ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ176→→→パラグラフ129:ピルシのハルガー:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



街道は見通しのよい草原を突っ切り、彼方に広がる長大な濁流まで延びていく。
町をつなぐ主要な街道であるにもかかわらず、路面は泥でぬかるみ、点々と馬蹄の跡を背後に残していく。
荒漠たる褪せた風景に点在するのは、不揃いな灰色の石の連なりばかり。
近づくと、それらがドラッカーによって破壊された農場や家などの廃墟だと分かった。
戦禍の爪痕を横目に、不毛の泥濘を進んでいく。
2年前の侵攻で母国を蹂躙されつつ、なおドラッカーを翻弄するレジスタンスたち。
その伝説的リーダー、セブ・ジャレル。
皇子自身でさえリーダーの所在を正確に知らないという、秘匿性の高い地下組織だ。
いかに接触し、いかに協力を得るか……
そうした局面でこそ、9巻に及ぶ経験を重ねたカイ・マスターの真価が問われるのだろう。


1時間ほど馬上に揺られていると、暗く渦巻く川にかかった幅の広い石橋が近づいた。
橋の傍らには、監視塔と屋根の朽ちた石の小屋が建っている。
監視塔も今ではドス黒く焼け爛れ、その最上部からは煙が立ち上っていた。
かすかな警戒心がわきあがる。
川べりには鞍を乗せた馬。監視塔に誰がいるのか……
近くの木に馬をつなぎ、基本的なカイの教えで足音を殺しつつ、監視塔へ近づく。
焼け焦げたドアの裂け目から覗くと、くすぶった火の傍に男が屈み、ナイフで串刺しにした鳥肉を炙っていた。
深紅に染まったなめし皮の服を着込み、銅の塊をちりばめた牛追い鞭を腰にぶら下げている。
「一緒にやりぁせんか!」
背を向けたまま、男が声をあげた。
「この雛鳥の肉なら、2人分の食い手は十分ありまさぁね」



見知らぬ男の申し出を受けるか。129へ。
再び馬に乗り、急いで立ち去るのなら、75へ。


―― この男、侮れない。
気配を殺して接近するカイ・マスターの存在に、初めから気づいていたのだ。
それだけで脅威と認識するに値する。
誘いを断れば、むしろ不穏な展開が待っていそうだ。
用心しつつ長靴でドアを押し開け、朝日とともに踏み入った。
逆光にもかかわらず、振り向いた男の鋭い視線が、瞬時に俺の服装をチェックしていく。
「ようこそ『斥候兵』殿」
きついエル訛りで喋りつつ、いかつい顔に笑みを浮かべて俺を迎え入れる。
「俺はピルシのハルガーって者でね。ドラッカー軍に対する勝利を祝って、ささやかな宴を分かち合いましょうや」
投げてよこした焼き鳥をキャッチし、存分に喰らい付く。いい味だ。
ハルガーは、たこのできた手の甲で口まわりを拭った。
「あんたが近づいてくるのが見えてね、ここで朝食を取るため立ち止まるんじゃねえかって賭けてたんです」
「成程」
「で、あんた一体どこへ向かっているんだい?」
ストレートな質問にためらうが、カイの第六感が詐欺師の類ではないと告げる。
この男は信用できるらしい。
「ピルシだ。セブ・ジャレルに連絡をとるよう命じられている」


レジスタンスのリーダーがどこで見つかるか話してもらえないかと期待して君は返答する。
ハルガーは海緑色の目を細めて、考えにふけりつつ自分の顎をなでている。


隠蔽術を身につけていれば、331へ。
隠蔽術を身につけていなければ、267へ。


こ、この展開は……
思わず絶句していた。
全身全霊でカイ・マスターの危険探知レーダーが叫びたてる。
罠、じゃねーか・・・・・・?

(つづく)