ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ237→→→パラグラフ104:愚神の祭壇:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



裂け目を越えてから、さらに数時間は経っただろうか。
ゴースト島縦断の旅はつづく。
歩きつつガタンの地図を思い返す。島の東側まで抜け、ブロール河をわたればモガドールの森。トーガールは目前だ。
距離的にはルオミ〜ピルシ間の約半分。馬がない今、島を抜けるのに2日程度だと見当をつける。
ここは、ただの未踏地ではない。
ゴースト島の大地となる黒く豊かな土壌に埋没した獣道は、島の中心部へ伸びる、古の敷石の名残りなのだ。
ときおり、コケでおおわれた厚板の残骸が目に付く。
これもまた、原始の樹林が島を征服するはるか以前に建てられた住居郡の残骸だった。
いかな文明が、この危険な地に築かれていたのか。
―― じきに、その答えが姿をあらわし、古代の威容をそなえて俺を睥睨することとなる。



その日の午後遅く、唐突に広大な空き地が眼前にひらけた。
中央にそびえたつ建築物を見上げ、息を飲む。
ピラミッド型の寺院――
間違えようもない。この建築様式は、ダナーグに眠っていたオライドの寺院と同じものだ。
経てきた歳月が違うのだろう。こちらの寺院は外壁も苔むしていて、森と一体に調和するかのごとく一面の植物に覆われている。
ピラミッドの一画だけは、植物が完全に取り除かれているようだった。
この人為的な区画の最下部。
そこには堂々たる2枚の水晶の扉があらわとなり、陽射しをきらめかせていた。



  予知を身につけていれば、314へ。
  予知を身につけていれければ、89へ。


ここで予知の選択肢とは、やはり何かあるようだ。
ロアストーン探索に直接の関係はないといえ、この建造物は無視できないものがある。
油断なくピラミッドに近づく。
やはり、寺院を護る深い藪が刈り取られたのはつい最近のようだ。
何世紀にもわたり寺院を閉ざしてきた水晶の門扉は無残なことになっていた。
太古の錠前はそのまま、ぽっかりと焼け爛れた大穴が開き、侵入者を招きいれてしまっているのだ。
損壊された扉から闇をのぞきこむ。
寺院内部は暗く乾いており、ゆるやかなトンネルが地下へと傾斜しつつ伸びていた。
らせん状の通廊をくだり、広大な、がらんどうの大広間にたどりつく。
うつろな広間からは、二十もの通路へつづく開口部がぽっかりと口を開いていた。
その内の一つから、単調で耳ざわりな旋律と緑の燐光が放たれている。
……この不埒な侵入者は何者なのか。
もはや好奇心をとどめがたく、俺は燐光に誘われてこの入口へと踏みこんだ。
まるで地の底へ沈むかのように、険しい石段がはるかな奈落に消えている。慎重に降りてゆくと、空気は湿りだし、冷気がいや増した。
階段の一段一段は湿気をおびて滑りやすい。
小さなクモや多足類がそこらを這いまわり、俺の足元から我先に逃げていく。
60段を数えたところで階段は終わった。
湿気と年輪で黒ずんだ巨大な観音開きの扉、その前でしばし躊躇する。
扉はわずかに開いていた。まるで覗き見させるかの如く。
すきまに目を押し当て、眼前に横たわる光景の正体に気づいた瞬間、骨の髄まで震えあがった。


……驚くべき選択肢を前にして、全身が狼の戦慄に包まれる。



  これまでにストーンランド諸国に行ったことがあるなら、104へ。
  これまでストーンランド諸国に行ったことがなければ、263へ。


むろんある。忘れようもない最初のロアストーン探索。ストーンランドでの、あの濃密な日々を忘れるわけがない。
良き人々との出会い……それを踏みにじった、神をも愚弄する輩との邂逅を。
そうだとも。
この狼は、あの日の復讐心を―― 純粋な殺意を、狼の誓いを、片時たりとも忘れたことなどない。
すなわち、この選択肢は闇に潜むものの正体を告げている……ッ!!



通過パラグラフ:(237)→50→89→200→104 治癒術の効果:+4点   現在の体力点:29点
(つづく)