ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ126→→→パラグラフ274:再会の激情・恩師の妻は白昼に:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。



「ムゥーン」
どうにも不穏な状況だ。武器に手こそ掛けないが、即応できるよう身構える。
と、その時、一人の老婦人が馬車から顔を出した。
馬車が止まっているのに気づいたのだろう。こちらに顔を向け、すぐに目を輝かす。
「バネドン!バネドンじゃあないの!」
「ローザ殿ではありませんか。星に誓って、このような処でお会いできるとは」
バネドンの顔が綻び、手を振る彼女の下へ向かう。
士官は以前として渋い顔だったが、警戒だけは解けたようだった。
部下に馬車を進めるよう命じる。
「再会を喜びあうのは無事ナバサリに着いてからにして貰おう」
素っ気なく言い捨てて戻っていく士官から目を戻し、バネドンが俺に説明した。
「ローザ殿はタホウでも名高い魔術師チバン師の奥方なんだ。タホウで魔術の研鑽に明け暮れていた時に指導して頂いたのがチバン師でね」
「そうか……正直助かった。何なら少し話していけばいいさ」
「有り難う、そうするよ」
バネドンはナバサリへ進む馬車と並んで馬を進めながら数分の間歓談し、やがて戻ってきた。
ローザに別れを告げたバネドンの手には、羊皮紙の断片が握られている。
「彼らが北から戻る最後の避難民らしい」
彼女からの話では、ダークロード軍はタホウまであと二日の距離に迫っているという。
ジャークの偵察部隊が周辺に出没し、つい今朝早くには西の空を翔るクラーンの編隊を目撃したそうだ。
「途中、シダラという村は既にジャークの手に落ちたという噂だ。で、これは招待状 だ」
招待状 ?」
「タホウに着いたらチバン師の家に泊まっていくよう誘われてね。タホウ市の城門で役立つかもしれない」
成る程。
余所者でない身の証というわけだ。
羊皮紙にローザのサインが入った招待状 を特別な品物としてポケットにしまう。
これで特別な品物は合計10個めだ。
今まではホイホイ何十個でも持ち歩けた特別な品物も、この探索からは12個が上限。
それ以上になったら、どれかを捨てない限り持ち運べない。
探索の旅はよりシビアになり、的確な取捨選択が成功の鍵を握るという訳だ。
南へ消えた荷馬車たちを見送って探索の旅を急ぐ。

(つづく)