ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ34→→→パラグラフ156:アナーリ流賭博術:(死亡・13)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



近づくと、彼らが謎かけをしていることに気づいた。
交互に謎を出題し、答えられない方が賭けの対象を没収される、ということらしい。
遠目からは物々交換に見えたのはこのせいだったのか。

 
 ここアナーリ共和国では、運によって勝ち負けの決まるゲームに金を賭けることは 
法で禁じられている。しかし狡猾なアナーリ人は巧みな手で法律の目をかいくぐって 
いた。 
 彼らは謎かけに答えられるかどうかを賭けの対象としていて、これは運より頭の回転を 
必要とするのだ。 
 賭けの対象は金の代わりとなる商品や、時には彼ら自身による奉仕そのものだ。 
 


「けっ。金じゃないのかよ」
「何と。彼ら自身による奉仕……だって?」
俺とバネドンの目の付け所は違っていた。
ところで地元の百姓連中の頑強かつ毛深い風体は、どこか熊を思わせる。


ゴ キ ュ ウ リ……


心ここにあらずといった表情で、バネドンが生唾を飲んだ。
今のは、宇宙的恐怖みたいな何かに震え上がったからだと思いたい。そういうことにしておく。
謎かけといえば聞こえはいい。
が、要するに、ここでの報酬は金じゃあないってことだ。
金貨もルーン銀貨も入手できないと知り、少々やる気を殺がれつつも、覗いたついでに参戦だ。
クマーと名乗る男―― ボロ勝ちしてた父親だ―― が今は胴元らしい。
レートは、男の戦利品2つに対して、特別な品物 1つか、ナップザックに入れるもの 3つ。
出題された謎に正しく答えれば、どれか2つの品物を頂戴できるのだ。
「で、貴方は、何を賭けるのかな?」
「そうだな」
銀の燭台 を出しかけたが、よく考えたらさっきの今で出すのは拙い。
シダラの避難民がそこらにいないとも限らないしな。
なので、手持ちを調べ、実に都合のよい、価値はあるが役には立たない特別な品物を取りだす。
―― 極北の大城塞で奪取し、金貨数千枚と値踏みした(そしてそれきり売却の機会のない)ダイアモンド だ。
「こいつを賭けよう」
「グッド」
宣言すると、眩い宝石の輝きに水呑み百姓たちは息を飲み、クマーも目をぎらつかせたようだった。
一本のナイフを腰から取りだして机に置き、息子の肩に手をかける。
「このナイフの使用年数は、ナイフを作ったときの息子ローエンの年齢の半分に等しい。ローエンは現在15歳だ。さて、このナイフの使用年数は何年だろうか」
おお。
珍しく、意外と面倒な謎かけだった。
とは言え、その辺の百姓ではダメだろうな、こういうのは。
X=1/2Y、X+Y=15、よってX=5.
「5年だ」
「ぬふゥゥゥゥゥ」
正解を口にすると、クマーは世紀末覇者みたいな唸りを口から漏らした。実に悔しそうだ。
そして賛辞も拍手も起こらない。
まあそうか。農民どもの溜めこんだアイテムを、通りすがりの旅人がかっ攫っちまった訳だからな。
「そらよ。あんたの戦利品を見せてもらうぜ、クマー」
「ぬふゥゥゥゥゥ」

 
銀のボウル  砂金入りの小瓶  祭壇の掛け布  表彰状  ジャディンのアンクレット 
 


毛布 がない……
そのことにまず何より安堵した。繰り返しギャグはリプレイの中だけで十分だ。
そして次にツッコミ。
「何だよジャディンのアンクレットって」
作者が英国人であることを加味すればこれは靴下ではなくアンクレットで良いのだろうが、人名入りだ。
大方「ジャディン」とか名前が彫ってあるに違いない。そら使い道ないわな。
とりあえず銀のボウル 砂金入りの小瓶 をキッチリバッチリ奪う。
代わりにナップザックから食料 と、あと悩んだ末に銀のゴブレット を捨てた。
不要だと分かっていても、奪える時は一切の容赦なく仮借なく奪う。狼の流儀だ。
けどまあ、砂金か。
旅先で換金できると・・・いいな・・・・・・
それが浅はかな願望に過ぎないと気づいているあたり、俺もいい加減、大英帝国流のシニカルな毒に塗れているのだった。
そして、いつの間にか賭けの席は解散。
数の勘定ができる敵手を見て、これは勝てんと思ったのだろう。
村人も、そしてクマーも、陰気な顔のまま自分の部屋に引っ込んでいく。
食い扶持を奪われて恨めしげな餓鬼2人に牙を剥き出して笑いかけ、豪勢な晩餐を堪能してから眠りについた。

(つづく)