ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ326→→→パラグラフ256:龍の女:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



地竜ツァドレイゴンは昏倒したまま動く気配もないが、それには一顧たりもせず爬虫類の女が近づく。
ザーリクスの議場は静まり返っていた。
おそらく基本言語が違うのだろう。
ソマーランド語、あるいはマグナマンドの共通語ではなく、テレパシーによる念話が脳内に響く。
”これまでザーリクスに進入してきた人間や他の種族とは違うようですね、貴方は”
「……」
”貴方は何を捜し求めているのです”
リーダーの言葉は明瞭だし、誤解の余地もない。
だが、俺は答えず、黙って戦いに備えた。応戦できるよう油断なく身構える。
たちまち女は恫喝的になり、水掻きのある手を上げる。
とたん、12ものアーチの暗闇から、破壊的なエネルギーで砲身を輝かせた水晶の破壊兵器が突きだした。
さっき見たクロカリクスたちのバズーカと同じものだ。
その充填済みのバズーカが計12門、照準を俺に合わせてつけ狙う。
女は勝ち誇ったように告げた。
”常命の者よ、武器を置ろしなさい。命令一つで貴方を原子の塵に還すこともできるのですよ”


「ムゥーン」
そして俺は鼻をほじっていた。


”な、な、何をしてるんです! 早く武器を下ろさないと、原理の塵に粉砕……”
「つーかよォーッ……アンタが嬉しそうに語ってるその『原子の塵』ってナニ?」
”へッ?”
いやまあ、ファンタジー世界の住人たちの掟に従い、ここは突っ込まざるを得ないだろう。
物理学など聞きかじったことさえないマグナマンド人には、女の台詞は脅しにもなりゃしないのだった。
リーダーはムスッと腹を立て、ついでうろたえだす。
”な、な、なんでもです、兎に角コッ酷い目にあわせますよ!!”


おお。
なにやら奇怪な属性を発揮して一部の特殊な紳士受けを狙っているのだが、正直俺にはどうでもいいのだった。
大事なのは、こいつが味方か敵なのか。
そしてロアストーンのありかを知っているのかどうか。それだけだ。
―― そして、何より。
”貴方が何を求めてザーリクスに来たのか話しなさい。私の忍耐が尽きないうちに!”
「順序が逆じゃあねーか、お前ら」
”何を言っているのです”
「先に襲ってきたのはお前らだ。申し開きをすべきは俺じゃあない……違うか?」
冷たく告げ、無造作に一足一刀の間合いに入る。
やすやすと俺の前進を許したという事実が、連中の実戦の疎さを物語っていた。


しばし逡巡の後、リーダーは語りだした。
自分たちがクロカリクスという竜の末裔の種族であること。
善なるナイゼーターの使命を受け継ぎ、この古代都市を護っていること。
邪悪な人間や、ダークロードの手下がしばしば侵入し、今では全員が侵入者に対して過敏になっていることを。
「ダークロードだと!?」
思わず問いかける。
”ええ。かつてダークロード・バシュナの手で、技術者たちが大量に連行されました……この武器のためにです”
アーチから突きだす砲身を見やり、納得する。
こうした飛び道具はマグナマンドではことに貴重だ。
同様のものに、ボー王国の小人が作りだす単発のボー銃がある。
しかし、クロカリクスの兵器は破壊力が桁違いだ。
”今なお数百人の仲間がダークランドに拉致され、彼の暗黒の国土を守る防衛網に組み込まれています”
「ほう」
”悪しき暗黒の力に使役され、善の叡智が悪の尖兵として用いられているのです”
「……では、俺たちは同じ側に立つ訳だ」
リーダーの言葉は、俺の心を動かすに十分だった。
ぱちりと武器をおさめて進みでる。
「自己紹介が遅れたな。俺はローン・ウルフ……最後のカイ戦士だ」


「私はタホウのロアストーンを探している」
 堂々と君は答えた。
「私がここに来たのはナイゼーターの叡智を探し求めてのことだ。その力こそ、暗黒の敵が
生みだした悪夢を打ち破り、友人たちを破滅から救いうるものだからだ」


誇りを胸に秘め、幾度となく口にした呼称を名乗る。
最後のカイ戦士……
それこそ、狼の誇りであり、悲しみであり、復讐の原点だった。
ダークロードを根絶やしにし、カイ修道院を復興させるまで、俺の戦いは終わらないのだ。
放った言葉はこだまし、沈黙の議場を満たしていく。
無表情だった女の視線が柔らかくなった。
”では、我々が永劫の時を待ちわびていたのは貴方だったのですね、スカーン―― 太陽の戦士よ”



通過パラグラフ:(326)→83→256→  治癒術の効果:+2点   現在の体力点:20点
(つづく)