ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ131→→→パラグラフ239:ザカーン・キマー:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ついに夜が明けた。
平原を埋め尽くす黒い邪悪の軍勢は、遠い狼の記憶、ホルムガード攻囲戦を思い起こさせる。
漆黒の空が鮮やかな真紅に染まるまで、北と西の城壁を狙う夜間の投石攻撃は続いた。
長い、人々が祈ることしかできなかった一夜がついに明け、攻撃が休止する。
だが、朝靄が晴れるとともに、更なる絶望が現れた。


東の丘陵をこえた夜明けの最初の光が光線となって射してきたとき、ダークロード・ナーグの
軍勢を覆い隠す霧はどこにもなかった――ナーグ軍は戦功を求めて血気にはやり、攻撃命令
を今か今かと待ちわびている。


運命の燎原に視線を投じ、タホウの城壁を打倒すべく配置される比類なき悪の軍勢を目に焼きつけた。
まっさきにバサゴニアの重歩兵団が縦列を組み、西門へ行軍を始める。
「見ろ、ローン・ウルフ。あれは何だ!」
「あれは……暗黒の魔術の技ではないか……」
バネドンが一点を指差し、呆然としたチバンは言葉を途切れさせる。
視線の先にあるのは、軍団の先頭を進む敵だった。
遠目にも分かる。さながら太陽の強烈に輝いてはいるが、いかなる熱も届かない金色の光に包まれた人影だ。
見る間にタホウの城壁から、雲霞のごとく矢が降りそそいだ。
だが、人影のまとう輝く力の障壁に接触するなり、すべての矢は破裂音を立て粉々に砕け散っていく。
攻撃をものともせず、男は橋を渡って西門の前に立ちはだかった。
その手には黒い金属球が。


――「ローン・ウルフは死の球 と引き替えに日没までには引き渡す。それで承知したではないか」
――「死の球 は既に渡した」
――ザカーンの手にした黒い鉄球を見下ろし、ハーコンが冷たく断じる( 【リプレイ224】 参照


「あれは……ヘルジェダドの死の球か!」


俺の声が届いたのか、人影が冷笑を浮かべたように思えた。
憎々しい笑みを浮かべザカーンが迫る
金属球を掲げて何か呟くなり、不可視の火球が撃ちだされ、雷のような轟音を響かせて偉大なる城門を打ち砕く。
鬨の声が湧きあがり、敵軍がタホウへと押し寄せてきた。
金色の光をまとい、再び傲慢な足取りで男が進んでくる。
守備隊の一人は勇気を奮い起こして槍で攻撃するが、瞬時に爆ぜるような閃光に飲まれた。
触れただけで力の障壁に全身を灼かれ、灰の堆積物になってしまったのだ。
人々の恐怖の叫びが兵士たちを怯ませる。
監視塔を飛びだし、螺旋階段を駆け下りて西門へと走った。
奴の狙い、バサゴニア皇帝ザカーン・キマーの目論見が分かったのだ。
次第に、金色の破壊のオーラに包まれた人影が近づく……


遂に、俺たちは向かいあって足を止めた。
数秒の間、言葉もなく対峙する。
俺の抹殺こそが、バサゴニア軍に決定的な勝利をもたらすと分かっているのだろう。
氷のような、それでいて殺戮の愉悦と嗜虐性に満ちた視線を向け、ザカーンが残酷な嘲笑を唇に浮かべる。
「この日を待ちわびたぞ、ローン・ウルフ……最後のカイ戦士」
「それは奇遇だな、ザカーン・キマー……“前”バサゴニア皇帝陛下」
互いに牙を剥き、ドス黒い殺意を重ねあう。
ザカーンが冷笑とともに漆黒の金属球を頭上に捧げ持ち――
狼は戦いの咆哮とともに、心を鋼のように研ぎ澄ます――
存在の根幹を賭けた、熾烈な争闘の始まりだった。



・ソマースウォード を持っていれば、48へ。
・ソマースウォード を持っていなければ、210へ。





通過パラグラフ:(131)→258→  治癒術の効果:+1点   現在の体力点:24点
(つづく)