ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

致命的な武器がこちらを狙う

【パラグラフ33→→→パラグラフ241:クロカリクス:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



真っ先に脳裏をよぎったのは「しまった」という後悔だった。
選択肢に思いあたるふしがあったのだ。



・以前こうした六角形の硬貨の1枚を見つけ、調べたことがあれば、161へ。
・調べたことがなければ、この金属のかけらを見てみるか。283へ。
・金属のかけらはそのままにして階段を下るか。130へ。


ほんの数パラグラフ前、ゲーム内時間にして2・3日前、地底湖で出会ったグールが落とした奇妙な硬貨。
あの時は罠を疑って調べなかった硬貨がこれじゃないのか?
六角形かどうかまでは記述もなかったし今更知る術もないが、同じ『るつぼ』の底での出来事だ。
瞬間的に巻き戻しのゲームブック業を使いたい衝動に駆られ、どうにか自制する。
何の危機にも陥っていないうちに、「納得いかない伏線を見つけた」だけで巻き戻すのはゲームブッカーの名折れだ。
地底湖までまき戻すと体力点的に微妙という、もっと生々しい問題もある。
どの道ここで調べる選択肢があるのだ……
さっそく拾いあげる。
硬貨はクリーム色の金属でできていて、魚の鱗のように薄かった。
浮き彫りになった図柄は、こみいった方程式を表している。
硬貨そのものよりこの数式に価値があるとカイの感覚が告げる。
さっそく正解を導くべく、コイン片手に計算を始めた。


 いきなり金属が燃えあがったとき、方程式を解くことに熱中していた君は、完全に解く寸前
まできていた。そのせいで反応が遅れ、すぐに燃えあがっている硬貨を放り投げるが、いまの
閃光によって手にひどい火傷を負ってしまう……体力点を 4 点 失う。


「うおッ熱いッ!!!」
『燃え上がったとき』まで読んであわててパラグラフを戻ろうと思ったが時すでに遅し。
調べないという選択は狼的にありえないため、前のパラグラフに指を挟む用心もしておらず、ばっちり4点のダメージを浴びた。
痛い。正直痛すぎる。せっかく15点まで回復した体力が一瞬でパァだ。
畜生何てこった・・・
マジで罵り声をあげるが、とりあえず「320」という方程式の解だけは入手できた。
本文の指示に従ってアクション・チャートの余白に書きとめ、先へ進む。
爬虫類の意地悪さに懲りていたため、油断なく武器を構えて階段を下りていく。この用心が役立った。
階段の一部が、丸々一段ばかり偽装されていたのだ。
本来あるべき階段のステップに、鉤針と棘で埋まった長方形の罠を設置し、薄い板を上にかぶせる。
何も知らず足を下ろせば……という寸法だ。
「うぶな事を…じゃなくて…やぼな事…は違う…うぐぐ…鯔な事でもなくて、鯖な事…をしやがって」
突っ込んでくれる国語教師不在のまま独りごちる。
階段は長く単調で明かりもない。おそらくそれを見越した罠なのだろう。
たやすく見破って飛び越え、ついに階下まで辿り着く。
正面にはドアがあり、少しだけ開いていた。



・鏡 を持っていれば、237へ。
・扉を押し開け、先に進むなら、324へ。
・爬虫類が罠を仕掛けている場合に備え、扉を開いてすぐ床に伏せるなら、46へ


「……?」
まず、見慣れぬ単語におどろき、首をひねった。
これでも入手アイテムには敏感な方だが、前回も今回も、なんてアイテムはなかったはずだ。
まぁそれはいいとして……
ここは、むしろ優しいのだろうな。
階段の罠の直後に「罠を仕掛けている場合に備え」という記述。
これがさらに裏の裏で、伏せたほうが不利になる展開も……英国人ならありうるのかもしれないけど。
でも普通はないと感じる。これは優しい導きの手と理解すべきだ。


賢明な判断が命を救った。


うん。
……本文で祝福されると気分が良い。
それはともかく。
扉の向こうは長い廊下で、その突き当たりに2人の爬虫類人が腰だめの姿勢で待機していた。
一目でヤバイと感じる、バズーカライクの物騒な破壊兵器を二人がかりで構えている。
照準は……この扉だ。
爆裂音を轟かせ、伏せた頭上の空間を、炎上するエネルギーの稲妻が貫通した。
エネルギーの余波で髪が逆立ち、木っ端微塵に消滅した扉を目にして恐怖と、激怒が突き上げてくる。
「そうか……つまり、テメーらは『敵』って訳だ。ありがとうよ」
爬虫類人は必死に何か叫んでいた。
もう一人はショックのあまり長い顎をだらんと垂らして硬直している。
命乞いか、弁解か、呪詛か……
「いずれにしたってもうどうでもいいなッ!俺はもうテメーらを『ブッ殺した』んだから」
俺たち『野獣の世界』では、それがルールなんだぜ……
存分に敵の血を飲み干したバシュナのナイフ を鞘に収める。



クロカリクス  戦闘力点12  体力点38


この生き物に念撃は通用しない(念波動は通用する)。
すばやく攻撃したため、2回戦まで君は体力を失わずにすむ。


戦闘比+11。久しぶりに、圧倒的優位を誇る蹂躙戦だった。
最初の2回戦は「5」なんてショボイ数字だったが無傷のまま、3ターン目でクリティカルの「0」。
次弾を装填される前に爬虫類共を膾のごとく切り刻み、一滴の血も浴びずに炎上する通路を駆け抜けた。
さらに通路を進み、弧を描くアラバスターの階段を下って堂々たる議場に出る。
ひりひりと首筋の皮膚が痺れていた。
広い部屋は閑散としているが、爬虫類人―― クロカリクス―― たちの無数の気配を感じるのだ。
どうやらここが正念場らしい。
油断のかけらもなく、ゆっくりと俺は議場の中央目指し歩きはじめた。



通過パラグラフ:(33)→283→130→46(戦闘)→241  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:13点
(つづく)