ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

泣いたり笑ったりできなくしてやる

【パラグラフ66→→→パラグラフ109:狼罠の都:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



ナップザックの薬を気にかけながら、夜のタホウ平原を城塞都市目指し進んでいく。
ハッパの消耗は惜しくはなかった。
結局のところ、使わずして何が宝か。戦時に備えての蓄えなのだ。
問題は、酷く回復の遅い体力との兼ね合いだった。
マグナカイの治癒術は「パラグラフを1つ」進むごとに1点しか体力回復しない。
現状、狼は体力点2点。
地面に転んだだけで、あるいは突き飛ばされて馬車にぶつかっただけで、あるいはスカイライダーの網に絡めとられただけで……
ポキャリと頚骨をイワせてしまうほどの虚弱ぶりなのだ。
といって、トラブルの発生する前から最後のラウンスパーをキメてしまっては、無駄使いに終わるかもしれない。
こればかりはバネドンにもどうしようもなかった。
馬の上で揺られながら、じわじわと進行を待ちわびていく。
やがて、夜のタホウ市が街道の先に見えてきた―― 城門に辿り着く時点で体力は4点だ。
黒々とした濠にかかる跳ね橋を渡り、巨大な落とし格子の脇の通用門をくぐる。
中庭には例によって弩弓を装備した一隊がひしめき、俺たちを頭上から狙っていた。
何とも落ち着かないまま、誰何する2名の警備兵に用向きを伝えようとして……



・招待状 を持っていて、それを見せようと思うなら、321へ。
・タホウ市を守るためにやって来たのだと警備兵に話すなら、196へ。
・タホウの『るつぼ』に入るつもりだと告げるなら、60へ。


・・・絶句する。
これ……どう見ても……罠じゃねーかドチクショー!!
招待状 がない方が良いなんて言ったのはどこのどいつだ!!
危うくキレかけるが、真の問題はそこではない。
むしろ、一見何気ないこの選択肢は、先刻にも劣らぬほどの絶体絶命を招く可能性を秘めているのだ。
『るつぼ』がタブー視されているという話は前回聞いていた。
考えてみれば、これはストーンランドの時と一緒で、その話題に触れること自体がジ・ダウトなのだ。
となれば、この弓兵たちをどうにかかわすには愛国者のふりをするしかないのだが……
気になっているのは、俺たちは見るからに北方人、つまり余所者だってことだ。
まあ、どの道ここは一択しかない。
「見れば分かるだろう。俺は戦士で、連れは魔術師だ。タホウを守る戦いに力を貸したいんだよ」
「……そこで大人しくしていろ」
あーあ。
案の定、見るからに疑わしげな眼で警備兵が俺の発言を一蹴。
すぐに詰所の指揮官―― 前も出会った、あの妙に馴れ馴れしい指揮官だ―― がやってきた。
徹夜で寝不足らしい。どうにも不機嫌そうな顔は、以前と違って俺を不安に陥れる。
ねっとりと皮肉めいた調子で指揮官は口を開いた。
「貴方がたはタホウ市のために戦いたいそうですね?」
「その通りだ」
「で、貴方がたが敵の間諜ではないという証拠はどこにあるのですかな?」
次の瞬間……
俺は、完全に絶句した。




・隠蔽術を身につけていれば、42へ。
・隠蔽術を身につけていなければ、109へ。



「いいいッヒ……隠蔽術が役に立ってるゥゥゥ!!!」
「何だと?もう一度言って貰えるかね」
「いや……」
叫んだ俺をますます不審そうに見つめる指揮官。


都合4巻分マグナカイを遊んできて、初めてではなかろうか?
本来の意味で隠蔽術が役立っているのだ。
狼の中の人が初めてローン・ウルフを遊んだ時分は、知らない都市に行っても隠蔽術さえあれば完璧だと思ってたよ……
こんな風に街に融け込んでさ。
ストーンランドとかじゃあ必須の教えだと思っていたっけね……


現実逃避してどうにかやり過ごそうとする俺の横で、空気を変えようとバネドンが慌てている。
「待って下さい軍曹殿ッ!私たちは2人とも魔術師チバンの弟子なんですゥ!」
「……」
「チバン師は北地区のリーチ通りにあるギルドハウスで生活していますッ!師が私たちの保証人に……」
「話しかけられたとき以外は口を開くな!口でクソたれる前と後に“サー”と言え!分かったかウジ虫ども!!!」
「サー、イエッサー!!」
不意にキャラの変わった指揮官の前で、バネドンはビビって直立不動になってしまった。
口の端を歪に吊り上げ、俺の方へとド迫力軍曹フェイスが近づいてくる。
「これから命を落とすであろうこの都市について、貴方自身がどれだけ知っているのやら、一つ教えて頂きましょうか」
今にも汗を舐めて『嘘の味だぜ』と勝ち誇りそうな表情を浮かべ、指揮官が俺をねめつける。
「『るつぼ』は、タホウの何処にあるのかね?」

 
 タホウ市が方角にちなんで4つの地区に分かれているのは知っていた。 
 だが、『るつぼ』がどの地区なのか思いだす事ができない。 
 


内心ニヤリとした。
甘いな、俺はすでに知っている。実際に『るつぼ』へ潜ったのだからな。
チバンはドラゴン・スクエアにあると言っていた。
そう答えようと口を開き――



・「北地区」と答えるなら、26へ。
・「南地区」と答えるなら、65へ。
・「西地区」と答えるなら、255へ。
・「東地区」と答えるなら、178へ。
・まったく答えないつもりなら、333へ。




「罠だらけですかよ」
ゲームブック世界とはかくも過酷なものだった。
既に一度プレイして何もかも知っているにも関わらず、それらについて語ることは許されない。
そして、答えようのない質問をぶつけられ、理不尽な選択を迫られるのだ。
今まさにそんな感じの地獄であった。
「方角」だと?
そんな話あったっけか……?
思いだせない。チバンの家が北地区なのは知っているが……ってさっきバネドンも言ってたな畜生。
ソーサリーあたりの名作ゲームブックでの経験則から言えば、往々にして「答えない」が正解なのだが。
だが、ここではそれこそが罠であるという気もする。
取り敢えず分かり易く北じゃねーだろう。
そう見当をつけて、賭けに出ることにした。


「南地区だ」



通過パラグラフ:(66)→293→100→196→109 治癒術の効果:+4点   現在の体力点:6点

(つづく)