ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ89→→→135:謎々村の狼藉:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


「船だ……」
ペイドが夕陽に手を翳して言った。
泥水に濡れそぼったゴーカスの一群が、増水した河の流れに逆らい、荷船を上流まで牽引してきたのだ。
「ザーロへ行くのかい?馬も込みで40ルーンだ」
呆れるほどの高値だ。
船員に向かって首を振り、当初の予定通り陸路を行くことにする。
「ローン・ウルフ、これ以上時間を無駄には出来ないぜ」
ペイドが茜色の空を見上げて言った。
日没後の街道は危険だし、ザーロまではまだ距離がある。
無言で頷き、馬に拍車を掛け、トファムの村を通過し、街道を目指す。


虐殺のあった修道院が見えてくると、ボルダクとの遭遇を思い出したのか、馬は途端に落ち着きが無くなった。
一時、街道を外れて野原を進む――修道院を迂回し、再び大北方街道を行く。
日没近くなって、二十軒ほどの百姓家と街道沿いの倒壊しかかった廃屋から成る、スティアの村へ辿り着いた。
廃屋の前を通り過ぎようとするや否や、無駄に頑丈そうな扉が轟音と共に蹴り開けられた。
廃屋の暗闇から蹌踉めきつつ登場したのは、いかにも古めかしい大仰な鎧一式を身に着けた老人だった。
何故か全身の至る処に錆びた勲章をぶら下げている――所謂アレだ。田舎でよくお見かけする類の変人だ。
「其処で止まれェィィ!」
古強者と言うより荷馬車的な何かと合体変形したようにしか見えない老人が叫ぶ。
「此処より先は通行税を払ってからじゃァァーッ!」
「おい……爺ィ……貴様何の権限があって女王の街道で税を取り立てている?」
ペイドが苛立ちを隠そうともせずに聞いた。危険な兆候――一触即発の空気だ。
「ブァカ者がァアアアア!女王陛下その人の権限においてじゃァァーッ!」
徴税人の老人の震える指先には、廃屋の壁の貼り紙があった。
確かに貼り紙にはエバイン女王の紋章があったが、文言は長年の風雨に曝され、読み取る事が出来ない。
「俺たちは王家に関わる任務のため、ザーロに行くところだ」
懐からアダマス卿の手になる通行証を取り出して見せる。
「そう言う訳なんで、道を開けて通してくれ、な?」
老人は通行証を引ったくり、まじまじと見ていたが、視力が衰えているのは傍目にも明らかだ――そもそも字が読めるのかも疑わしいのだが。
「ふんッ!其奴は偽物じゃッ!そのようなつまらん偽物に騙されはせんぞッ!」
老人は鼻息も荒く通行証を突き返した。
「鎧同様、脳まで錆び付いた因業爺ィに何が分かるッ!」
ペイドの怒声が村の通りに轟く。
見る間に、農具を構えた村人たちが、険悪な形相で集まってきた。
「…………通行税とやらは幾らなんだ?」
今にも剣を抜きかねないペイドを制しつつ尋ねる。
「お主らが身に着けている物で、儂らが気に入った物一つじゃ。たった一つ差し出すだけで、通行を許可する……儂らを強欲とは言わせんぞッ!」
老人は独善的に嘯き、ペイドを睨み付けた。
「儂らスティアの人間は、公正な判断力と謎解きが好きな事で知られておる」
「ハッ……公正とはまた笑わせる話だ」
ペイドが小声で毒吐いたのが聞こえなかったのか敢えて無視しているのか、老人は喋り続けた。
「そこで儂らとお主らの双方が満足できる提案をしよう。ある謎解きに正解すれば、通行料無しでこの村を通してやろう」
「謎解きだと?」
「うむ。間違ったり、答えられなかったりしたら文句を言わずに通行料を払う。それでよいな?」



老人の条件に同意するか。112へ。
同意しないか。149へ。


暫時悩む。
村人たちを斬り払い、馬で駆け抜けるのは大して難しい事ではない。
問題は、ここが悪意に満ちたジョー・デバー神のお造りになった世界だということ。
強行突破した場合の罠も当然想定されるが――


無言で拍車を掛け、村人の方へと馬を突進させる。
村人たちはこの種の斬新な回答を予想さえしていなかった。
「この横柄な奴らを痛めつけ、思い知らせてやるのじゃァァーッ!」
自尊心を大いに傷つけられたと思しき老人の叫びも虚しく、村人たちは農具を放り出し、一斉に逃げ出した。
「退けェェェィ!」
ペイドの命令口調に、村人が反射的に道を開ける――その間隙を擦り抜け、街道へと出る。
「ところで、あの老人の謎解きとは、どんな代物だったんだろうな?」
――知ったことか」
馬上でお馴染みの遣り取りを交わしつつ、ザーロを目指し走り続けた。


通過パラグラフ:(89)→348→29→280→89 治癒術の効果:+4点   現在の体力点:29点(全快)

(つづく)