ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ286→→→パラグラフ131:罪なき者のみ石を投げよ:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



かたわらの城壁をブチ破り、歩道に1トンはあろうかという巨岩がめりこんだ。
「何ですと!?」
吃驚して空を見上げ―― 戦慄でアドレナリンがほとばしる。
なぜ忘れていたのか。
敵は無数の攻城兵器を用意していたはずだ。
その中にはカタパルトがあったのを、既に西門で目撃しているではないか。
遠方の平原から続けざまに撃ちだされる巨人の拳は、警告も発射音もなく宙を飛来してくる。
風を斬る音に身構えたときには、既に着弾直前なのだ。
途切れることのない轟音とともに、俺の周囲はたちまち世界有数の奇岩地帯と化した。
街路や家屋から不自然に岩が突き出す。
カイ戦士の感覚を頼りに回避を試みるが、次の瞬間、まっすぐ俺めがけて岩が落ちてきた。



「乱数表」を指せ。太陽の伝授のサークルを修めていれば、その数に4を加えよ。


  0から5なら、112へ進め。
  6以上なら、270へ進め。


いくらなんでも無茶だろう……!!
デフォルトで6割は圧死。
しかも太陽の伝授のサークルを修めるプレイヤーは、余程の少数派なのだ。
冒険に役立たない隠蔽術のために貴重な教えの欄を一つ埋めるなんてありえないだろう。
手に汗を握って乱数表を眺める。
こればかりはミスは許されない。というよりは、どんなミスだろうとゲームブック業でひっくり返す。
巨岩に圧殺されて、体力点5点のダメージで許してもらえる見込みもないしな。
生きるか、死ぬかだ。
瞑目して闇雲に指す――



結果は「8」だった。
majiで?
むしろ自分の強運に驚く。


銃眼つき胸壁に沿って走り抜けていくと、数秒前に立っていた歩道を根こそぎ巨岩が押し潰す。
次弾がくるころ、俺はとうに安全圏まで逃れていた。
更に90メートルほど進んだところで、城壁を補強する塔の一つが視界にあらわれた。
―― ここだ。
不意に確信を抱いて頭上を見上げる。
塔の最上部、丸鋸の歯のような胸壁の後ろに、盟友バネドンの横顔を見出した。
大声で呼びかけるが戦場の雑音で声はかき消され、やむなく塔の鉄扉を開いて狭い螺旋階段を昇っていく。
梯子を上り、跳ねあげ戸をこじあけた。
「よう。救国の英雄様の凱旋式はどこでやるか知っているか?」
「おお!カイとイシールの神よ!」
皮肉っぽく話しかけると、バネドンは感極まったように声を詰まらせた。
「祈りに答えてくださって感謝します……生きていたんだな、ローン・ウルフ。君は生きていた!」
「いやいや、泣くのも良いがなんか旨い飯と酒をくれよ」
「よくぞ戻ってきた、ローン・ウルフ。どうやら探索をやりとげたようだな」
チバンも近寄ってきて、握手を交わす。
夕暮れが押し寄せ、ついに今日の攻撃も終わったようだった。
限られた灯火の下、糧食を分け合って食べながら、アナリウム脱走後のタホウの様子を聞きだす。
ナーグ軍の襲撃から、今日で3日目だという話だった。
バネドンとチバンはこの塔で戦っていた。
見晴らしの良いここから敵軍の動向を監視し、弱体化したタホウ防衛ラインを強化するため補充兵を指揮したのだ。
タホウ市は2度敵軍の侵入を許し、2度、これを撃退していた。
空からの攻撃が都市を焦土に変えたが、タホウ側の重弓兵の反撃も凄まじかったという。
「今や、連中はとてつもない数のクラーンを失って、空からの攻撃をあきらめているんだ」
バネドンは愉快そうに語り、戦果を披露した。
それでも被害は少なくない。
アナリウムは包囲戦の最初の数時間で破壊されたという。
チル議員とトルトゥーダ大統領を含む多くの上院議員の命が失われた。
「……ジラリス議員は?」
「無事だよ。彼は君に肩入れしていたそうだね」
「ああ。彼が助かったのなら、俺は特に言うこともないな」
その後、ロアストーンを見せてやり、探索の一部始終を語ると、バネドンはわがことのように喜んだ。
「運命は君にほほえんだのだな、ローン・ウルフ。君の成功が大いなる希望をもたらすだろう」
「ああ」
盟友を心配させまいと、言葉少なに微笑んでみせる。
不安は、明日の決戦だった。
迫りくる最強の敵、ザカーン・キマーをいかに倒すか。
おそらく、その切り札の一つが、俺の指にはまっているこの精神の指輪 なのだ。
体力は万全とはいいがたいが、戦闘不能なほどでもない。
すべてを明日にゆだね、眠りにつく。



通過パラグラフ:(286)→270→131→  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:23点
(つづく)