ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

裁判長の顔を見て驚く

【パラグラフ142→→→パラグラフ76:賢者との再会:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「貴様も終わりだ北方人。判事長はタホウの兵士を殺したならず者を許しはしない」
「……!!」
ねっとりと嫌みたらしい口調で軍曹が囁きかける。
覚悟しつつ、せめて申し開きをしようと試みかけ、俺は意外な光景を目にした。



・以前、「襲撃者の道」ぞいの小屋、あるいはバレッタを訪れたことがあれば294へ。
・どちらの場所も訪れたことがなければ、54へ。


脳裏に閃くものがあった。
この選択肢……
ルアノン街道にあった襲撃者の小屋、そしてバレッタ天文台
この2つをつなぐ要素はただ一つしかない。
期待に胸を膨らませ、顔を上げて判事長の椅子に座る者の姿を確かめる。
「……賢者グウィニアン。まさか、あなただったとは」
「然り。三度、星たちが我々を結びつけたのじゃ」
カイ・マスターが無条件で敬意を表する相手は、ソマーランド国王を含め、僅か数名しかいない。
その中の一人が、柔らかな面立ちに微笑の皺をのぞかせていた。
「我々を引き合わせたのは運命の導きなのじゃよ」
かつて運命の峡谷で待ち受ける脅威を知らせ、バレッタではロアストーン探索を助けてくれた賢人……グウィニアンその人だ。
バレッタの星見の賢人がなぜアナーリ共和国の中枢にいるのだろう。
様々な疑問が渦巻くが、グウィニアンの笑みで疑問も不安もすべて取り除かれた。
待ちかねたように居丈高に軍曹が立ちあがる。
傲慢な態度のまま訴状の内容を読み上げていくが、途中で、グウィニアンがそれを断ち切った。
「残念じゃよ軍曹。お主は、この者が誰か分からなかったらしいの」
長く、気まずい沈黙が続き、グウィニアンの目が軍曹を見つめていた。
いまや自信のゆらぎだした軍曹は真っ赤になり、顔中を汗だらけにしながらようやく返答する。
「その……はい、知りません」
「この者は、ソマーランド最後のカイ戦士、ローン・ウルフじゃ。そなたも、彼の名を耳にしたことがあるだろう」
「はい」
軍曹の声は、主から自害を命じられた家臣のように、ひび割れ、かすれていた。
ベルの音が閉廷を告げ、厳かに判事長グウィニアンが言い渡す。
「ローン・ウルフの財産を直ちに返却するように。そして、この者に対するすべての訴状を却下する」



「いや、助かったよグウィニアン」
半刻ほど後、没収された装備全てを返却された俺は、判事長の私室でワインを啜っていた。
不吉なバシュナのナイフ に異常がないか念入りに調べ、安心してしまいこむ。
「古マギから伝言を受けておったのじゃよ、ローン・ウルフ」
「成程……だから手回しがいいのか。しかしなぜタホウで裁判官なんかやっているんだ?」
問いかけて、はっと目を見張る。
日ごろ穏やかなグウィニアンが常になく顔を曇らせたのだ。苦悩のしわを額に刻み、ややあって口を開く。
「お主と同じじゃ」
「……俺と?」
バレッタの学び舎はいまや存在しない。ダークロードの手先に火をかけられ、徹底的に破壊された」
「何だと!それはつまり……」
「お主と同じく、儂が最後の―― たった一人の生き残りなのじゃ」
では、他の星見の賢人たちは……悪の手先に虐殺されたというのか。
バレッタ天文台で危険を犯し俺を援助してくれた人々のことを思いだし、奥歯を噛む。
どうやら、また一つ、復讐の動機が生まれたようだった。
邪悪の力を許すまいと誓いを新たにする。
「古マギたちは、お主にできる限りの保護を与え、タホウのロアストーン 探索を助けて欲しいと頼んできておる」
「そうか。チバンといい、グウィニアンといい、リモア卿は先読みが深いな……」
口にして何かを忘れていたと気づく。


えーと……
あー。
うーんと、何だっけ。
出てこねーな……


「思い出せないなら、どうでもいいってことだよな。すまん、何でもなかった」
「……バネドンのことかの?」
「それだ!」
「友達甲斐のない奴じゃのう、ローン・ウルフ。バネドンは3時間前に裁判所に連行されてきたぞ。儂が釈放した」
今頃はチバン師のもとにいるだろうと教えてくれる。
ふむ。どうやら安心らしい。
逮捕されてからの一連のトラブルは、どうにか解消したようだ。
「ところで、なぜ裁判所にいたんだ? こんなとこで仕事してたんじゃ俺に会えるかどうか分からないだろうに」
「そこはそれ。見知らぬ街に来てトラブルを起こさぬはずがないからな、お主の性格から言っても」
「・・・・・・」
「なに、冗談じゃ。星たちが儂に教えてくれたのじゃよ」
いかにもな発言をして取り繕う老賢人。
しかしよく考えてみれば、一度目のタホウ探索では俺はグウィニアンに出会っていないのだった。
……意外と、いい加減かもしれないな。星見の予知も。
「さて」
グウィニアンの声音が変わった。
「一件落着したところで、タホウのロアストーン 探索に赴かねばな」



通過パラグラフ:(142)→294→54→76→  治癒術の効果:+3点   現在の体力点:21点
(つづく)