ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ135→→→204:秘密の豚足横丁:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


街道の前方にザーロが見える頃、既に日は落ちていた。
ザーロの要塞丘として知られる、草に覆われたなだらかな丘に、泥色の城壁に囲まれた家々が並んでいる。
深紅と灰色の制服を纏った衛兵が高く聳える城壁を往復している。
丘の周りを囲むように流れる運河に架かる石橋を渡り、市街地の南地区に通じる門へと歩く。
門前には詰め所があり、鎖帷子を着込んだ衛兵が誰何してきた。
無言で通行証 を見せると、アダマス卿の紋章を認めた衛兵は敬礼して開門を指示した。
城塞の中庭からは、市街地の南地区に向かって二本の通りが延びている。



コパーピース通りを東に向かうか。35へ。
ホグ・フット通りを北へ向かうか。282へ。


ホグ・フット通りという名称には見覚えが無い――フェン河定期船でザーロに着いた時には無かった通りだ。
期せずして隠し分岐を発見した訳だが、さて、鬼が出るか蛇が出るか……。


流石に抜刀こそしないが、警戒を怠らず、蛇行した狭い通りを抜け、東の要塞丘へと坂を登っていく。
大半の小店主たちは騒々しく店を片付け、明日の商売に備えていたが、まだ軒先で客待ちをしている店があった。
光沢のある緑色の石造りの平屋の店先に、太った店主が辛抱強く立っている。
「……奇跡の店……ラス・ラディス百貨店へ……ようこそ……」
店主は体格に似合わぬか細い声で言った。
開け放った扉の向こうには、珍品の類が溢れんばかりに積み上げてある。
奇怪な呪文を書いた羊皮紙の巻物、希少な金属製の立方体、ありとあらゆる効能の護符、怪しげな水薬に粉薬、太古の英雄の遺骨。
殆どが眉唾物だが――カイ戦士の感覚が純粋な魔力を放つ灰色の水晶の指輪 を捉える。
ちなみに指輪の価格は120ルーン。金貨30枚 に相当するとなれば、結構な値打ち物だ。
―― 無論ボッタクリの可能性もゼロではない。
無論そんな金は持っていない……いや持っているが路銀が金貨2枚と言うのも流石に心許ない……どうしたものか……
俺の内心の葛藤を見越したかのように店主が躙り寄ってくる。
「…ほう…これはお目が高い…実はその指輪は由緒正しい霊験あらたかな……」



『そう かんけいないね』
『 殺 し て で も   う ば い と る 』
『ゆずってくれ たのむ!!』


選択肢はいつだって一つ。殺戮の荒野を独り征くのみ。
俺の狼チョップを延髄に喰らい、『な なにをする きさまらー!』と断末魔の叫びを店主が上げる――
脳内リアルシャドーを終了したところで、カイ修道院の教えを実行に移すべく長広舌を続ける店主に無言で近づく。
すなわち……「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだぜェーッ!
「…120ルーンを負ける訳には参りませんが…物々交換で如何ですかな?」
「何ですと?」
空気の壁を斬り裂き振り下ろしかけた超音速の手刀に急制動をかける。
店主の仕入れたい物品のうち、俺の持っている特別な品物と灰色の水晶の指輪 を交換しようと言うのだ。
天然磁石 宝飾鉾 銀の兜
うち天然磁石 銀の兜 は俺の手許にある訳だが…どちらと交換するかは言うまでもない。
未だダナーグの脅威を計りがたい現状、戦闘力の減少は自殺行為に等しいのだ。
更に言えば、マグナマンドでは戦力を増やす装備自体が激レアなのだ。ここで兜を手放す阿呆はいるまい。
「いいだろう。商談成立だな」
天然磁石 灰色の水晶の指輪 を交換する。(アクション・チャートを修正)
隠し分岐から思わぬ収穫を得て、店を後にする。
いまだ効能の掴めぬ灰色の水晶の指輪 、その未知なる能力に思いを馳せつつ……



(つづく)