ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ18→→→パラグラフ185:罠、待ち伏せ、そして罠:(死亡・14)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



過酷なマグナマンド世界には、サバイバルのための鉄則が存在する。
その一つがこれ。
―― 本文で何かを強制された場合、十中八九、罠が待ち構えている――
「野宿する」ではなく「眠りたくなる」あたりが罠の罠たる所以ということ。
しかも、ここは教えの有無による分岐。
必要とされる教えを身につけていなければ、問答無用で昏倒してしまうのだろう。
回避の難しさゆえ即死はないだろうが、かなりの不利を蒙る可能性もある。
熟慮の末、ネクサスによる突破を選んだ。
全身に精神力の極微細なフィルターを張り巡らし、付着した毒素を洗い流す。
徐々に眠気が退き、青い花々を見下ろして俺は納得する。
これは、この世界で睡眠薬として調合されるラカレスの花。その成分は動物全般に作用するのだ。
そのまま馬を駆り立て、先を急ぐ。


カツン、と小石が転がる音が、耳を打った。


素早く頭上の暗い岩肌を見上げ、巨岩の隙間から見下ろす一対の目と視線が絡み合う。
何だ、こいつは――
さっきから俺を観察していた……待ち伏せか!!


馬に拍車をくれて脱出しようとしたまさにその時、頭上から声が降ってくる。

「斥候兵か……どうした、ルオミから新しいしらせでも持ってきたのか?」



  返事を返そうと思うなら、223へ。
  峡谷から急いで脱出したければ、134へ。


危うく手綱を引いてその場に踏みとどまる。
またしても罠だった。
どう見ても相手はレジスタンス。そう、あの「猜疑心の強い」レジスタンス共だ。
リーダーに面会を申し込むだけで命を賭けたテストを強要する―― そんな気狂い連中なのだ。
本文の流れに沿って逃げだしたが最後、矢の餌食にでもなりかねない。
臆することなく声を張り上げる。
「そっちこそ姿を見せろ。お前たちに朗報を持ってきた」
巨岩の後ろから男が姿を現し、手をあげる。
途端、20人以上の私兵たちが谷間のへり一帯を囲んでずらりと現れた。
装填済みの石弓が俺の胸を狙っている。
兵士らは深紅の上着を身につけ、剣帯を吊るす腰まわりは武器庫さながらだ。
こだまする谷間から、頭上のレジスタンス共に告げる。
「グレイゴール皇太子の命でやって来た。エル・レンシア同盟軍は、ゲザまで敵を追い返し、勝利は間近だ」
「……聞き飽きた古い内容だ。わざわざそんなことを告げるため、皇太子は兵を送らない」
兵士たちが不安そうに体を動かし、再び疑いの色を取り戻す。
なかなか頭の回転が速い男だった。
どの道、こんな下っ端に目的を語るつもりはない。矢継ぎ早に畳み掛ける。
「与えられた任務は戦況の報告じゃないからな。俺は、セブ・ジャレルに助力を請うため来たのだ」
「ほう……分かった」
男の合図で私兵たちは一斉に視界から退いた。
統率の取れた動きで、騎乗した私兵たちが谷間の入り口に姿を現す。
ゆっくりと、警戒は怠らず近づいた。
ここが、最初の接触が、セブ・ジャレルに話をつなぐための最重要ポイントだ――


  牛追いむち をもっていれば、185へ。
  この特別な品物をもっていなければ、342へ。

俺は、絶句していた。


―― 真逆。
―― ラカレスの花、レジスタンスの接触と、2段の罠をかいくぐったつもりが。
―― 実は、3段構えのトラップだった、だと……!?


気づけば、馬の足が止まっていた。
ゆっくりと輪を狭めるようにして、レジスタンスたちが迫ってくる……!!

(つづく)