ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ156→→→パラグラフ314:狼眼流罠封じ:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



明朝も探索の旅は続く。
街道をひた走り、昼頃には「ブラック・ザカーンの伝説」が残るフェアの村を通り抜け、そこで例の砂塵を目撃する。
またしても「教えの向上」を用いてそれが迫りくるアナーリ騎兵だと気づく。
まあ何てことのない前回の焼き直しだ。
余裕こいて街道のど真ん中で兵士たちを待ち受けようと――



いや、待て。
選択肢を選ぼうとした刹那、何か違和感が引っかかった。今回は前と同じように行かない・・・
「……招待状 か」
愕然として思い出す。
前のときも、騎兵隊はダークロードに怯えきり、疑心暗鬼だった。
その誤解を解いたアイテム、チバンの妻ローザによる招待状 を、今回は手に入れてないのだ。
「隠れるぞバネドン」
「へ?何故ゆえにィ〜?」
不審そうなバネドンを黙らせて、急ぎ周囲を見渡す。
幸い、ここは街道沿いに石柱が林立している。
大抵は馬を隠せるほどではないが、一箇所だけ、石柱が密集し陰になった隠れ場所を見出す。
速やかに馬を乗り入れ、次第に街道の起伏を近づいてくる馬蹄の轟きを待ち受ける――

 
 その時突然、君の馬の足元に蛇が現れ、前脚のまわりをずるずるすべりだした。馬 
は驚き、後脚で棒立ちになってしまう。 
 


「な、何だってェェェ!!」
場所もわきまえず叫びかけ、慌てて声を飲みこんだ。
流石だ・・・
ロアストーン探索も伊達に4巻目まで突入しちゃあいない。
まさか、「教えを使ったことで更に不利になる」展開が組み込まれていたとは!!
このシーンの巧妙さに思わず呻く。
ここでは「上級狩猟術を持って」おり、かつ「プリンシパリンに到達」していなければ、蛇に遭遇しないのだ。
いわば、『過去のマグナカイを全巻制覇した古参兵』 だけを狙い撃つ二段構えのトラップ。
運命の神の悪戯により、バネドンの馬が棹立ちになり、騎兵隊の注意を引こうと暴れだす。
しかし――
この狼はその罠の更に上を征く!
既にカイ・マスターのトラップ封じは『発動』しているんだぜっ!



・動物コントロールを身につけていれば、167へ。
・動物コントロールを身につけていなければ、290へ。


鍛え抜かれたマグナカイの修練が俺とバネドンを救った。
手綱を横からひったくり、同時に動物語を使って馬の精神に働きかけ、悍馬を御する。
更に足元の蛇が無害なサバンナヘビだということも見抜き、さっさと藪に追い払う。
早急な対処により、何も知らずに騎兵隊は街道を走り抜けていった。
「冷や汗をかいたよ……見事なものだ、ローン・ウルフ」
「若先生と呼べ」
再び街道を北へ急ぐ。
教えから教えへの連携はスムーズに噛み合った。
非戦闘系の能力を存分に使いこなし、探索の旅を確実に踏破していくのがカイ・マスターだ。
戦闘に勝ってただの門人、戦闘を回避して中目録、そもそも戦闘イベントを起こさせないのが師範代なのだ。
「とっとと(騎兵隊は)シェアの村を出て行くべきであったな」
ふてぶてしく呟いて街道を疾駆する。
休みを取らず馬を進めてタホウ丘陵まで辿り着き、そこで奇妙なパラグラフに出くわした。



・方向認知術を身につけていて、チュータリーの階級に達していれば160へ。
・方向認知術を身につけていないか、チュータリーに達していなければ314へ。




そして恐るべき事実。
「これは選択肢にあらず……ッッ!」
方向認知術を身につけていない今、ここは事実上の一本道。そもそも俺に選択の余地などない。
しかも今度は正真正銘の罠だった。これは待ち伏せのサインなのだ。
「えーと、若先生?こんな時はどうするんだい?」
「嗤ってんじゃあねーぜッ!」
竹光噛ませて獄門に晒してやりたいところだが、そうしたところで打開策は無い。
タホウ丘陵の入り口、石の監視塔と周辺の一群の小屋は既に敵の支配下にあり……
俺はただ、遮二無二敵地の中央を突破するしかないのだった。
以前、騎兵隊の隊長が言っていたことを思いだす。



「既に敵の斥候が首都の南の丘で確認されているからだ。夕暮れまでに城壁に辿り着けなければ・・・」
軍曹は口を引き結び、人差し指で喉の下をさっと一閃させた。
【リプレイ464】 参照)


あの不吉な忠告が、実現のときを迎えようとしていた。
「仕方ねーな。強行突破するぜ、バネドン」
ここは腹をくくって突っ切るしかない。そう覚悟が決まればあとは容易かった。
待ち伏せの不安は、来るべき戦闘の高揚へと変じていく。
久々の狼の咆哮が大気を震わせる。
白いアナーリ馬に一鞭くれ、まっしぐらに隘路を突き進んだ。

(つづく)