ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ268→→→178:不快なる覚醒め:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


毒シチューに混ぜられた無味無臭の致死毒ナダーンの分量は、致死量を遥かに上回っていた。
俺自身、かつてナダーンを一服盛られかけ、危うく回避したことがある。
常人が飲めばまず助からない―― 元来が、このように用いられる暗殺毒なのだ。
カイ・マスターならぬペイドの命はより危機的状況に立たされている。
だが、まずは自分の命を救わねばならない。
死に物狂いでナップザックを探り、我ながらもどかしい手つきでラウンスパーの薬瓶を開け、一気に飲み干す――
やがて胃の激痛と吐き気が消え、手脚の震えも止まっていった。
続いて深呼吸とともにペイドの胸に当てた掌から生命力を注ぎ込み、体内の毒素を中和していく。
夜明け頃のことだった。ペイドの瞼が痙攣し、額に汗が一筋流れる。
大きな欠伸とともに、ペイドはもう少しで永遠になるところだった眠りから目覚めた。


「は?ヘルガスト?寝言は寝てからほざくがいい」


開口一番、ペイドは命の大恩人様を嘲った。
先程まで生死の境を彷徨っていた相棒が、忌々しげに唾を吐き捨てる。
頼もしき我らがバケロスの戦士は、昏睡して以降のことを綺麗さっぱり忘れていた。
ソマースウォード を引き抜きかけ、辛うじて首を刎ねてやりたいという衝動を押さえ込む。
大方ナダーンの毒が記憶喪失を招いたのだ。
……そうに決まっている。
毒の成分がこれ以上相棒の脳を冒していないことを祈りつつ、根気よく説明を続ける。
「ダークロード・ナーグの下僕達がこの修道院に潜伏していたんだよ!」
「ナーグだと?」
「遅かれ早かれ、冒涜的な目的から残虐行為を働く心算だったんだろうが……」
ペイドが暗黒の半神の一柱の名を聞いて、眉を僅かに顰めるのを見て畳み掛ける。
「既に奴らは俺達の正体を突き止めているし、この地にやって来た理由も知られていると見て間違いないんだよ!」
「なら何をぐずぐずしている?ダナーグへ着く前にタレストリアがダークロード・ナーグの手に落ちれば全てが無に帰すのだろう?」
確かにペイドの言うとおりではある。こうしている間にも、刻一刻と敵の包囲網は狭まっているのだ。



通過パラグラフ:(268)→178→285  治癒術の効果:+2点   現在の体力点:27点

(つづく)