ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ262→→→8:不死者の葬列:(死亡・12)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


「占い師を探しているのか?儂の妹のタディアは母親と船着場で暮らしている」
農夫は怪訝な顔をしつつも答えた。
この旅籠から北へ8km行くと、東へ向かう街道との合流点――トファムと書かれた標識がある。
トファムから更に2km程で、フェン河の船着き場へ辿り着く。
「法外な料金を払ってまで未来を知りたいのか?あンたらはただの旅人には見えないが……」
「……ただの旅の妹好きさ。そして死ね」
「?」
ペイドを促し、装備を纏めて北へ向かうべく出立の準備をする。
「ジャコに聞いてきたと言うンだね。タディアは押し掛けの客には不親切な事で知られている」


雨が容赦無く降り続く中、単調な街道を走り続ける。
西の山岳地帯からは、遠雷が轟いている――さながら獲物を追う狼の咆哮だ。
泥濘の道は次第に広い谷懐へと下って行き、東から延びる街道と合流した。
朽ちかけた標識にはトファムまで15kmとある。
馬首を巡らし、フェン河へ向かい蛇行する小川沿いの道を行く。
途中、白い煉瓦造りの水車小屋を過ぎ、小さな太鼓橋に差し掛かると、修道院を含む小さな集落が見えてきた。
近づいていくと、修道院の庭では葬儀が営まれていた。
褐色の簡素な長衣に身を包んだ修道僧たちが輪になって、掘ったばかりの墓穴へ棺を下ろしている。



予知を身に着けていれば、76へ。
予知を身に着けていなければ、221へ。


マグナカイの予知を身に着けてこそいないが、修道僧たちを素早く観察する。
タレストリアの修道僧たちは美食の徒として知れ渡っている。
修道院の祝祭では、30品にも及ぶコース料理が1週間続くのだ。
だが、修道僧たちの長衣からは肥満の兆候は見て取れなかった。
油断せず騎乗したまま近づくと、修道僧たちは墓穴から退き、一列に並んだ。
両手は長衣の袖に隠され、頭巾に覆われた頭を下げている。
「弔意を表したいが……死者の名前を教えて頂けるか?」
俺の問いに返ってきたのは、俺自身の声の谺と絶え間無く降る雨音だけだった。


突如、無言の合図に応じるかのように一斉に修道僧たちが頭巾を脱いだ。
肉が削げ落ち、干涸らびきった皮膚の張り付いた骸骨めいた素顔が顕わになった。
「な……何だ!」
ペイドが驚愕に喘ぐ。
骸骨の修道僧――ダークロードの下僕たる不死者、ボルダクだ。
ボルダクの金属が軋るような声に、馬が怯えて暴れ出した。
不死者たちが黒塗りのの短刀を逆手に構え、一気に間合いを詰めてくる――


(つづく)