ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ116→→→パラグラフ286:犬頭の魔王・タガジン:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



乳なる創世の河のごとくに淀みをたたえた旧神の眼が闇を貫く。
最強の善と最古の悪がここに視線を交わらせる。
哀れなロークが何を思ってストーンランドから北の大地の果てまでやってきたか、知る由もなければ興味もない。
奴のちっぽけな領土が蹂躙されていようがいまいが、そんなことはどうでもいい。
重要なことは唯一つ。
奴のくだらない企みに巻き込まれたこの状況が、偶然ではなく運命の導く必然だということ――
デーモンロードの首がぐるりと捻じれ、俺の存在を認識した。
白眼でひたと見据えたまま、吼えたける超常者の意識が鉤爪さながら脳に食い込んでくる。



  念バリアを身につけていれば、26へ。
  念バリアを身につけていなければ、213へ。


「舐ぁぁぁめェェるゥなァァ!!!!」
臓腑の底から低い咆哮を発する。
さすがにこの程度の精神攻撃は奇襲としては定番中の定番、想定の範囲内。カイ・マスターを舐めるにもほどがあるッ!
完璧なタイミングで防御のシールドを張り巡らす。


苦痛の波が心を包みこみはじめるが、感覚が圧倒される前に精神の守りが攻撃をそらす―― 
体 力 点 を 1 点 う し な う。


「……ほう」
それでもなおダメージを負わされる。さすがは古き神と言うべきだろう。
あるいは逆にカイ・マスターの能力を誇るべきか。真なる神の一族による直接の精神干渉をたやすく撥ね退けたのだから。
攻撃はやんだが、直後、緊張がみなぎった。
ジャッカルのような四肢をしなやかにねじり、デーモンロードが大理石ブロックから一息に躍り上がった。
一跳びで10メートルの距離を詰め、まっすぐ扉に突っ込んでくるッ!!



  弓をもっていて、使いたければ、147へ進め。
  もっていないか使うつもりがないなら、174へ進め。


バックダッシュと同時にデュアドンの弓をつがえ、ギリリと弦を引き絞った。
優美な肉食獣の体躯が石の扉に激突する。
粉砕、否、爆砕した扉は寺院の壁に激しく叩きつけられ粉塵と化し、もうもうと視界をさえぎった。
この瞬間、矢をリリースする。
神であれ獣であれ、これほどの至近距離で急所を逃すカイ・マスターではないッ!!
あやまたず、矢は深々と胸板をうがち、なかばまで突き刺さった。
手ごたえはたしかにあった……だが。
「トンダ児戯ヨ」
デーモンロードが呵々と嘲り笑う。
ちっぽけなとげを引き抜く程度の仕草で、胸板から矢軸をむしりとる。
折れた矢軸もろとも穴になった矢傷はふさがり、獣神の乳白色の皮膚には何一つ痕跡さえ残らない。
練達の職人の手になる業物といえど、所詮は人の武器か。
魔力も祝福儀礼もかかってない鏃では、一滴の血をにじませることさえ叶わぬのだ。
「有限常命者ヨ、降伏セヨ!」
「……」
「サスレバ、神ノ慈悲ヲ以ッテ、苦痛ナキ死ヲ授ケヨウ」
タガジンが俺に命じる。
そして、ここでようやく……お定まりの、無慈悲な選択肢が示された。



  ソマースウォード をもっていれば、286へ。
  ソマースウォード をもっていなければ、333へ


マグナマンドの鉄則。その最悪のうちの一つ。
ソマースウォード の所持は、ボスクラスの敵を無条件にバーサクさせる発動効果を持つ――
この敵はダークロードの一柱と変わらぬ力、否、互角以上の古き力を有している。
死にたくなければ、命を賭して戦え―― ッッ!!
「つくづく美味しい目を見せてくれる……なぁロークよ」
「きっ、貴様は……なぜ貴様が我らの聖地にいる、狼ッッ!!!」
いまや脅えきったロークが悲鳴をあげる。
もっとも俺のは唯の罵り、独り言だ。
デーモンロードを前にした今となっては、端からこんな雑魚貴族など眼中にはない。


鞘ばしった抜刀の刹那からソマースウォード はひときわ高く轟々と金色の焔を滾らせた。
闇を灼き払う太陽の焔。さえぎるものもなく虚空を疾り、デーモンロードの皮膚を焼き焦がす。
「とうに滅びた旧世代の眷属め。時代遅れの老いぼれ犬なんざ出番じゃあねーんだよ」
「魂ノ宿ス焔……現ツ世ノ座興ヨナ。過ギタル力ヲ持ツ常命者ヨ、名乗ル事ヲ許ス」
「最後のカイ・マスター、ローン・ウルフ。覚えておくがいい犬神、我が名こそ貴様の天敵――
カイ・マントのフードを押し下げ、犬歯をむきだした。
―― 神殺しの男の名だ」


 金色の剣を引き抜くと、浄化された剣の光がデーモンロードの不健全な
体に打ちよせる。まるで、こうした高貴な刃が間近に存在することで衰弱
するかのように、タガジンは不安げな咆哮を発しながら、じりじり寺院の
奥へ退いていく。
 自分たちの主が攻撃に備えだすのを、ロークと彼の支持者たちは部屋の
角にうずくまっておそろしげに見守っている。


そして。
そうして――



俺は、真の地獄を。
一片の希望さえ無慈悲に摘み取っていく、『死』そのものの邪悪な笑みを目の当たりにした。



  デーモンロード・タガジン  戦闘力点45  体力点65

 この超自然的存在には念撃は通用しない(念波動は通用する)。





  デーモンロード・タガジン
  戦 闘 力 点 4 5  体 力 点 6 5


戦闘比マイナス9の悪夢もさりながら。
体力点65の悪夢を前にして、もはや後退の自由さえ与えられていないのだ――



通過パラグラフ:(116)→26→147→286(戦闘) 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:32点
(つづく)