ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ103→→→152:ザーロ脱出行:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


「は?ヘルガスト?寝言は寝てからほざくがいい」


開口一番、ペイドは命の大恩人様を嘲った。
「かくかくしかじかと言う訳で、ダークロード・ナーグの下僕達がこの修道院に潜伏していたんだよ!」
三倍速でペイドの尻を蹴飛ばし、地下の通路を進む。
突き当たりの仕掛けを操作すると、扉が横滑りして円蓋の部屋に出た。
六面の壁にはそれぞれに奇怪な獣群を描いたタペストリーが掛けられている。
分厚い絨毯の敷かれた床からは何本もの円柱が立てられ、銀の光を放つ液体の入った鉢が載っている。
銀の光を放つ液体の入った鉢――その一つが、微かな振動音を立て始めた。
やがて液体の表面が渦を巻き、円蓋の天井に蒼い光を投げた。
微かな振動音とともに、またしても液体の表面が渦を巻いていく。
円蓋の天井に蒼い光が広がる瞬間、銀色の液体の入った鉢を蹴り倒した。
鼓膜の奥で轟く、呪わしい大君主の声を遮断する。
二度もダークロード・ナーグに謁見の栄を賜る心算は無かった。


部屋の中をざっと見回し、矢を1本だけ補充しておく。
椅子の背に隠されたレバーを引くと、タペストリーの向こうに遥か下へと続く階段が現れた。
広大な迷路を思わせる地下墓地を抜け、ひたすら地上を目指す。
不平を鳴らすペイドを踏み台に、湿った石の蓋をこじ開けていくと、曙光が地下墓地に差し込んできた。
見覚えのある修道院の北側にある中庭だ。その向こう側に、背の低い厩が建っている。
数分後、馬に跨った修道僧2人が出ていった――また俺たちの馬かよ……ッ!


やむなく狭い小径を抜け、中庭へ出る。
生け垣の角から向こうを覗くと、武装した修道僧達が此方へ近づいてくるのが見えた。
反対側の角に、小さな荷馬車が停まっている。
カンバス地の幌は擦り切れ、引っ掻き傷が残っていた。
老いぼれた騾馬が2頭繋がれ、黒い僧服に頭巾の男が手綱を握っていた。
僧服の男は手を挙げ、荷馬車の中に隠れるよう合図を送ってきた。
機会は今しか無い――ペイドが荷馬車の幌を上げ、中に滑り込む。
男が手綱を引き、おんぼろの荷馬車は軋みを上げて動き出した。
修道院の中庭を出ると、狭い通りの前方にあるパン屋の前に、俺たちの馬が繋いであった。
「停まってくれ……助かった。礼を言う」
男は無言で微笑みを返した――首から下がる魚の護符――善の勢力に仕えるレッドイーマーズの僧侶なのだ。
馬を取り戻すと、背後の通りに怒号が谺した。修道僧達がパン屋から出てきたのだ。
拍車を掛け、街の北門へと馬を走らせる。


「開門!開門!」
ペイドが怒鳴り、三倍速で抜刀、更に馬上から脅すように通行証 をちらつかせた。
震え上がった警備兵が速やかに落とし格子を引き上げる。
起伏の多い土埃だらけの丘を越え、俺たちはザーロから全速力で逃走した。
次なる目的地、国境の街シアダを目指すのだ。
耕作に向かない荒れ地を走ると、灰茶の雑草が向こう臑を撫でた。
時折、頭上を舞う猛禽が鳴くほかは、周囲の大気は静寂に満ちている。
昼過ぎまでに丘の中腹まで辿り着く。
丘陵地帯の地面は固く、嵐の海のようにうねっている。
平野部で見られた丈の高い草もほぼ見られなくなり、痩せた低木がところどころオジアの不毛地帯から吹く乾いた風に靡いている。
道は狭い谷を縫って走り、廃鉱の坑道近くに石造りの小屋が建っている――強制死亡フラグだ。
脇目も振らず、隧道をひたすら走る。



通過パラグラフ:103→201→259→72→32→347→152 治癒術の効果:+6点   現在の体力点:16点

(つづく)