ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ180→→→パラグラフ318:忌まわしき予言:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「どうだった、占いと予言は」
「まあまあだな。俺はその手のを信じる性分じゃあないんでね」
「戦士の言い草だな、ローン・ウルフ」
呪術師の家を辞した俺は、井戸のある広場に戻ってバネドンと合流し、集落を後にした。
狼を動揺させた予言の締め括りを思いだす。


「この先、お前に友として近づく者がいるだろう。これを信じてはならぬ。裏切りが彼の心臓に息づいている


ここまで告げた直後、呪術師は譫妄状態におちいり、会話どころではなくなったのだ。
いい具合に禍々しく、探索の先の暗雲を予感させる内容だった。
これはすなわち、タホウについてからは誰も信じてはならないということだろうか……?
盟友バネドンの顔を見やり、前傾姿勢で馬を駆っていく。
正午が近づき、カーキ色の大地を地平線まで伸びる幹線道路は、昇り坂となった先に建物の影を映しだす。
平屋の玄関には、一団の農場労働者たちが並んで立っていた。
三脚台からは使い古しのブリキ鍋が下げられ、なみなみとスープが湛えられている。
彼らの―― そして通りすがりの俺らにも―― 不幸は、この粥状の液体を沸騰させているのが赤々と燃えさかるゴーカスの乾燥した糞だということだった。
可哀想に、この悲惨かつ強烈なスメル燃料のせいで、スープはすっかり茶褐色に染まっているのだ。
農場のすぐ先で、街道から分かれた一本の小道が西へと消えていく。
捩られ、壊された木の標識は、この泥の小径を指していた。色褪せた文字はこう読める――



  タ ホ ウ 市 ―― こ こ か ら 1 5 2 キ ロ  .



・方向認知術を身につけているのなら、96へ。
・泥だらけの小径を辿っていきたいのなら、187へ。
・農場の労働者たちに質問をしたいのなら、252へ。
・幹線道路に沿って進むことに決めたなら、318へ。


方向認知術を身につけているおかげで、この標識が間違った方向を指しているとすぐわかった。
標識に従って泥の小道を進めば、西のチューダス河へ出てしまう。



・標識を無視し、幹線道路に沿って進みつづけるか。318へ。
・あるいは、農場労働者に質問してみるか。252へ。


……そして、方向認知術のせいで、小道へ向かう選択肢が消滅。
間違ったルートだからそうなるんだろうが、何故かフラグを潰されたようで妙に悔しい。
念のため労働者にも聞き込むが、彼らはただの無知な小作農だった。
アナーリ南部の農民の例にもれず、彼らも日々の糧にのみ熱心で、戦争が起きていることもダークロードの侵攻も知らない。
ここ10日ほどの間に、数知れぬ馬車が裕福な人々をのせてナバサリへ向かっていくのを見たきりだという。
・・・まあアレだ。
侵略されたら、真っ先にダークロードの奴隷にされるだろう。強くあって欲しいものだ。
「ローン・ウルフ!農場主から情報が得られたぞ」
「何か聞けたのか?」
平屋建ての建物に入っていったバネドンが、颯爽と帰ってきた。
「実は、そこの標識には数日前馬車が突っこんで、それ以来壊れっ放しなんだそうだ……って、どうしたんだ?」
「いーや……別に」
役立たねーとか全然思ってません。ええ。これっぽっちも。本当。本当。
素朴な農民たちに別れを告げ、先へ進むことに。
匂いたつ雑穀スープのブルシット風を目撃したからだろうか。空腹で、食事をしないと体力点を3点失うらしい。
いやむしろ食欲引っ込むんじゃね?とか思ったが、そこはそれ。
上級狩猟術をマスターしたカイ・マスターに空腹で減点などありえないので、大人対応で先へ進む。


概ね平穏で単調な、アナーリ平原の旅に転機が生じたのは、農場から8キロほど進んだ頃だった。
新たな分かれ道から細い轍の跡が西へ向かっている。
道の傍らには白く塗られた石の道標があり、こう書かれていた――



  シ ダ ラ ―― こ こ か ら 8 キ ロ  .
(つづく)