ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

 爬虫類人たちが革の卵を抱えている

【パラグラフ87→→→パラグラフ33:竜の末裔たち:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



……あのサイ・グールが、マガーナの亡き息子エイベクの成れの果てなのか。
だとしたら、なぜ彼は人肉喰らいに変じたのか。
そうとは限らないと思いなおす。
エイベクはあのグールに襲われ、荷物を奪われてしまったのだろう。そう考えるほうがよほど合理的だ。
悪寒は消えず、不気味な仮定が頭から離れない。
いずれにせよ不死者の残骸は黙して語らず、問おうにもマガーナはここにいない。
ただ俺の手に、不死者の嵌めていた精神の指輪 だけが気味の悪い煌きを放っているのは事実だった。
信じがたいほどの輝きは年代物とは思えず、銀に似た金属の台座に深い黄色の宝石が填まっている。
これほどの特別な品物を逃がすのは狼としてはありえない……
まあ、一晩寝たら指輪の魔力でグールにクラスチェンジ、などというホラー展開が生じないことを願うばかりだ。
どっちみちもう人間離れしているのは同じ事ではあるが。
暗闇の中、乾いた苦笑を漏らし、通りを急いだ。


昼もなく夜もない、薄明の世界をひたすら歩きつづける。
戦士の体内時計にしたがって2度眠り、2度食事をした。といっても俺は食糧など持っていない。
石柱をつたう水滴を飲み、地衣類を引き剥がして喰らう。
不毛の地でも生き延びる上級狩猟術の力で、生存の確率を極限まで引き上げているのだ。
しだいに都市の中枢に近づきつつあることを知る。
すなわちロアストーンが近づきつつあるのだ。
そう悟り、足を速める俺の前に、巨大な列柱の並ぶ回廊が姿を現した。
巨大な建造物の一部をなす、時の損傷を受けていない滑らかなアーチから奥へ進み、広大な柱廊を見いだす。
重厚な造りのアーチの幾つ目かを潜り抜けた俺は足を止めた。
初めて、亡者以外の知性ある存在を目撃し、柱の影に身を寄せる。
通路の奥、一団の爬虫類めいた生き物が車座になってやり取りしていた。
輪の中央には大きく革っぽい質感でできた滑らかな卵があり、水掻きのある前肢でこれを叩いている。
シューシューという低音からなる言語はカイ・マスターにさえ理解できるものではなく、敵か味方かも不明だ。



・ホールに並ぶ柱にまぎれてこれらの生きものに接近するなら、56へ。
・生き物に向かって大声で呼びかけるなら、349へ。
・弓を持っていて使うつもりなら、171へ。


「いや、使わないから」
最後の選択肢に突っ込んでおく。
さすがの好戦的な俺も、攻撃されないうちから未知の生物を射殺したりはしないのだ。
ていうかですね……
ぶっちゃけイラストが可愛いのだ。
やけに愛嬌がある顔つきじゃございませんか。開いたお口がなんともチャーミング。
さっきのグールとは大違いなのである。
「オイィィよく見ろよ?敵じゃあねーんだぜ?」っていう創造神の無言のサインだと受け取ったがどうか。




どうか、などと問いかけたところで返事もなく、取り敢えず忍び寄ることにする。
……これが、大失敗であった。
よりによって「隠蔽術+プリンシパリンに達していれば」の選択肢。
教えの向上を紐解く限り、この隠蔽術は『自分の立てる一切の音をかき消す』能力らしい。
つまりそれほどの技量がないと駄目だって話だ。
静かに進んでいるつもりでも、粒子の細かい砂が降り積もった黒石のタイルが思い切り音を立てやがる。
5歩も進まずに見つかった。


君の立てた音を聞きつけ、爬虫類は怯えた目つきで、じっと君に視線を注いだ。


「やあ、俺だ。ローン・ウルフ。お前らの愉快な霊的指導者さ……」
狼というより鼠を思わせる甲高い裏声で愛嬌たっぷりに呼びかける。
さらにオーバーアクション気味に両手を広げ、武器を持っていないことを示す。
無論応答なし。どころか聞き手も存在せず。
声を出した2秒後には、大きな卵を後生大事に抱えこんで通路から全員が遁走していた。
畜生。
たまーにフレンドリーに応じてやりゃあこうだよ。全員射殺しちゃえばよかったか?
どのみちこのまま逃がすのは得策でないと判断し、即座に走って追う。
だが、あっという間に彼らは階段下へ逃げこみ、一匹残らず暗がりに姿を消してしまった。
カルトの火の玉 をパカッと割って、不滅の炎で足下を照らしだす。
駆け下りようとした俺を押しとどめたのは、この奇妙な選択肢だった。


明かりが命の輝きを放つと、階段の段の上にある物体に気がついた。
それは慌てて逃げだした爬虫類のうち一匹が落としたもので、数字の図柄が彫られた六角形の
金属の欠片だ。


・以前こうした六角形の硬貨の1枚を見つけ、調べたことがあれば、161へ。
・調べたことがなければ、この金属のかけらを見てみるか。283へ。
・金属の欠片はそのままにして階段を下るか。130へ。



通過パラグラフ:(87)→11→56→349→33  治癒術の効果:+4点   現在の体力点:14点
(つづく)