ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ51→→→パラグラフ329:指導者セブ・ジャレル:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「なんだと!?どういう冗談だ」
「事実を述べたまでだ。お前はセブ・ジャレルではない。なぜ嘘をつく?」
危うい局面だ。
一歩間違えば互いの腰に差す武器が鞘ばしるだろう。
そうなればもはや収拾はつかない。
舌鋒鋭い追及を断ち切ったのは、唐突に轟く深いバリトンの笑声だった。
「なかなかの観察眼だ……どうやら、スカリアの役者ぶりも貴公には通じないようだな、斥候兵殿」
「貴方が……セブ・ジャレルか」

                                    


洞窟の奥、照り返しのせいで死角になっていた横穴から一人の男が進み出る。



豊かな眉と頭髪に埋もれた碧眼がきらめく。
「いかにも。想像通りの姿かな?」


                      


「ああ。グレイゴール皇子から、貴方の伝説は耳にしているからな」
セブ・ジャレルは、流れるような赤い顎鬚と豊かな髪をたくわえた偉丈夫だった。
背丈は優に2メートルを超え、筋肉の盛り上がった肩に狼の毛皮であつらえた外套を羽織っている。
それでいて視線は鋭く、秀でた額は知性を感じさせた。
「興味深い話が聞けそうだな……見張りに気を配っておけ、スカリア。今夜は確実に奴らを素面にさせておくんだ」
「分かりました」
ジャレルの身振りひとつで全員が席を立ち、速やかに広間から下がった。
「人払いに感謝する、セブ・ジャレル」
「なに、気にするな斥候兵。私も貴公の正体と目的を聞きたかったところだ」
「……」
赤い髪の巨人は豪快に笑い、炙り肉を差し出してきた。
ここまでの経緯を語りだす。
会食しつつのそれは、1時間以上にも及ぶ、最後のカイ戦士の昔語りでもあった。
―― 驚嘆すべき話、とはこのことだろうな」
慎重に、口を挟まず最後まで聞き終えたセブ・ジャレルが、エールで濡れた顎鬚をぬぐう。
火から目を上げ、真摯なまなざしが俺を射抜く。
「貴公の話には勇気と知恵がある、ローン・ウルフ卿。相反する長所をその若さで兼ね備えるのは稀なことだ」
それだけの苛酷な経験を積んできたのだろう、と呟く瞳が皮肉な色に揺らめく。
「もっとも、貴公の頼みは私の生命を代償にしかねないのに、見返りときたら微々たるものだからな」
「遠い北の国々からの感謝……あとは、よりよい時代を迎えうる希望ぐらいしか約束できない」
ガタン最大の未踏地、ヘルスワンプ。
訓練を積み上げたエル斥候兵でさえ、ヘルスワンプ内部に踏み込むことはないという。
たとえ周辺域を北上するだけであっても、その危険度とリスクはダナーグのそれに匹敵するのだ。
連綿と続く腐臭に満ちた沼沢地――
そこに潜み迷い込んだ者の肉を喰らう、起源すら忘れ去られた人外の怪異――
「そうだ。馬鹿正直にもほどがある」
猪肉の最後の一片を食いちぎり、ジャレルは骨を背後に放り投げた。
「だが、私の腹は決まったぞ。貴公こそが永劫の闇から我々を救いだす―― 心が、そう感じたのだ」
「では手伝ってくれるのか……自殺行為に等しいこの試練を」
「なに、死ぬつもりはないさ。そこは貴公と同じだ。さあ、慎重さと常識が決心を揺さぶる前に危難に備え、出立しよう」
豪快に笑うと、セブ・ジャレルは幕営をあとにした。
夜のうちに全軍へ向け、ジャレルが俺の護衛としてヘルスワンプへ赴くことが伝えられた。
皇室からの特務であり、成功すればダークロードへ大打撃を与えられることもだ。
野営地で熟睡し十分な食事をとった翌朝、レジスタンスに見送られてピルシへと向かう。
その先は馬を下り、険しく密生したテイントールの森を抜けるのだ。


 忘れさられた小径の痕跡をたどって青灰色の松の森をたそがれまで旅し、
夜になってキャンプを作るために立ち止まる。
 ジャレルが最初の見張りをかってでて、君は感謝しながら葉を敷きつめた
ベッドでくつろぎ、徐々に深い眠りへ落ちていく。


―― 死にたくなければ起きろ、ローン・ウルフ卿」
残忍なテイントールオオカミの遠吠えで目覚めた時、俺の意識はまだ夢のさなかにあった。



通過パラグラフ:(46)→92→85→329 治癒術の効果:+3点   現在の体力点:36点(全快)
(つづく)