ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ97→→→パラグラフ175:地底湖の激闘:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



止めの一撃を叩き込み、グールを湖まで吹き飛ばす。
同族の血臭に惹かれたのか、見る間に無数の不死者たちが湖岸に群れを成して忍び寄ってきた。
呪詛を吐き、あるいは飢餓に堪えかねて啜り泣く。
怨嗟の声はいつしか膨れあがり、血も凍るような重奏となって地底湖にこだました。
1が2に、2が4に、10に、50に……
まるで、地底の霊気が凝ったとでもいうのか。
重なり合い交わりあい、列を成して隊伍を組んで、亡者たちが枯れ木の腕を振りかざす。
新鮮な肉―― この俺のことだ!―― を貪り、脈打つ心臓から生き血を啜ろうと、グールたちは萎びた四肢で跳ねるように迫り来るのだ。
彼らの咆哮は、根源的な感情……すなわち『喰い殺されることへの恐怖』を呼び起こす。
戦士の修練を持って感情を切り捨て、俺は動いた。
素早くデュアドンの銀の弓を肩から下ろし、先頭のグールを狙い撃つ。
不浄な心臓を矢が射抜くと亡者は喚き、ひょろ長い腕を振り回して地面を叩きながら事切れた。
他の亡者たちの足が止まり、殺害された仲間に視線が集中する。
カイ・マスターの眼力は、不死者たちの黒く濁った目が恐怖に揺らぐのを見逃さなかった。



・階段を登って彼らを避けようと試みるなら、104へ。
・窪みを襲撃された場合にそなえ、武器を抜くなら、71へ。


躊躇わず、狼の速度で窪みを飛びだす。腐り果てた人肉喰らい共につきあってやる義理などない。
くるりと身を翻し、巨石の階段を一気に駆け上ろうとして顔をあげる。
鉄塊のごとき重量が頭上から降ってきた。
勢いに押し拉がれ、地響きをあげてうつ伏せに倒れふす。
辛うじて体勢を入れ替えた首に鉄の箍が絡みついた。
万力のような握力が俺の喉を締めあげ、ガチガチと歯を噛み鳴らす音が意識のすべてを奪う。
忍び寄る無数の足音が更に速まり、冷や汗がにじんだ。
退化した脳味噌なりに頭を働かせ、一匹が俺の頭上で待ち伏せしていたらしい。
このままでは、飢えきった不死者たちにたかられ、貪り食われてしまう。
汚らわしい亡者どもの贄にされてたまるか!



グール  戦闘力点18  体力点29
上級狩猟術もしくは予知を身につけていなければ、戦いの間、戦闘力点は3点低くなる。


続けざまの不意打ちに加え、「3回戦のうちに殺せなければ」の限定つきだ。
格下とはいえ、いささか緊張が走る。
どういう訳か、戦闘となると悪運がまとわりつくようだった。
洞窟を下ってくるときには容易く高い目が出たというのに、ここでも3ターン目、最悪の「1」を出してしまう。
3回戦でグールに叩きこんだトータルダメージは戦闘比は+7ゆえ、30点。
……上級狩猟術を身につけていたことで命拾いしたようだった。
それでも6点のダメージに苛立ち歯噛みする。


とはいえ、グールも超人たるカイ・マスターの技量と強さを思い知って恐慌に陥ったようだった。
ひそひそと囁き交わし、次第に敵の姿が闇に溶けていく。
窪みから踏みだすと死体のわきに奇妙な硬貨が落ちていたが、最前の今で罠の可能性を思い、ここはスルーした。
金貨なら幾らでも拾うが、換金の可能性の低い硬貨など欲しいとも思わない。


巨石の階段群をじりじりと頂上めざし登っていく。
はじめ思っていた以上に、この道行きは過酷なものだった。
階段の一段一段は若木の潅木ほどの高さがあり、よじ登ろうにも黒い石は滑らかで一切手がかりかがないのだ。
あらゆる技術を駆使して聳えたつ石の城壁を乗り越えていく。
階段の頂上まで、数時間があっという間に過ぎさった。
ようやくのことで最後の壇を這い登り、輝く鉱石でできた壮大なアーチに寄りかかり、吐息をもらして眼下を見下ろす。
グールの彷徨う地底湖の反対側……
このアーチ門の先に、遥か下まで開けた荘厳な都市が広がっていた。


善なる竜ナイゼーターの生みだした最古の都市――
ザーリクスの遺跡に、辿り着いたのだ。


通過パラグラフ:(97 戦闘)→338→22→104(戦闘)→175  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:16点
(つづく)