ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ238→→→195:黒衣の悪鬼:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


司祭は口笛を吹き始めた――と言っても別にご機嫌が麗しいとかではない。
単調だが不吉な旋律は繰り返される度に速くなり、聴く者の神経を掻き乱す。
致命の呪毒を流し込む、恐るべき魔術攻撃なのだ。
両眼を閉じ、不可視の盾をイメージする――麻痺しかけていた感覚を取り戻す。
マグナカイの念バリアが無ければ、さしものカイ・マスターとて耳孔から血を噴いて悶絶していただろう。


再び眼を開けた時、眼前の存在が遂に恐ろしい正体を現した。
司祭の顔面の肉が捩れ歪み、張り詰めた皮膚が急激に黒変する。
落ち窪んだ左右の頬から肉が腐り落ち、露わになった下顎に花綱のように垂れ下がった。
肉食獣めいた下顎からは曲がった牙が突き出し、蛇の黒く裂けた舌がちらついていた。
ダークロードが創造した最も忌まわしき悪夢。
いかなる人間にも擬態でき、定命者の武器が通用しない下僕――ヘルガストだ。
その本来の姿がこの殺戮形態――直立した大蜥蜴めいた姿なのだ。
……忌むべき仇敵との2度目の邂逅に、戦慄が走る。
不死者の赤熱した石炭のような眼が光り、殺戮の歓喜に金属を引っ掻くような耳障りな声で叫んだ。
口蓋の構造が有り得ないほど変化し、もはや言葉を紡ぐことすら出来ないのだ。


ヘルガストの振り上げた黒い杖の先端から、蒼い焔が奔流となって迸る。
熱を持たない、それでいて骨まで灼き焦がす地獄の焔だ。
だが――既に抜刀していたソマースウォード を横薙ぎに叩き返す。
轟音を上げて正負のエネルギーが衝突し、その余波が床に蜘蛛の巣めいた亀裂を生む。



ナーグのヘルガスト 戦闘力点38 体力点48


ヘルガストに念撃は通用しない(念波動は通用する)。
念バリアを身につけていなければ、毎ターン、戦闘のはじめに 戦 闘 力 点 を
2 点 引かねばならない。
精神の伝授のサークルを身につけていれば、戦闘の間、戦闘力点が2点高くなる。


戦闘力点―― 3 8 だと!?


猛毒を受けて臨んだ前回の死闘は、全力での戦いではなかったのか!!
と驚愕する暇も無く――凝然として不死者の能力を推し量る。
【リプレイ409】でのヘルガストは、滅ぼされるまで毒杯を呷った狼を侮っていた……
戦闘比−7
不死者に倍のダメージを与えるソマースウォード をもってしても、この窮地を脱出するには死力を尽くさねばなるまい 。
厄介なのはヘルガストの持つ黒い杖だが……。
狼の咆哮とともにマグナカイの奥義――念波動を発動させ、攻撃力を高める。
1ターンに2点の体力点を消費するが、戦闘比を-3までに縮める俺の切り札だ。
俺の気配が変わった事を察したのか、ヘルガストの動作が僅かだが遅延した。
爆発的な脚力で石畳を踏み割りつつ跳躍し、一気に間合いを詰める。
ヘルガストが蒼い焔を喚び出す前に、重力の軛から解き放たれた斬撃を叩き込む。


「2」――黄金の焔が不死者の肩口を舐める。俺の腕にも鉤爪が深い穴を穿っていた。
「9」――だが相討ちと見せたのは次の攻撃への布石だ。地を這うように反転して胴を薙ぐ。
「8」――黄金の焔に灼かれ絶叫を上げる不死者の長い腕をかいくぐり、袈裟懸けに斬り下ろす。
「4」――止めの一撃の心算だったが…浅かったか。逆にカイ・マントを引き裂き、肋骨が折れたようだ。
あと2点の差で殺しきれない――ッ!
とは言え、ここで念波動を解除する訳にもいかない。
戦闘比−7の世界においては、一方的にダメージを受ける展開が有り得るからだ。
そして、ここに来て念波動の反動が全身を襲った。
過剰なまでのエネルギーを供給され、関節の可動限界を超えて超高速で振り回された四肢には、膨大なダメージが蓄積されているのだ。
三寸斬り込むような最小限のダメージで殺すのが理想だが、そんな甘い敵手ではない――苦鳴を呑み込んで再び跳躍する。


「5」――鉤爪が腕に喰い込むのも構わず旋回する。振り抜いた黄金の刃が、不死者の首を胴体から斬り離していた。



通過パラグラフ:(238)→186→60→308(戦闘) 治癒術の効果:0点   現在の体力点:4点

(つづく)