ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ137→→→パラグラフ90:アナリウム包囲網:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



アナーリ共和国すべてが敵に回った今、おめおめと言いなりになるつもりなどなかった。
瞬時にバシュナのナイフ を鞘ばしらせ、蒼い怨嗟の炎を刀身に纏わせる。
あわよくば北方人を捕らえ褒賞にでもあずかろうと思っていた市民たちは、この超常の武器に怯んだ。
ただ一度、床を蹴って人波を飛び越え、背後の回廊に着地する。
無人の階段目指して全力で走りだすが、右手から脱出を阻もうと警備兵が走ってきた。
武装していない代わり、兵は巨大な投網を手にしている。
一瞬、ダナーグで捕らえられたのペイドの姿が頭をよぎった。
舐めてはいけない。投網はときに強力無比な武装になりうるのだ。



「乱数表」を指せ。
上級狩猟術を身につけていれば、その数に1を加えよ。
火の伝授のサークルを修めていれば、その数に2を加えよ。


3以下なら、182へ。
4以上なら、236へ。


更にこの選択肢は、極端に目が低いゆえに決して仕損じてはならなかった。
・・・だが、文字通りの死の罠を幾つもくぐりぬけてきた俺にとって、この程度、窮地ですらない。
無心で乱数表を指す。結果は「5」。
そこに上級狩猟術を加えて6……奴らの包囲を喰い破るには十分すぎた。
大きく跳躍すると見せかけ、最後の瞬間、逆に身を伏せる。
敵はやすやすと騙され、網は遥か頭上を飛び去って無辜の市民を捕縛することに成功した。
呆然とする追っ手との距離を広げ、階段を疾駆する。
下では3人の兵士が棍棒を手にして待っていたが、一段目の罠をかわす狼の技量に冷汗を流していた。
「今だ!かかれ!」
勇を奮って叫び、3人の儀仗兵が踏みこんで同時に棍棒を振り下ろす。
俺は攻撃に逆らわなかった。
ナイフを持った腕をだらりと下げたまま足を緩め、風に煽られる羽毛のように兵士たちの間へ体を流す。
元より競り合うための手数など必要ない。
バシュナのナイフ を鞘におさめて走り出したとき、聴衆の悲鳴と兵士の苦悶がこだました――
斬り飛ばされた3つの耳が議場の床に落ち、腐臭を放つドス黒い血を滴らせたのだ。



カイ・マスターの技量と非情を目の当たりにして、アナリウムは未曾有の大混乱に陥った。
巻き添えを恐れた人々が氾濫した濁流となり、追撃の手を阻む。
これを奇貨として一気に跳躍し、踊り場を乗りこえ階下に着地した。出口の方向は覚えている。
たやすく突破した僥倖とは裏腹に、絶望に近しい密度を持って不安の黒雲が心を覆いだしていた。
アナリウムでの否決された場合にどうなるか、賢人の言葉を思いだす。


――『るつぼ』の封印は解かれず、未来永劫、ローン・ウルフがザーリクスへ辿りつくことはない――


魔術師チバン、そして賢者グウィニアン。
歴史を学び、叡智を宿した2人の言葉が、俺を懊悩で責め苛んでいた。
仮にアナリウムを逃れたところで、どうしようというのか。
古代都市ザーリクスへ侵入する唯一の手段を……
ロアストーンへの唯一の道を、己が手で閉ざしてしまったのだ。
ゲームブッカーとしての先読みをもってなお、今後の展開は予想だにしえなかった。
『るつぼ』侵入には大規模な設備が必要なのだ。
重機……吊り篭……そしてアナリウムの地下金庫に360年保管されたコーリニウムの杖。
考えれば考えるほど分からない。
どうやってこれを取り戻しうるというのか。
アナリウムに侵入し、盗み出せとでも言うのか。
分からない。
分からないのだ。


もはや、探索を成就させる望みは失われたのか・・・・・・?


通過パラグラフ:(137)→236→90 治癒術の効果:+2点   現在の体力点:26点
(つづく)