続き、本陣を後にする。
ぶっちゃけ、混戦のなか待ち受けるボスは1人2人ではないだろう。
敵軍の配置を知り、かつ予想される進路が大体分かれば、そこを外れてラクできるに違いないのだ。
徒に体力勝負を挑むは愚か者の所業なり。
これでも一国の元帥を任されるほどの頭脳と武力の持ち主なのだ。


 12名の護衛兵と皇室づきの伝令たちを引き連れた皇太子とともに、
サーナック王の野営地へ徒歩で向かう。


クレバーに立ち回りつつ、あわよくば戦場で金目のものでも探し出す――
道理を曲げて押し通してこそのカイ・マスターだ。

(つづく)