ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ274→→→パラグラフ163:街道を征く・アナーリ編:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



3時間ばかりは休息もとらず、馬で街道をひた走った。
既にダークロードはタホウ市まで2日の距離に迫っている。
包囲される前に到着しなければならない。
だが、街道の周囲は平和そのものだ。
すがすがしい風がアナーリ平原を吹き渡って頬を撫で、一面の草の海を気怠げにそよがせる。
村の数は少ないが、ところどころ木々の立ち並ぶ場所には必ずといっていいほど数軒の小屋が寄り添っていた。
じきに街道は下りはじめ、発育の悪い雑木林の一角を抜けていく。
ここにもまた集落があった。
井戸の周りに、簡素な小屋が円周を描いて並んだだけの侘しい村落だ。
近づいていくと鳴子のような鈴が鳴り、旅人の訪れを知って村人がわらわら出てきた。
いずれも籠一杯に様々な品々を詰め、しきりに買ってくれと訴えかける。
・・・ま、見るだけならロハだからな。
バネドンにも合図して馬の足を止め、売り物とやらを見てみることにする。


・・・大失態だった。


どうも「発育の悪い雑木林」は生活レベルの暗喩だったらしい。
本文をよく読めって話だった。
飢えた蝗の群れのような勢いで村人の数が膨れあがり、めいめいが籠を俺の前につきだす。
ぎっしりと籠に詰まっていたのは愛とか希望とかでもなく、貧困に喘ぐ村人の日々の糧だった。
不快な匂いのする団子状の粥という存在自体が矛盾に満ちたオブジェ。
更にサワーミルクじみた―― つまり発酵しきった―― 馥郁たるサムシングを漂わす淡黄色のワイン、ボザだ。
おお。
なんという異臭騒ぎ。
ぶっちゃけバサゴニアの悪名高い下水道、バガ・ダルーズでふやけた携帯食よりは幾分マシという程度だ。
ある意味眼が眩むほどのミラクルコラボレーションに、俺もバネドンも顔を背けるばかり。


 あまりに貧しすぎて売ることの出来るものを何一つ持たない村人は、
遂に丸めた手を差し伸べてお金を乞いはじめた。
 ここで、金貨一枚につき村人から2食分の食べ物 か、ボザの入った瓶1本 を買っても
よい。


・これらの乞食に幾ばくかの施しをするか。163へ。
・再び馬に乗り、旅を続けることにするか。52。


うォォォい!
もはや本文中でもただの乞食扱いかよッ!
「なあ、幾らか払う……か……」
「……」
日頃人には優しく花や小鳥を愛する男バネドンへ話を振ってみる…不自然に首を捩って聞こえない振りをしていた。
歳月が人を成長させたらしい。ベクトル的にはこの狼の方向に。
ともあれ。
施し扱いということは、それ相応の代物だって話だ。
まかり間違っても食糧にはならないだろう。
普通こんなところで金は出さない。



ただの冒険者ならば、な。
「ほらよ」
金貨1枚を放って、身近な村人からボザの入った瓶1本 を購入。
「お、おい……何をしているんだローン・ウルフ……」
「見えてないなバネドン」
ちちっと指を立てて左右に振ってやる。
ただの乞食なら、あるいは食料を売るだけなら、購入時のパラグラフを割く必要が無いだろう。
これは「買ったときに限って何かある」という話なのだ。
金貨1枚でエクストライベントが発生するなら、ねえ。
やらない方がおかしいってもんだ。
早速パラグラフ163へ飛ぶ。


予想通り、そこには素敵展開が待ち構えていた。
・・・些か斜め上に向かって。

(つづく)