ゲームブック・リプレイ:ローンウルフシリーズ

フェン河を行く

【パラグラフ271→→→151:フェン河定期船:(死亡・11)】
プレイの形式上、ゲーム内容のネタバレ満載です。あしからずご了承ください。


ペイドとともにアダマス卿に馬上で別れを告げ、広い舗装路を市の警備兵詰所へ向かう。
馬車で荒れた道はフェン河に架かる大きな橋近くに造られた飛び領土、シャー村に続いている。
小さく木の壁で囲まれた漁師と荷船の村を素通りし、街道を離れ、折れ曲がる小径を川岸へと下っていく。
ザーロ行きの荷船は出航間近だった。
地上から船を牽くゴーカスの一隊には装備が積まれ、船員が船を繋留しているロープを解き始めた。
船長と思しき声が河面を渡る。
「ロープを離すな!どうやらあと二人仲間が増えたようだ」
道板が渡され、船員が馬を誘導してくれる。
「アダマス卿に二人お客があると伺っていたのですが、遅いのでそろそろ諦めかけていたところでした」
色褪せた木の甲板を船長がやって来て、俺たちに手を差し出した。
「料金は頂いていますし、プライヴァシーが必要だと伺っていますから船尾の客室を用意してあります。馬の面倒は部下に任せて下さい」
船尾を見ると、二組の下り階段があった。
「左手の階段から通路の突き当たりの客室です。右手の階段は船倉の酒場に通じています」


この大型の荷船は、かつて東の市場向けの玉蜀黍やリネンを積んでテンタリアスを航行していた。
老朽化し水漏れもするようになった今は、北部の農夫や開拓者を運んで余生を送っている。
かつてはそれなりに豪勢だった客室も、今や相当にがたが来ているようだ。
松脂と湿った木材の甘ったるい香りが漂い、ところどころ黴が生えて壁が変色している。
寝台の上には革紐やらロープやら破れた衣服が散乱している――怖ッ!
ある意味プライヴァシーを必要としている客が使う部屋なのだろうと推察されるが……・。
あとペイドな。
無言で俺の背後に突っ立ってるの止めてくれませんか。
手持ち無沙汰なのは分かるけどせめて何か喋れ。
ぶっちゃけ怖いから。
兎に角寝るスペースを確保すべく不確定名の類を客室の床に払い落とすが、その中に紫の液体の入った瓶があった。
コルクを開けると、芳香が鼻をくすぐる――これはラーヌマの木の実の精油だ。
滋養に富んでいて、1回分で体力点を3点取り戻す優れものだ。この一瓶が2回分に相当する。(アクション・チャートに記入)


新鮮な空気を吸おうと甲板に出ると、長毛種のゴーカスの一隊の様子を調べるため、船長が土手に沿って甲板を歩いていた。
この荷役獣達は平然と船を上流に牽きつつ、轍の跡や深い穴がある船牽き道を、滅多に蹌踉めくことなく前進する。
土手の向こうには色鮮やかな野草が咲き誇っている。
深紅の細いシルエットの花、壇を成す黄色い花々、抜きん出て背の高い紫の花。
やがて花咲き乱れる野が起伏の多い草原へと変わり、徐々に空も暗くなり、遂に細い一筋の光が地平線を縁取った。
「嵐が始まるぞ…下に避難した方がいい」
船長が言うが早いか、雨粒が甲板に落ちてきた。
湿っぽい客室を避け、船倉酒場で雨宿りを決め込むことにする。



(つづく)