ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【昏く不毛なるガタンの地へ:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「ローン・ウルフ!!」
「カイ・マスターとソマーランドに栄光あれ!」
「ローン・ウルフ……タホウの救世主!!」
万雷の歓呼がタホウ市を包み、この1年間、疲弊した人々を市の復興へと導いた北方の英雄を賞賛する。
ソマーランド王室領の元帥でもあるローン・ウルフがアナリウムから登場すると、割れんばかりの歓声が爆発した。
トレードマークである灰緑色のカイ・マントに身を包み、フードの下の瞳は射るように鋭い。
暦は5062年を迎えようとしていた。
長きに渡るアナーリ共和国でのダークロード掃討戦も完了し、人々に惜しまれつつ狼は帰国の途につく。
アナリウムのバルコニーには、優美なる飛行艇―― スカイライダーが停泊している。
ローン・ウルフの姿が消え、快晴の空へ向けて飛行艇が舞い上がると、割れんばかりの歓声が城壁を揺るがす。
「……出立したようだな、リモア卿」
「うむ」
裁判所の一室から窓を見上げて頷く。
リモア卿と賢者グウィニアンが肩を並べ、感慨深げにこちらを見やる。
「一度は民衆の敵となり、今また救国の英雄として去る……どんな気分じゃ、ローン・ウルフよ」
「悪くはない」
袖を通したばかりのタホウ守備兵の制服の組み紐を弄りつつ、俺は返事をした。
―― すべては、壮大なる目眩しなのだ。


1年前のタホウ攻防戦でナーグの放った予言は、デッシの魔法使いたちにも衝撃をもたらした。
カイ・マスターと運命を共にする彼らは、予言の重みを承知していたのだ。
表向きの式典やダークロード残党の掃討に俺が忙殺されるさなか、密かに古マギ人たちはタホウに乗りこんできた。
目的はひとつ。暗黒の軍勢の動向を探り、ロアストーンの在り処を探し出すこと。
奪われたロアストーン探索は困難を極めたが、遂に、貴重な情報がマグナマンド北西部からもたらされた。
エル公国のグレイゴール皇太子が、ヘルスワンブの辺境で救出された兵の知らせを伝えてきたのだ。
そのタレストリア兵は全身に無惨な拷問を受けており、すぐに死んだ。
死の直前、彼は告げたという……
『牢獄から脱走を図る直前、金色に輝く3つの宝石がモズゴールからトーガールへと運び込まれた』と。


「間違いなくロアストーンだろう。善の力が強すぎるため、ナーグはダークランドに置いておけなくなったのだ」
古マギ人の最高会議を代表してリモア卿が述べる。
「トーガールやタノズ周辺にはナーグに仕える悪しき魔術師ナジラニウムたちがいる。近年その暗黒の技術は力を増しており、ロアストーン破壊の手段が見つかる公算は大きい」
「急がなければならないな」
「頼むぞ。ローンウルフ。我々は秘密裏に……しかも早急に……奪還に向けた探索を始めなければならない」
同じ北方人の魔術師バネドンを替え玉にしたてて盛大な式典を開いたのも、すべてはナーグの目を欺くためだった。
俺を殺すというダークロード・ナーグの誓いは、妄執へと変じつつある。
タホウ攻防戦での敗戦直後、バサゴニアではクーデターが発生し、砂漠の帝国は侵攻していた土地すべてから軍を引きあげた。
ダークロード傘下最大の人類国家バサゴニアが脱落したことで、ナーグの描く勝利への流れは完全に狂ったのだ―― この俺の手によって。
だからこそ、俺の居所が悟られるわけにはいかない。
トーガールはダークロード・ドラッカー軍にとって最重要な拠点のひとつ。
ナーグが守りを固めれば万に一つも勝機はない。




【アクション・チャート トーガールの牢獄】  ローン・ウルフ 14人目(13度死亡)


能 力 値   .


・戦闘力点26(19点+2+2+3)  ・体力点36(26点+4+3+3

・金貨11枚  ・27ルーン  (9巻までの金貨39枚すべてをデッシに預ける)



マグナカイの教え(階級:メントーラ)   .


・動物コントロール ・念波動 ・念波動 ・治癒術 ・上級狩猟術

・ネクサス ・予知



習得した伝授のサークル   .


・光のサークル(体力点+3

・精神のサークル(戦闘力点+3 体力点+3



装備(武器 2つまで)   .


矢筒と矢(矢筒1つに6本まで)   .



・バシュナのナイフ

・デュアドンの銀の弓(弓の射撃ボーナス+3)



・矢筒:有(1つ)   ・矢:残り6本


特別な品物(10個/12個まで)   .


ナップザック(8個まで)   .



・水晶の星型のペンダント

・銀の兜(戦闘力+2)

・盾(戦闘力+2)

・鎖帷子(体力+4)

・カルトの火の玉

・ダイアモンド

・火種×2

・精神の指輪

・灰色の水晶の指輪





・ロープ

・ラウンスパーの薬(体力+4)

・ラウンスパーの薬(体力+3)

・アレサーの実(戦闘力+2)

・レンダリムの万能薬(体力点+6)

・オキシデン・チンキ(体力点+2)

・青い錠剤(二服分)

・食料



修道院においていくもの   .


・エデの薬草(体力点+10) ・レンダリムの万能薬(体力点+6)×4

・特別なラウンスパーの薬(体力+5)

・アレサーの実(戦闘力+2)

・アレサーの薬(戦闘力点+2)

・ガロウブラッシュ(眠り薬)  ・幅広剣×2 

・パッド入り鎖帷子(体力+2) ・ソマースウォード(戦闘力+10)

・瑪瑙のメダル

・力の鍵  ・銀の笛  ・プラチナのお守り

・火種×1  ・通行証


毎度巻頭で提供される備品も、ラウンスパーの薬 矢筒 以外は役にたった試しがない。
マグナカイシリーズに入って以降は特にそんな感じだ……それでも一応食料 ロープ を持ってはいくが。
特に今回はひどい。タホウ評議会の用意してくれた装備は不満大爆発だった。
なにより、古マギ人の叡智の結晶、火種 がない。
冒頭で入手できない時点で、前回から持ち越した火種 も、使う機会はゼロだろう。
―― ともあれ準備はととのった。
ついに精神のサークルを修めた狼の武力と体力は絶頂を極めつつある。
ドラッカーの国土を踏破していくことを考え、ソマースウォード は外していく。
太陽の剣の威力はかくれもないが、善の光に狂乱する暗黒の存在が何柱いるか、決して予断はできないのだ。


伝令の出で立ちと兜で素性を隠し、誰にも見送られず、天鵞絨の城塞をあとに南方のフィルマ目指し一路馬を駆る。
フィルマから川船でタロン港へ、さらに大水峡テンタリアスを遥か西へ向かうのだ。


『コー・スカーン、イシールとカイの神々が暗黒の世界へ旅立つ汝をお守り下さるように』
成功を願う古マギたちの祈りを胸に――
エル公国、そしてガタンへの厳しい潜入任務が始まろうとしていた。

(つづく)