ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ77→→→パラグラフ3:狼とゆかいな仲間たち:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



動物コントロール最大の奥義。
よしよしラッシュを繰り出すのは、今、この時をおいて他にはない……!!
咆哮とともに、意志と力を解放する。
”全力デ 俺ヲ アカタズノ群レカラ 救イダセ――
広場に引き倒されたまま、死角にいるだろうクロクマに全身全霊で命じる。
頼む。
発動してくれ、動物コントロール……!!



それは、命じた俺でさえ唖然とするほどの、劇的な変化だった。
面倒くさそうに広場の端で寝ていたクロクマが、突如、背筋も凍るような咆哮をあげたのだ。
まぎれもない殺意を秘めたウォークライ。
躍り上がった巨躯が突進し、一息に俺をまたぎ越える……のしかかっていた野犬たちを一掃して。
前脚のただの一撃でアカタズどもは木の葉のように吹き飛び、俺は手足の自由を取り戻す。
一匹のアカタズなど砲弾のように枝をへし折って消え去った。
数秒後、地鳴りと共に断末魔の悲鳴があがる。受身も取れず大木の幹に叩きつけられ、背骨を砕かれて息絶えたのだろう。
驚愕した戦闘犬は標的をこのおそるべき狩猟者に切り替える。
―― そこから先は早かった。
クロクマの爪が大鉈のように打ち込まれ、殺到するアカタズどもの頭蓋を寸断し、踏み潰していく。
さらに背後から、連携する野犬たちを太陽の剣が薙ぎ払う。
犠牲が四匹に及んだところで、アカタズ共は戦意を喪失したようだった。
腹を空かせたままこそこそ逃げだしていく。

とはいえ、すぐ立ち上がるだけの余力はなかった。
下生えに座り込み、出血の止まらない四肢の傷跡を治癒の力をそそぎこんでいく。
と、不意にクロクマが血まみれの手を振り上げた。
先刻まで犬の脳漿をブチ撒けていた鋭利な爪が、情け深くもナップザックを引っ掛け、俺を立ち上がらせてくれる。
無傷でアカタズの群れを葬ったクロクマは、十分俺とタメを張れるぐらいの戦闘力があるはずだ。
それを瞬時にここまで手懐けるとは……
おそるべし俺。
おそるべし動物コントロール
……などとクロクマ相手にじゃれあううち、大気が騒がしさを増してきた。
クマはこの場を去りたがっているらしい。しきりに首を振り、ついてこいと言う風に俺を促す。
俺に秘密の獣道を案内しようとでも言うのか。



  クロクマのあとについていくなら、58へ。
  そうしないなら、3へ。


なんという心温まる○ィズニー展開か。
だがしかし、ひねくれた狼の気質として、そこまで過保護にされると逆に気分が萎えるのであった。
伊達に孤高の狼と呼ばれるわけじゃない。
保護者同伴じゃあるまいし、テイントールの森をぬける間中、クマに守られて進むのなんざ御免蒙るってもんだ。
仲間だって次々と使い捨てるのがこの俺、非情の狼だからな。
どういう不運か、俺にかかわった人間はごく一部をのぞき、みな非業の死を遂げているのだ。俺のせいじゃなく。
「…………」
―― ま、そんな事はどうでもいいか。
大事なのは、自在に獣を使役するのがこの俺の技能であり、あくまで逆ではないということ。
”ナッ、馴レ合イハセンゾ!”
”アリャマ”
カイの教えを駆使してツンデレ風味にクマと会話。さしてがっかりした風情もなくクマは広場を立ち去った。
殺戮の痕に一瞥くれ、俺も曙光を浴びて先へと進む。


……別の気配が接近しつつあることを肌で感じとったのは、それからまもなくのことだった。
じわじわと歩調が速まっていく。


通過パラグラフ:(77)→117→3 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:33点
(つづく)