ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

財宝が重すぎ、クラーンは飛び立てない

【パラグラフ318→→→パラグラフ229:ハイエナと狼:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



聞き覚えがある地名だと記憶を探り、すぐに思いだす。
『シダラは既にジャーク軍の手に落ちたという噂だ。近づかないほうがいい』
探索の旅の冒頭、ローザから教わった情報だ。
さて……
「おいおい、またか?」
「まだ何も言っていないぜ、バネドン」
聞かずとも分かると言いたげに首を振るバネドン。
まあそうかもしれない。
先刻の集落もそうだし、バサゴニアでもこんな展開があったからな。
君子危うきにまっしぐら。
それが狼の生き様なのだ。何故かって?
理由は簡単……大抵その方が儲かるからだ。
一度の探索でどれだけゼニコを積み上げ、どれだけハッパを蓄えるか。
これこそ狼の存在意義といって過言ではない。
最近では何故か誤解する輩が多いが、別にこの俺は善人でも何でもない。
剥げるときは剥ぐ。キメるときはキメる。それが狼のジャスティスなのだ。



という訳で、銭の匂いに惹かれてシダラへ直行する。
轍の残る小道は、川の畔にある小さな村へと続いていた。
それなりに賑やかだったらしい軒先も、今はただ人の気配だけが絶え、まるでゴーストタウンだ。
村人は慌てて逃げ出したらしい。遠くで、閉めそこなった鎧戸が風に煽られ悲鳴を上げている。
玉石が敷かれた通りを進んでいくうち、冷え冷えした予感が込み上げてきた。
河岸の波止場へと近づいたところで、新しい音を耳にし、バネドンとともに静かに馬を下りる。
久方振りの耳障りな金切声……ジャークの兵隊が、この先の広場にいるのだ。
怯えて硬直した馬をカイの教えの力で落ち着かせ、そっと角を覗き込む。
奴らはそこにいた。


ジャークの斥候隊が略奪品を広場の中央に掻き集め、黒い皮翼を畳んだクラーンに積みこんでいる。
とはいえ所詮は烏合の衆。
真面目に仕事してるのは二人だけで、残りのお仲間は手前のポケットに金品をねじ込んで祭りの真っ最中だ。
この衆愚を纏めようとして、鋸刃がついた黒い剣を振り回し、ジャークの指揮官が喚きたてる。


 貪欲な兵隊たちは命令に従うのを嫌うが……(中略)……
「レクナラ・クラズ!」
 指揮官が怒鳴り、部隊は村をあとにしてチューダス河の土手沿いを北へ進んでいく。


ジャーク軍の偵察部隊は間抜けにも村を出て行き、残されたのは略奪品の積み込みに追われる二匹のみ。
何という鴨葱。
ここでダークロードの尖兵を鏖殺、狼の殺戮衝動を満たしつつお宝も頂く。
お宝そのもの出自なんて知ったこっちゃない。
最後に手にした奴が所有者、それがマグナマンドの掟なのだ。
略奪の悦びに盲いた邪悪を正義の名の下に誅殺してくれるわ……!


 クラーンと2人の乗り手は飛びたったが、あまりにも略奪品を積みすぎたために、獣は屋根
まで浮きあがることも出来ない。死に物狂いで革のような翼を羽ばたかせたクラーンはふら
ふらしながらどうか7〜80センチ浮き上がった。
 突然、クラーンは前に蹌踉めき、放り出されたジャークたちは君の立っているところから1
メートルと離れていない玉石に頭から落ちてきた。


しかも、お誂え向きにジャークは自ら転がり込んできた……俺の射程距離内に。
これで据え膳を喰らうなって方が無理な話だ。
「オルガダガ!」
「おいおい、ただの人間じゃあないぜ……貴様らの天敵、カイ・マスターだ」
驚きふためいて叫ぶジャークたちに、犬歯を剥いて嗤いかける。
アナーリに入って初めての略奪の戦闘の予感に胸躍らせ、流れるような動きでデュアドンの銀の弓を構えた。
転んだ敵が身を起こすより早く、一射目がその心の臓を穿ち抜く。
黄色い喉を晒し、断末魔の喚きをあげて同僚が死ぬと、残ったジャークは半狂乱になって跳ねるように走りだした。
しまった……
戦いの流れが転じたのを知り、思わず舌打ちする。
ジャークは元来臆病な連中なのだ。
勝てないと知り、ジャークは命懸けの全力疾走で遠ざかっていく。もはや接近戦は不可能だ。
このまま逃せば、奴はジャーク軍の本隊を連れて戻ってくるだろう。
ここで射殺すしかないのだ。
矢筒から二矢目を抜き出したとき、ジャークは路地の影に飛び込んだ。
もはや目測では狙いようがない。
基本的なカイの感覚を頼りに上半身を捻転させた状態から矢を放つ。



「乱数表」を指せ。予知を身につけていれば、その数に3を加えよ。

・0から5なら、330へ。
・6以上なら、107へ。


ジャークにしてはそれなりに大した敏捷力と危機回避のいい勘を持っている。
しかし、奴の不運は相手がカイ・マスターだったこと。
銀の弓を引き絞り、狙い澄まして乱数表を指す。

(つづく)