ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

精神の指輪をリーダーに見せる

【パラグラフ256→→→パラグラフ2:タホウのロアストーン:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



”貴方の探索は成し遂げられるでしょう。貴方がたの開祖が数百年前にも成し遂げたように”
俺の名を耳にしてすべてを理解したらしい。
クロカリクスのリーダーから、もはや敵意は感じなかった。
”私たちは、私たちに命を与えてくれたナイゼーターへの義務を果たさねばなりません。さあ、案内しましょう”
「よろしく頼むぜ」
……だが、その言葉の奥に、僅かな悲しみが宿っていることを俺は感じていた。
リーダーの女に連れられ、更に都市の中枢へ潜っていく。
幾多の通路やトンネルを進み、長い階段を下り、いまだかつて人間の目に触れたことのない壮麗な部屋を抜けていく。
1万5千年近くを経てなお、この古代都市には眩いほどの光輝が満ちていた。
こうした広間や部屋に住んでいた古き一族……ナイゼーター直系の竜の種族に対する畏敬を新たにする。
道すがら、俺は気になっていたことを確かめることにした。
「実は『るつぼ』に潜って行方不明の奴がいてな、そいつの指輪が、外の不死者の手にはまっていたんだ」
どういうことだろうと質問しつつ、今は俺の指で煌めく精神の指輪 を見せる。
リーダーは意味深な目をして指輪に目をやり、答えた。
”それは質問ではないですね。貴方は既に知っているではないですか、スカーン”
「どういう……ことだ」
”封印されたこの地を侵す者の多くは、自らの欲望を体現した姿に変じてしまうのです”
一言だけ呟いたリーダーの言葉に戦慄する。
エイベクのことに関しては、マガーナに再会しても話すまいと決める。
あの宝玉には叶わないだろうが、奴に息子の真実を語るのは酷な仕打ちに思えた。


果てしない時間をかけて都市の中を導かれ、遂に目的地に辿り着く。
赤褐色の石でできた、円形の部屋だった。
部屋の床は円周状の階段によって中央に向かうほど低くなり、浅い穴になった中心部には石の台座がある。
近づくにつれ、台座は深紅の光を放ちながら鈍く脈動し始めた。
揺らめく銀の輝きの波動が同心円状に広がって部屋を包み込み、低く魅惑的な歌声が重なり合って遥か頭上の天蓋までこだまする。
カイ・マスターの本能に導かれて台座に上がり、手を丸め、はるか天蓋を振り仰いだ。
金色の光が、闇を溶かして滔々と溢れだす。
輝きは馴染み深い、あの高揚に満ちた燃えたつ暖かさで感覚を甦らせていく。
畏怖のあえぎが階段から発せられ、思わず目をやった。
部屋の階段には、爬虫類人―― 古き都の守護者たるクロカリクス―― がぎっしり立ち並んでいた。
彼らこそ、偉大なカイ神に生みだされたロアストーンの担い手なのだ。
この時、不意にすべてを理解する。
クロカリクスたちは喜びと悲しみの中、目的の成就を見届けようと集まった。
カイ・マスターによるマグナカイの探索を助けるのが彼らの使命であり、種族の意味だったからだ。
ロアストーンの継承は、その使命の終わりと、終焉の始まりを刻むことになるのだ。


 君のはるか頭上で、金色の光の中心に、影が形をとりつつある。
 それは暗く、革のようにしなやかで、輪郭はまるで卵だ。
 影はゆっくりと壊れ、剥げ落ちて広がり、きらめく水晶の球をあらわにしていく。


外の回廊でクロカリクスに遭遇したときのことを思いだす。
あのとき爬虫類人が大事にかかえこみ、中央に安置されていた卵が今、静かに剥けはじめる。
あの革は殻ではなく、あふれだす善の力を密閉し、悪の尖兵に存在を気づかせないための偽装だったのだ。
その外郭が壊れ、みるまに輝きの潮流が俺に向かって押し寄せてくる。
これが―― タホウのロアストーン なのだ――
手を触れた瞬間、この至高の宝珠から放たれる活力の波が全身を経巡った。
細胞が活性化していき、疲労は癒され、深き古代の叡智と力が俺の中へと受け継がれていく。
体力点をすべて取りもどす。
不可視の力に引きずられ、体が宙に浮きはじめる。
極彩色の輝きはさらに眩さを増していき、光の渦の中心へと体が吸い込まれていく。
もはや直視することのできないエネルギーの奔流に飲み込まれ……
最後にクロカリクスたちに目をやって別れを告げ、次の瞬間、俺は古代都市ザーリクスから消滅していた。
膨大なパワーにより、狼の体は転送されたのだ。
再び戦火に覆われた地上へと帰還するために……



通過パラグラフ:(256)→200→150→2  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:33点(全快)
(つづく)