ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

【パラグラフ78→→→113:剣の寺院:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


剣の寺院の前で馬を降り、石段を登る。
ノックに応えて、茶色の長衣を纏った老修道僧が現れ、俺たちを招き入れる。
別の修道僧に馬を任せ、燻香の甘い臭いが漂ってくる寺院の中に入っていく。
老修道僧に続いて回廊を歩いていく――禿びた赤い蝋燭が並び、辺りを薄暗く照らしている。
階段を降りた先は、松明に照らされた食堂だった。
開いた扉の向こうから、料理の臭いと修道僧たちの声が流れ出してくる。
「どうぞお掛けなされ」
老修道僧が頑丈な樫のテーブルを指した。
「大したものは出せなんだが、召し上がりなされ。長旅で疲れたお体が休まり、これからの旅も容易くなるだろうて」

 
別の修道僧がシチューの入った湯気の立つ皿を二つ運んできた。 
彼はそれを君たちの前に置くと祝福の言葉を口にした。 
「ガジ・コグ・ズタグ」 
一日じゅう走り続けて腹がすいているので、今食べなければ 体 力 点 を 3 点 失 う。 
 


老修道僧のいかにも親切ごかした態度に隠れて、さりげなく今とてつもなく不穏な言動を耳にした気がした。
俺がソラミミストなら華麗にスルーするところだが………。
不安に駆られて再び『マグナマンド・コンパニオン』のジャーク語解説を紐解く。
今のシーンを吹き替えで再現してみよう。

 
別の修道僧がシチューの入った湯気の立つ皿を二つ運んできた。 
彼はそれを君たちの前に置くと祝福の言葉を口にした。 
「悶え苦しんで、死ね」  
一日じゅう走り続けて腹がすいているので、今食べなければ 体 力 点 を 3 点 失 う。 
 


………………やはりそんなんか……ッッ!


とは言え一日中移動し続けて空腹もいい所だ。
取って付けたような本文で、今食事をしなければ体力点を3点失う と駄目押しされているのだ。



美味そうなシチューを喰うか。336へ。
ナップザックの食糧を喰うか。217へ。
食事を摂りたくなければ、体力点から3点引いて、174へ。


………………何このこれ見よがしの選択肢巫山戯てるの?
実に2/3がシチューを喰わないという選択なのだ。


どう考えても毒シチューです。本当に有り難うございました。


だがそれでは話が進まないのだ。
俺は食糧を持参してきていないので、ぶっちゃけ喰うや?喰わざるや?の2択な訳だが………。


………………毒を喰らわば皿までじゃあああーッッ!


猛然とシチューを掻き込みつつ横目で見ると、ペイドも無言で貪り喰っている。
結局、秒単位で空の皿が二つ並び、修道僧たちは慈父のごとき笑みを浮かべて頷き合った。


「どうぞこちらへ……お休みになられる前に司祭が見せたい物があると申しております」
修道僧の一人が言い、その後に続いて食堂を出ると、円蓋の部屋に通された。
六面の壁にはそれぞれに奇怪な獣群を描いたタペストリーが掛けられている。
分厚い絨毯の敷かれた床からは何本もの円柱が立てられ、銀の光を放つ液体の入った鉢が載っている。
屋内だというのに風が吹き、壁の織物が揺れ、その数秒後、漆黒の長衣を纏い、フードを被った初老の男が織物の向こうから現れた。
「お食事はお済みになったのかな?」
男の声は奇妙なほど冷たく、単調だった。



(つづく)